「別れて欲しい」と言われました。嫌だったので断りました。

きんのたまご

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私としてはそれなりに仲良く出来ていたと思っていたのですが…。
旦那様はそうは思っていらっしゃらなかったみたい。

だって旦那様は今、私の目の前で頭を下げて「どうか私と別れて欲しい」と仰っておられるのですもの。

「旦那様、理由をお伺いしても?」

私がそう言うと旦那様は気まずそうに顔を上げられた。

「………」

理由はお聞かせ頂けないのかしら?
まあそうね、あまり胸を張って言える理由ではありませんものね。
聞かなくても知っている別れの理由を聞くあたり私も意地悪かしら?
でも、その位は許されるでしょう?
だって旦那様が私に頭を下げられるくらいには己が悪いと思われているのでしょうから。

理由は旦那様の不貞行為。
他に好きな女性が出来てしまわれたのです。
好きになるまでは……まあ、妻のある身で良い事とは言えませんが、人を好きになるのに理由など無くいきなり好きになってしまうものですものね。
妻の立場としては複雑ですが、理解出来なくもないです。
私も出会って居ないだけで何処かにそんな運命的に恋に落ちる相手が居るのかもしれませんし。

ですが、許されるのは想うまで。
実際に裏切り行為をされてしまってはこちらとしてもとても困ってしまいますわ。
しかも隠し通して頂けるのであればまだマシなものを隠す気も無かったのか、はたまた初めての恋に浮かれて隠すという行為自体頭に無かったのか、旦那様の不貞行為は社交界でも頻繁に目撃されていまして、自ずと私の耳にも入って来るのです。
まあ私自ら目撃した事も御座いますが、その時の私の隣にいた方の顔を思い出すと申し訳ない気持ちになってしまいますわ。
きっととても気まずい思いをなさった事でしょう。
まあ、私もそれと同じくらいには気まず思いをしましたが、それは今はどうでも良いですわね。

未だに何も話さず心底困ったという顔をなされている旦那様。
私も暇では無いのですが、執事もチラチラとこちらを見ていますし、そもそもここは屋敷の玄関ホールなのです。

外から戻られた旦那様をお迎えにあがったらいきなり「別れて欲しい」と頭を下げられて……執事もメイド達も沢山人のいる所でこんな事を言われるとは驚きますよねぇ。
こんな事すら隠す気が無いのは最早潔くて好感すら持てますわ……いえ、それは嘘ですが。


私は一つ息をつき目の前の何とも情けない旦那様を見やる。

そして満面の笑みを浮かべると、屋敷のみんなを見渡して返事をする。

「お断り致します」と。

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