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FILE3 脅迫状
第十一話「ねえ、おじさん。上宮俊?」
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玄関の扉を開くと、薄暗い空模様が顔を覗く。
「さて、朝の冒険に繰り出しますか」
時計は午前5時。いつものように呟いてみる。一方足を踏み出すと......外の街灯がまだ消えていないことがわかる。本当ならひんやりとした風を感じたかったけど、まだその時期ではないようだ。
本当に好きなんだけどねえ......あのひんやりとした感じ......
「あ、上宮さん。おはようございます」
隣の部屋から青いジャージ姿が似合う波崎くんが出てくる。
「おはよう。これからジョギング?」
「はい。上宮さんは今日から始めるんですよね。ウォーキング」
「ああ、私もじっとしていたら体が鈍ってしまうからね。それに、街を歩き回ることで新たな一面も見つけることができるからね。本当にいいアイデアをありがとう」
「そんなことないですよ、ありがちな事を言っただけですし......」
「結構運動好きそうだし、体育の教師とか向いているんじゃあないの?」
「いやいやいや、とんでもない! 私そこまで体力はないんですよ!!」
それが彼のスタートの合図。波崎くんは凄い勢いで走り出す。
「参ったなあ......明日からはストップウオッチを持っていくべきかな」
もしここにストップウオッチがあれば、走り出した瞬間にスイッチを押し、世界記録を塗り返す徹底的瞬間に立ち会えたであろう。まあいいや。歩き始めるとしようか。
昨日、波崎くんが朝のウォーキングを提案してくれたのは、それほど私の顔に疲れが出ていたからであろう。
一週間前、廃墟にいたはずのシロナちゃんがいなくなったあの日から、私の頭の中には廃墟に残された毛布と黒い液体、そして両親が姿を消した日の光景しかなかった。恥ずかしい話、落ち込んでいたんだ。あの日に残された赤い血液と廃墟の黒い液体が何度か重なり、仕事に取りかかる気にもならなかった。
ウォーキングの効果は波崎くんの思惑通りだ。一島町の景色は私の沈んだ気持ちを救い上げてくれる。そして、まだ私が知らなかった新鮮な景色は、私の記者精神を高ぶらせる。
「ん? こんなところに花屋なんてあったんだ」
こんな感じにね。花屋はまだ営業前なのか、シャッターが降りていており、そこに張り紙が張られている。
「へえ......昨日開店したばっかりなんだ」
ここの花屋の店主はどんな人なのだろうか。開店した後で花でも買ってみようか。
......ん? シャッターの隣の扉から誰か出てきたぞ......?
「さあ行こう、柄子。朝の散歩へ」
「ええ、もちろんよ。獲濡」
......
「あ、あの......あなた達が......ここの店主?」
呆気にとられながら、一週間前にサービスエリアで見かけた磁石カップルに訪ねる。
「本当に朝日が美しいわね......」
「ああ......俺たちの幸せを朝日が祝福しているのさ」
「やだもう獲濡ったら!」
アカン、周りが見えてない。
「昨日の"一島公園"から見た光景は美しかったわ......」
「今日もその光景を見にいこうか。そこで俺たちの愛を互いに語り合おう」
「そうね。私はSであなたはN。二人は永遠だということを、朝日にお伝えしましょう」
一島公園か......
磁石カップルは二人だけの世界に包まれたまま歩いて行く。その後ろを私がストーキングをしていけば、その一島公園にたどり着くことができるだろう。
それにしても、この二人がこの街に引っ越していたなんて......サービスエリアでの印象が強かった為にこんなことを思ってしまった。後で店が開いてから引っ越しの挨拶を含めて花を買ってみようかな。
一島公園は、山の中にあった。遊具はブランコと滑り台、鉄棒、そしてジャングルジムと簡素だ。この公園の価値といえば、遠くにある一島がよく見えることぐらいだろう。だが、それがいい。朝日が照らす一島はとても美しい。特等席であるベンチを占拠している磁石カップルも堪能しているであろう。
「少しは元気が出たかな......」
ため息を一つつきながら、改めて周りを見渡す。
「......いや、これがないと元気がでないか」
私は見つけた自販機に近寄り、いつもの飲み物を購入する。
「ねえ、おじさん。上宮俊?」
後ろを振り替えると、いつの間にか小学生ほどの女の子が立っている。一週間前にも似たようなことがあったような気がするけど、今回は慣れてしまったのか特別驚くほどでもなかった。
「そうだけど、サインが欲しいのかい?」
でもなんでこの子も私の名前を知っているんだろう? 一週間前の亀の化け物といい、私の記事がそこまで読まれているというのだろうか。
「これ、お父さんから」
女の子が差し出したのは、封筒だ。
「ああ、ありがとう。ところで君はどこで私の名前を......」
......いない。
おかしいなあ、確かに今、女の子と出会ったような気がするんだけど......まるで瞬きした瞬間に消えたようだった。目撃者を考えても、磁石カップルは見えていないろうしなあ......まあいいや。そう考えながら、私は女の子から受け取った封筒を見る。
"脅迫状"
「さて、朝の冒険に繰り出しますか」
時計は午前5時。いつものように呟いてみる。一方足を踏み出すと......外の街灯がまだ消えていないことがわかる。本当ならひんやりとした風を感じたかったけど、まだその時期ではないようだ。
本当に好きなんだけどねえ......あのひんやりとした感じ......
