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ペンギンの回り道

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魔術師が依頼受け付けます

探し物ep2

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 事務所から出た私は依頼通り猫を探すことにした。

「聞き込みとかしたほうがいいのかな?」

 聞き込みをしようか考えたが先ほどの社長の言葉が気になってやめた。いつもの社長はやる気が無さそうというか飄々としている感じだが、今日の社長は少し違ったような気がする。真面目だったというか声のトーンが心配するときみたいな……。

「もしかして危ないやつなのかな?それだったら他の人を巻き込まないほうがいいかも」

 今までも危ない依頼はあった。猫を探していたら高いところに登ってしまってそれを捕まえに行ったら落ちてしまって気絶したり、鍵の探し物をしていたときはよくわからない路地に迷い込んで迷子になってて気付いたら鍵を持ったまま事務所に寝てたり。その度に社長には『外で寝たり、気絶したりしたら危ないよ。女子高生なんだから』とお小言を貰う。

「いつも周りに人は居ないから大丈夫だとは思うけど……。それよりも猫探さなきゃ」






「猫と言ったら魚だよね」

 そんな安易な考えから私は魚屋の方に向かっていく。猫が魚を好きというのは常識である。一説には日本は島国だから魚がよく捕れるため、猫に魚を与えていたという。その結果猫が魚好きになったとも言われているらしい。元々が猫科だから肉食と言われればそんな気もする。

「んー。居ないなぁ」

 魚屋へ向かう間にも辺りを見渡しながら歩いていく。この時間は人通りが多くないため、よそ見をしながら歩いていても人にぶつかることもない。魚屋がある場所は所謂商店街と言われるような場所である。ただこの商店街もシャッターが下りているところが目立つくらいには賑わっていない。最近ではスーパーやコンビニ等の進出でわざわざ専門店で買う人が少なくなっているらしい。

「ん?」

 魚屋の周りには猫の姿は見られなかったが、魚屋とその隣の建物の間にある路地が妙に気になった。

「そういえば猫ってこういう隙間に集まって猫の集会するって聞いたことあるなぁ」

 私は立ち止まりその路地を見つめる。室外機などが至る所にあり、人一人が入っていくのがやっとの幅しかない。寧ろ基本的には人が入ることを想定していないような気すらしてくる。路地の奥を見ても薄暗くなっていて先は見えない。

「どうしようかな……。なんとなくここすごい気になるけど、制服汚れちゃうしな……。」

 言葉では行くことを否定している。しかし自分の意識はその路地に釘付けになっている。

「社長に気を付けてって言われたし」

 言葉ではその先に向かうことを否定している。ただ自分の意識は先に進むべきだと感じている。目を離そうとしてもその路地が気になってしまって見つめてしまう。猫を探すためにその路地へ行くのか、ただその路地が気になってしまうのか、自分にはそれも分からなくなっている。

「偶然猫がいるかも知れないけど、気を付けて行かなきゃ」

 パーカーのポケットに入れた社長から渡されたお守りを握りしめながらその路地へ歩みを進めた。







「タマちゃーん!いるー?」

 依頼にあった猫の名前を呼びながら薄暗い路地を進む。不思議な路地には歩いている足音も、声も、何も反響しない。薄気味悪さを感じながら歩みを進める。
 
 その路地は先ほど見たとき、先が見えなかったことから結構長いと予想していたがその予想が外れることはなかった。明らかに建物と建物の間にあるような狭い路地の距離ではなかった。歩いても歩いても出口にたどり着かない。

「なんかおかしいな……。怖くなってきたしもう少し進んだら一旦戻ろう。社長も後で来るって言ってたし」

 不安を少しでも無くそうとするかのように独り言を呟く。そうしないと動く室外機の音以外何も聞こえないこの空間で走ったり叫んだりしてしまいそうだ。

「タ、タマちゃーん!」

 何度目かになるだろうか。探し物である猫の名前を叫びながら進んでいく。自分でも気付いている。もうかなり歩いているが猫の一匹もいないことに。
 
 しかし一度始めてしまったことを途中でやめられなくなっている。少しの恐怖を我慢して進んだからここでやめたら無駄になると思い少しずつ進んでしまってもう入ってきたところの光も微かにしか見えなくなってしまった。

「ちょっと、流石に戻ろうかな」

 光が差し込むところがほぼ無くなり、不安が使命感を上回ったとき、私は戻ることにした。振り返り、いま来た道を戻ろうと一歩を踏み出そうとした時。

「私の名前を呼ぶのは何者だ?」

 突如として自分の声と環境音以外、何も聞こえなかった空間に低い声が響いた。
 
 今まで進んでいた道にこのような声を出せる生物はいなかったはずだ。暗かったため見逃していたのかもしれない。

「だ、誰?」

 私は聞こえた声の方向に振り返る。

 


「なに、え、?でか」

 そこにいたのは私の身長の2倍くらいありそうな猫。猫?猫のサイズではない。威圧感がとんでもない。そこにいるだけのはずなのに目が離せないし、足も動かない。恐怖という感情を通り越して理解できないものを見てしまって頭が処理しきれなくて思考が停止している。

