【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

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6章

6-1

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***

 夏休みに入って三日。叶太の熱もようやく下がったある日の夜。晩ご飯を食べていると、北村から数日ぶりにラインが届いた。

 箸先を口にくわえたままスマホを触ろうとした瞬間、母親から「行儀が悪いからやめなさい」と注意されて断念する。

 晩ご飯を食べ終わってからリビングのソファに移動し、ラインを開く。

「食べ終わったら自分でお皿下げなさいって言ってるでしょ」

 と小言を口にしつつ、母親は息子の食べ終わった食器を流しに下げてくれる。母に向かって「ごめーん」と顔を向けてから、叶太は改めて北村とのトーク画面を見た。

 そこに書かれていたのは、ブラレイとコラボしている遊園地のチケットに関することだった。北村からのメッセージによれば、オンラインチケットは事前購入制らしいのだが、叶太と北村がお互い空いている日に限ってチケットが完売しているのだという。

『すみません。せっかく椿先輩の空いてる日を教えてもらったのに』

 謝罪メッセージの下には、申し訳なさそうに土下座をするペンギンのスタンプも一緒に送られていた。

『お互い平日は夏期講習だもんな。土日はやっぱり厳しいかー』

 続けて『オレが風邪引いたせいでごめん』と打ったが、送信する前に消した。自虐的に謝っても、きっと北村に気を遣わせてしまうだけだと思ったからだ。

 この流れだと、遊園地コラボにはおそらく行けないだろう。ブラレイのファンとしては残念だが、北村とはまた別の機会に会える。自分より残念がっている北村には悪いが、ちょっと温度差を感じてしまい気が引けた。

『せっかくなので、来週の土曜日に花火大会に行きませんか?』

 叶太のメッセージに返ってきたのは、新たな誘いだった。

 叶太たちの住む地域の隣町では、毎年八月頭の土日に河川敷で花火大会が開催される。かき氷や焼きそば、たこ焼きにわたあめに金魚すくいなど、多くの屋台が河川敷に集まるのだ。

 昔よく、青の家族と一緒に見に行った。小学生の高学年になると、お互い付き合う友達が変わったので別々に行くようになったけど。
 北村と一緒に花火大会……か。花火大会といったら夜だよな。まるでザ・デートという感じのスポットに二人で行ったら、どんな雰囲気になるのだろう。

 花火大会には、きっと地元の中高生カップルがたくさん来るはずだ。男同士だから、カップルには見られないかもしれない。そもそも人がたくさんいるから、自分たちなんてきっと埋もれて誰の目にも映らない気がする。

「さすがに行った方がいい……よな」

 ぽつっと独り言をこぼすと、キッチンから母親が「なーにー?」と聞いてきた。自分に言われたと思ったらしい。「なんでもない」と煩わしく返事したあと、叶太はスマホを両手で握り締めた。

 前回誘ってくれた遊園地は、自分が風邪を引いたから行けなくなってしまった。体調不良とはいえドタキャンした自分を、懲りることなくもう一度誘ってくれた。しかも花火大会の日は、お互い予定が空いていることは確認済みだ。

 叶太は親指で画面をタップし、

『いいよ!』

 と送った。一言じゃ温度差が伝わってしまうかなと反省し、OKスタンプも送る。メッセージにはすぐさま既読がつき、『嬉しいです!』と返事がきた。

 それから当日の待ち合わせ場所と時間を決め、キリのいいところでラインでの会話を終えた。



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