「あ、上宮さん。おはようございます」
隣の部屋から青いジャージ姿が似合う波崎くんが出てくる。
「おはよう。これからジョギング?」
「はい。上宮さんは今日から始めるんですよね。ウォーキング」
「ああ、私もじっとしていたら体が鈍ってしまうからね。それに、街を歩き回ることで新たな一面も見つけることができるからね。本当にいいアイデアをありがとう」
「そんなことないですよ、ありがちな事を言っただけですし......」
「結構運動好きそうだし、体育の教師とか向いているんじゃあないの?」
「いやいやいや、とんでもない! 私そこまで体力はないんですよ!!」
それが彼のスタートの合図。波崎くんは凄い勢いで走り出す。
「参ったなあ......明日からはストップウオッチを持っていくべきかな」
もしここにストップウオッチがあれば、走り出した瞬間にスイッチを押し、世界記録を塗り返す徹底的瞬間に立ち会えたであろう。まあいいや。歩き始めるとしようか。
昨日、波崎くんが朝のウォーキングを提案してくれたのは、それほど私の顔に疲れが出ていたからであろう。
一週間前、廃墟にいたはずのシロナちゃんがいなくなったあの日から、私の頭の中には廃墟に残された毛布と黒い液体、そして両親が姿を消した日の光景しかなかった。恥ずかしい話、落ち込んでいたんだ。あの日に残された赤い血液と廃墟の黒い液体が何度か重なり、仕事に取りかかる気にもならなかった。
ウォーキングの効果は波崎くんの思惑通りだ。一島町の景色は私の沈んだ気持ちを救い上げてくれる。そして、まだ私が知らなかった新鮮な景色は、私の記者精神を高ぶらせる。
「ん? こんなところに花屋なんてあったんだ」
こんな感じにね。花屋はまだ営業前なのか、シャッターが降りていており、そこに張り紙が張られている。
「へえ......昨日開店したばっかりなんだ」
ここの花屋の店主はどんな人なのだろうか。開店した後で花でも買ってみようか。
......ん? シャッターの隣の扉から誰か出てきたぞ......?
「さあ行こう、柄子。朝の散歩へ」
「ええ、もちろんよ。獲濡」
......
「あ、あの......あなた達が......ここの店主?」
呆気にとられながら、一週間前にサービスエリアで見かけた磁石カップルに訪ねる。
「本当に朝日が美しいわね......」
「ああ......俺たちの幸せを朝日が祝福しているのさ」
「やだもう獲濡ったら!」
アカン、周りが見えてない。
「昨日の"一島公園"から見た光景は美しかったわ......」
「今日もその光景を見にいこうか。そこで俺たちの愛を互いに語り合おう」
「そうね。私はSであなたはN。二人は永遠だということを、朝日にお伝えしましょう」
一島公園か......
磁石カップルは二人だけの世界に包まれたまま歩いて行く。その後ろを私がストーキングをしていけば、その一島公園にたどり着くことができるだろう。
それにしても、この二人がこの街に引っ越していたなんて......サービスエリアでの印象が強かった為にこんなことを思ってしまった。後で店が開いてから引っ越しの挨拶を含めて花を買ってみようかな。
一島公園は、山の中にあった。遊具はブランコと滑り台、鉄棒、そしてジャングルジムと簡素だ。この公園の価値といえば、遠くにある一島がよく見えることぐらいだろう。だが、それがいい。朝日が照らす一島はとても美しい。特等席であるベンチを占拠している磁石カップルも堪能しているであろう。
「少しは元気が出たかな......」
ため息を一つつきながら、改めて周りを見渡す。
「......いや、これがないと元気がでないか」
私は見つけた自販機に近寄り、いつもの飲み物を購入する。
「ねえ、おじさん。上宮俊?」
後ろを振り替えると、いつの間にか小学生ほどの女の子が立っている。一週間前にも似たようなことがあったような気がするけど、今回は慣れてしまったのか特別驚くほどでもなかった。
「そうだけど、サインが欲しいのかい?」
でもなんでこの子も私の名前を知っているんだろう? 一週間前の亀の化け物といい、私の記事がそこまで読まれているというのだろうか。
「これ、お父さんから」
女の子が差し出したのは、封筒だ。
「ああ、ありがとう。ところで君はどこで私の名前を......」
......いない。
おかしいなあ、確かに今、女の子と出会ったような気がするんだけど......まるで瞬きした瞬間に消えたようだった。目撃者を考えても、磁石カップルは見えていないろうしなあ......まあいいや。そう考えながら、私は女の子から受け取った封筒を見る。
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