「私の名前を呼んだのはお前か?」

 先ほどと同じ問を目の前の猫?は少しゆっくりと喋る。尻尾を揺らしながら口は笑っているようにも見える。
 尻尾が左右に揺れているように見えたがそれは揺れているのではなく、尻尾が二本あった。

「もしかしてタマ、ちゃん」

 二本の尻尾から推測される名前を呼ぶ。
 特徴として『尻尾が二本ある』『少し大きい』と書かれていたことを思い出す。少し大きいっていうサイズじゃない。明らかに最大の猫科と言われるアムールトラなど比較にならないほど大きい。少し大きいではなく巨大である。
 
 なぜ今、見えるような距離にいるのに先ほどまで気づかなかったか不思議なくらいだ。

「いかにも。呼ばれたから答えたぞ」

 もう一つ依頼書に書かれていたことがある。『呼び掛ければ反応する』。私は確かにタマちゃんの名前を呼んで探していた。反応すると書かれていたため、声を出していた。私の考えていたものは普通の猫のようにニャーと鳴いて答えてくれる程度に考えていた。流石に普通に生きていて、猫の名前を呼んだら日本語で返答されるとは思わなかった。

「あの、飼い主?さんから探してほしいって依頼があって、その、私が探してたんです」

 猫?に対して私は日本語で伝える。常識的に考えると猫に対して話しかける人はいても会話をする人は居ないだろう。ただこの猫は日本語が通じている。それなら会話をするほかはない。

「ほう、飼い主とな?あの者に飼われた覚えはないのだが。」
「はぁ……」

 会話が続いていることに少しの安心感が生まれた。得体のしれないモノと遭遇して会話ができているということは理性のない獣では無く、いきなり襲われることがない証明のように感じた。
 
 「ただ我は自由になった身。あの者のところに戻るつもりは全くない。お前がどのようにしてここに来たかは知らぬが帰るが良い」

 猫は威圧感のある声でそのように伝える。空気が震えるようなその声に私は従って、無言のまま後退りもと来た道を戻ろうとする。

(とりあえず元の場所に戻って社長に相談しよう。なんかよくわかんないし、信じてもらえらないかもしれないけどとにかくこの場所を離れないと)

 そう思い一歩を踏み出そうとした。

「いや、待て。お前をそのまま返すと我の居場所があの者に知られてしまうではないか。」

(社長が言っていたあの依頼文ちゃんと聞いておくんだった。そりゃこんなの逃げ出したっていうより手を離れたっていう他ないじゃん)

 猫は音もなくその場を移動する。その巨体が動くときに音が鳴らないわけがない。しかしその猫はただの猫ではなく。

「うむ、"殺すか"」

 尾が二本生えた、現世のものに害を与える猫。

 私は元来た道を走りながら思い出す。

「(今度からは依頼書ちゃんと読むことにしよう……。尻尾が二本ある時点でちょっとおかしいと思うべきだったじゃん!少し大きいってのはすごく大きかったけど!声をかけて反応するっていうのも日本語とは思わないじゃん)」

 考えながら走る。後ろにいる者のわけのわからない恐怖から逃げるようにただただ反省をしながら走る。次は今回のことを生かしてちゃんと依頼文を読もうと心に決めながら走り続ける。

(他になんか書いてあったっけ?今回の奴。社長に説明しないと!)

 そう思いながら、依頼書の内容を思い出す。
 後ろから音もなく猫は近寄って来る。
 暗闇を移動する影のように、そこに存在しないかのように、"この世に存在しないもの"のように。
 ただ私の後ろにそれは追いつく。

「逃がすわけにはいかん。お前はここで死ね」
「んぇ?」

 その声が聞こえたと同時に私の首から上が、獣臭い口の中に収まり。
 空穂の最後の一言は「んぇ」であった。その猫に食われる間際に頭に思い浮かんでいた依頼文は……。





『依頼 私の手から離れてしまった猫を探し出してほしい。お腹をすかせていると思います』


 その猫が空腹であったか定かではないが、現世で生活するものを食べてしまった。








「あー。間に合わなかったか」

 路地にたどり着いた僕は首から上がない学生服の少女を発見する。その学生服の少女はパーカーを着ており、ポケットからは見覚えのある巾着袋が溢れていた。

「今回のバイトは長続きすると思ったけど、自分から危険に行ってしまうようでは駄目だね……。」

 最初からこの場所には死体はない。そうしてしまえば何も起こらなかったことになる。僕は何度もそういう経験をしている。だから今回もまた同じようにするだけだ。どれだけ犠牲が出たとしても何も関係ないのだから。

「ただ、自分と同じ形をした動物の頭がないというのも気持ち悪いね。猫かぁ……。流石にこれは見逃せないね」

 その場にあった少女だったものを無視して僕は路地を進んでいく。僕の行く道は光がなくなっていく。そして僕の来た道には何もないのであった。


――――――――――――――――――――――
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