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3章
3ー3
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青はポケットから戻した手を広げた。大きな手のひらには、一円玉が二枚と五円玉が一枚、そして十円玉が一枚の計十七円が乗っていた。
「あちゃ~十円足りないわ」
「人の金見て残念がるな」
「じゃあやっぱり箸貸してもらうしかないか」
「なんでおまえは当たり前のように貸してもらえると思ってんの?」
青は呆れながらポケットに小銭を戻した。
先週喧嘩をしたというのに、自分でもだいぶ遠慮のない頼み事だと自覚している。でも昔から自分たちはこうだった。相手が違えば失礼な頼み事も、平気で頼むことができる。
喧嘩をしても、早くて一時間後、遅くても一日経てば元通りになる。今回はちょっと時間がかかっただけで。
「え~いいじゃん。おまえが食べ終わったあとでいいから」
顔の前で両手を合わせる。すると青がチラッと叶太の後ろを見た。さっきからずっとこちらを心配そうに見ている北村に気づいたらしい。あからさまに迷惑がっている表情から、複雑そうな表情へと変わる。
「北村と食ってんの?」
「これからな。でも箸がないから食えない」
そう言うと、青の前に座っていた友達二人が「あーね」と合点がいくように笑った。二人ともサッカー部だろう。二人とも日焼けして肌が浅黒い。それに以前、叶太と同じクラスのサッカー部主将と、三年の教室の前で話しているところを見たことがある。
「なになに?」
叶太が友達二人に反応の理由を尋ねると、ワックスをつけた髪型がチャラめな方が答えた。
「オレらいつも北やんと昼メシ食ってるんすよ。でもあいつ、今日は急に別々で~とか言ってきて」
付け足すように、筋肉質な方が続きを答える。
「北村がそんなこと言ってくるの初めてだったから、彼氏ができたんじゃないかって話してたんですよ」
「あ、北やんがゲイってことは本人隠してるつもりなんで、オレらが知ってることはコレでお願いします」
チャラい方が、口の前で人差し指をクロスさせる。
どうやら北村は、自身の性的指向を友達に公言はしていないものの、しっかりとバレているらしい。
ということは、青も北村がゲイだということは知っていたのか。だから北村に告白されたことをオブラートに包んで話したにもかかわらず、青は瞬時に告白されたと見抜いたのだろう。
どちらにせよ自分は北村の彼氏ではない。告白はされたし、北村がいいやつであることもわかった。でも今は彼氏以前に、叶太の恋愛対象に入るかどうかの段階なのだ。
期待するサッカー部の二人には悪いけれど、叶太は正直に北村とは付き合っていないことを話した。告白してきたことは、北村の名誉のためにも内緒だけど。
「え~そうなんすか。ざんねーん」
チャラい方が椅子の背もたれによりかかる。
初めて話すが、なんとも話しやすい二人だ。
「残念ってなんだよ」
「だって幸せになってほしいじゃないすか。やっぱり友達には」
筋肉質な方も「男が好きってだけで、大変そうだもんな」と同意する。
「君たちめっちゃいいやつじゃん」
叶太はじーんと感動した。断れと迫ってきた幼なじみに爪の垢を煎じて飲ませたい。本来友達とはこうあるべきだろう。
「誰かさんとは大違いですねぇ、五十嵐青くん?」
座った状態の青の肩をポンポンと叩く。会話に入ろうともしてこない男は、まるで虫でも払うように叶太の手を肩からサッと払った。
そして割り箸を向けると、「持っていけよ」と言った。
「え、でもまだ青は食ってないじゃん。オレいいよ? あとでも」
「オレが嫌だ。おまえと同じ箸使うとかぜってー無理」
ぴしゃりと言い放たれ、イラッとした。まるでばい菌扱いだ。小学生まではペットボトルとかカキ氷のスプーンストローとか、お互い気にすることなく共有していたのに。ムカつくと同時に距離を感じて、ちょっとさみしい。
「あちゃ~十円足りないわ」
「人の金見て残念がるな」
「じゃあやっぱり箸貸してもらうしかないか」
「なんでおまえは当たり前のように貸してもらえると思ってんの?」
青は呆れながらポケットに小銭を戻した。
先週喧嘩をしたというのに、自分でもだいぶ遠慮のない頼み事だと自覚している。でも昔から自分たちはこうだった。相手が違えば失礼な頼み事も、平気で頼むことができる。
喧嘩をしても、早くて一時間後、遅くても一日経てば元通りになる。今回はちょっと時間がかかっただけで。
「え~いいじゃん。おまえが食べ終わったあとでいいから」
顔の前で両手を合わせる。すると青がチラッと叶太の後ろを見た。さっきからずっとこちらを心配そうに見ている北村に気づいたらしい。あからさまに迷惑がっている表情から、複雑そうな表情へと変わる。
「北村と食ってんの?」
「これからな。でも箸がないから食えない」
そう言うと、青の前に座っていた友達二人が「あーね」と合点がいくように笑った。二人ともサッカー部だろう。二人とも日焼けして肌が浅黒い。それに以前、叶太と同じクラスのサッカー部主将と、三年の教室の前で話しているところを見たことがある。
「なになに?」
叶太が友達二人に反応の理由を尋ねると、ワックスをつけた髪型がチャラめな方が答えた。
「オレらいつも北やんと昼メシ食ってるんすよ。でもあいつ、今日は急に別々で~とか言ってきて」
付け足すように、筋肉質な方が続きを答える。
「北村がそんなこと言ってくるの初めてだったから、彼氏ができたんじゃないかって話してたんですよ」
「あ、北やんがゲイってことは本人隠してるつもりなんで、オレらが知ってることはコレでお願いします」
チャラい方が、口の前で人差し指をクロスさせる。
どうやら北村は、自身の性的指向を友達に公言はしていないものの、しっかりとバレているらしい。
ということは、青も北村がゲイだということは知っていたのか。だから北村に告白されたことをオブラートに包んで話したにもかかわらず、青は瞬時に告白されたと見抜いたのだろう。
どちらにせよ自分は北村の彼氏ではない。告白はされたし、北村がいいやつであることもわかった。でも今は彼氏以前に、叶太の恋愛対象に入るかどうかの段階なのだ。
期待するサッカー部の二人には悪いけれど、叶太は正直に北村とは付き合っていないことを話した。告白してきたことは、北村の名誉のためにも内緒だけど。
「え~そうなんすか。ざんねーん」
チャラい方が椅子の背もたれによりかかる。
初めて話すが、なんとも話しやすい二人だ。
「残念ってなんだよ」
「だって幸せになってほしいじゃないすか。やっぱり友達には」
筋肉質な方も「男が好きってだけで、大変そうだもんな」と同意する。
「君たちめっちゃいいやつじゃん」
叶太はじーんと感動した。断れと迫ってきた幼なじみに爪の垢を煎じて飲ませたい。本来友達とはこうあるべきだろう。
「誰かさんとは大違いですねぇ、五十嵐青くん?」
座った状態の青の肩をポンポンと叩く。会話に入ろうともしてこない男は、まるで虫でも払うように叶太の手を肩からサッと払った。
そして割り箸を向けると、「持っていけよ」と言った。
「え、でもまだ青は食ってないじゃん。オレいいよ? あとでも」
「オレが嫌だ。おまえと同じ箸使うとかぜってー無理」
ぴしゃりと言い放たれ、イラッとした。まるでばい菌扱いだ。小学生まではペットボトルとかカキ氷のスプーンストローとか、お互い気にすることなく共有していたのに。ムカつくと同時に距離を感じて、ちょっとさみしい。
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