トライアングル△ オフィスラブ

sora

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残業がしばらく続いたが、珍しく定時で帰れる日があった。簡単に今日は加藤がいなかったのだ。

「佐々木さん!飲みに行きましょう!」

「えっ。」

帰る支度を整えていると急に声をかけられた。シッポを勢い良くフリフリしているように見える瀬戸の勢いに、一瞬引いてしまった佐々木。
と、同時にキラキラした目を見て、可愛いとも思ってしまった。大型犬に好かれるとこんな感じなのかと思いながら、みんなを誘って居酒屋へ行くことに。

しかし、帰る準備をする前に声掛けをしていた瀬戸は、みんなに置いていかれてしまったようだ。
(うぅ~佐々木さんまで置いてった~っ!)
急いでオフィスから出ようとした際、人にぶつかりそうになった。
「あっぶね!」
「すいませんっ、あ!望月係長!飲みに行きましょう!」
ぶつかりそうになった相手は望月だった。
見ると、全く帰る準備をしていない様子で。書類をかかえ、残業中であることはあきらかだったが、瀬戸は勢いで声をかけたようだ。
「あ~さっき佐々木も言ってたな。今日は若いモンだけで行ってきな!俺がいたら上司の俺の愚痴言えないだろ~」
わはは~と笑う望月に、瀬戸は愚痴なんてないと答えるが、お前は俺の事上司と思ってないだろ!と笑いながら頭を軽くチョップされた。

(望月係長程、上司感ない人いないんだよな。)

「今日も残業ですか?」
「ん~まぁな~」
望月は財布をとりだし、何をしているのかと思えば……
ん、と渡されたのは1万円。
「えぇ!イヤイヤ、申し訳ないですこれは!」
「いいから、楽しんでこいよ!んじゃ、俺はまだ用事あるから。」
お金を手渡し颯爽と去っていく望月の後ろ姿を見て、かっこいいと思い、いつか俺もやってみたいと企む瀬戸。まぁ、こんなことを話したら、絶対佐々木は笑うだろうが。

ありがたく使わせて頂くことにした。





◇◇◇◇◇





ガヤガヤと騒がしい店内。
居酒屋チェーン店の半個室には、既にメンバーが揃い飲み始めていた。

「もう飲んでるし!」

今日飲みにきたのは、今日きたメンバーで1番年上の新婚の鈴木、鈴木の1つ下の大河原。さらにその1つ下の佐々木に、瀬戸の同期の葉山。葉山だけ女性だか、同期とあって瀬戸と仲が良く、フットワークが軽い。
新婚の鈴木の参加頻度は減ったが、比較的いつも飲みに来ているメンバーだ。

(若いモンって言っても望月係長とそんなに変わらないじゃん。)

鈴木が30歳、望月が35歳。5歳しか変わらない。確かに瀬戸とは13も離れており、若いモン扱いされるのもわかるが。
(むしろ鈴木さんの方が老けているというかなんと言うか……)

「あ!そういえば……」
瀬戸はさっきのオフィスでのやり取りを思い出し、忘れないうちにとガソゴソとカバンを漁り、財布を取り出した。それを見た面々は、今日は瀬戸の奢り?やら、どうしちゃったの?やら言われたが。いやいやいや、と慌てて否定し、1万円札を取りだした。
「帰りに望月係長誘ったんですけど、断られちゃって。そしたら、今日の飲みに使ってくれ~って渡されました。」
えー!と、一同驚いた。なんて事ない、ただのプライベートの飲みなのに。わざわざ気を使ってくれた事が嬉しくなる。

やっぱり望月係長はすごい!
となったが、同時にある話題が上がった。
『なぜ望月は結婚しないのか。』
顔は誰もが羨むようなイケメン。涙ボクロがセクシーさを演出している。モデルにならないのが不思議なくらいだが、過去スカウトは受けているようだ。
180cmの高身長。スラッと長い手足。
スポーツが好きで、休みの日はそこら辺の道路を走っているのを、何人もが目撃している。
その上ジムに通っているからか、体型も同年代と比べて締まっている。見た目はゴリゴリのマッチョという訳ではないが、鈴木と大河原の話によると、シックスパックがしっかりあるらしい。女性受けを狙ってやっていない所がまたなんとも……。
性格だって悪くない。いつも明るく、みんなを気にかけることができる根っからのリーダー。傍にいるだけで明るい気持ちにさせてくれる。
現在は係長職で年収もある。同期と比較すると出世はかなり早いようで、出世街道には間違いなく乗っている、将来有望株。
貯金だってしているようだ。なぜならお金を使う趣味がないから。ギャンブル、タバコはしない。酒も相当飲めるようだが、プライベートではガンガン飲み歩く人ではない。

「これだけ揃って結婚出来ないとしたら俺ら一生独身じゃん……」
大河原さんが絶望的に呟いたが、瀬戸は悪気もなく、鈴木さんだって結婚しているから大丈夫!とにっこり笑顔で答えていた。当然鈴木からお叱りを受けていたが。

(別に今どき結婚が全てじゃないし……結婚しなくたっていいと思うけどな。)
ワイワイ騒ぐ男性陣をよそに、佐々木は1人そんな事を考えていた。
(でもまぁ……望月さんが魅力的なのは確かだけどな。)
ぼんやりと日本酒を啜る。そんな様子を見て、飲み過ぎだと背中を叩かれ、むせる佐々木。

「私、前に聞いたことあるんですけど……望月係長って社長ご子息なんですか?好きな人と結婚させて貰えないとかなんとか聞いて……」
「え?そうなの!?」
驚く瀬戸に、葉山は先輩に聞いた噂だけどね~と答えた。
「いやいや、確かに社長と苗字一緒だけど、あの人には社長ご子息感はないって!」
威厳が足りないよなぁと、わははと笑う男性陣に、望月がここにいたら確実にどつかれるだろうなと思う佐々木と葉山。
「でも、さすがに彼女はいるかも……」
「確かに!今日も用事あるって断られましたし。」
「隠すのうまそうだもんな~あの人。」
今度カマかけて見るか!と笑いながら話している中で、1人だけ心ここに在らずな佐々木。
(やっぱり彼女くらいはいるよな……)
だってあんなに優しいのだから。
プライベートで一緒に出かけた時も、楽しすぎてあっという間に時間が過ぎてしまったし……と、1人モヤモヤする。
「プライベートも謎だよなぁ。」
「絶妙に距離感じますよね、望月係長って。」
「そう言われると、仕事以外で関わったことないわ……」
年齢関係なく、望月はフレンドリーに接してくれるが、どことなく壁を感じると言う一同。

(え?プライベートで交流あるの俺だけ?他の人も誘ったりしてるのかと思ってた……)

佐々木はその話を聞いて、少し心が軽くなったようだ。特別感が嬉しく、思わずにやけてしまう佐々木だった。

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