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8章
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うそだろと思った。めちゃくちゃ断りたい。目の前で仲良くドリンクを飲む二人を見たくなんかない。
嫌な汗が頭の毛穴じゅうから噴き出す。どうにかして回避できないだろうか。ぐるぐると考えているうちに、北村が「もちろんいいですよ」と先に答えてしまった。
「よかったぁ。ここっていつも混んでるでしょ? なかなか座れないから、買っても外で飲むしかないよねーって、さっき青くんと話してたの」
ねー?と詩乃が同意を求めるように斜め下から青を見上げた。さっきから目線を下にやっている青は、詩乃の視線に捕らえられると、落ち着かない様子で「あ、ああ」と頷いた。
いざ二人のやりとりを目の前で見せつけられる。頭の中では何回も想像した光景だったが、ここまでしんどいとは思わなかった。
叶太は膝の上に置いた両手で、ギュッと制服のズボンを握り締める。
青と詩乃がスクールバッグを椅子に置いてからレジに向かったあと、叶太は思わず「ここは地獄か?」と口に出してしまいそうになった。言葉をグッと飲み込み、嫉妬で狂いそうになる感情に耐える。そうこうしているうちに、ドリンク二つとポテトをお盆に乗せた二人が戻ってきた。
詩乃が叶太の隣に壁を背にして座り、青は北村の隣で椅子を引いた。四人全員が腰を下ろしたところで、最初に口を開いたのは北村だ。
「あ、そのポテトって今LサイズがSサイズの値段になってるんですよね?」
北村は詩乃たちのお盆の上に乗るポテトを見て言った。答えたのは詩乃だ。
「そうだよー。レジの人におすすめされたら、食べたくなっちゃったんだよね?」
くいっと首を横に傾げ、詩乃は目の前の男に恋する瞳を送りつける。青は相変わらず無愛想に、「オレはべつに」と答えた。
付き合ってもなお青はこんな感じなのか。手を繋いだ姿や言葉を交わす二人を見て、さっきまではモヤモヤしていた。今もモヤモヤは晴れないけれど、彼女にベタベタしている青を見ずに済んだのは不幸中の幸いだ。
「私だけじゃこんなに食べれないから、みんなも食べてね」
詩乃はそう言うと、お盆に広げたポテトをテーブル席の真ん中に置いた。お盆からポテトを一本摘まみ取る。
「ほら、青くんも」
ポテトを青の口元へ持っていくと、青は居心地が悪そうに、「いらねえよ」と片手で口元をガードした。
「え~食べてよう。今食べないとしなしなになっちゃうよ?」
「いいって――」
「えいっ!」
青の隙をついて、詩乃が青の口にポテトを入れた。口に入れたものを出すわけにもいかないのか、青は「ったく……」とブツブツ文句を言いながらためらいがちに咀嚼していた。
「やった~。青くんの『初あーん』ゲットしちゃった」
ニコニコしながら、詩乃はピースサインを北村と叶太に見せてくる。
反応薄めな青が相手だというのに、詩乃は少しも不満そうな素振りを見せることなく、むしろ強引に青を引っ張っていく。すごいな……と尊敬しつつ、カップル然とした二人のやりとりや雰囲気を見ていると、気持ちがどうしようもなく落ち込んだ。
なんだかなぁ。もう帰りたいな。叶太は背中を丸めて下を向く。
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