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あー腹が立つ!
もうこちらが婚約解消でいいと言っているのに、何をそんなに嫌がるのか。
これまでの行動を見てもヘクターが婚約者である私の事を好きでは無いのは分かりきっているのに、そんなにも自分の事を好きだと言う女を手放すののが惜しいのだろうか。もし本当にそんな事を思っているのならクズ男としか言いようが無い。
怒りに任せ部屋を飛び出し自分の部屋に戻った私は怒りのままクッションを殴り付ける。
ごめんクッション!お前は悪く無い!無いけど…今は殴らせてーーー!
はぁはぁはぁ、ひとしきり暴れに暴れて病み上がりの軟弱な身体がとうとう悲鳴をあげた。
「大丈夫ですか?お嬢様。そんなに興奮なされてはお体に悪いですよ」
はぁはぁはぁ、うん、今実感中。
「…ヘクターは?」
「お帰りになられましたよ」
「そう……婚約の事は…」
「婚約解消はなされていません」
「はぁ…」
やっぱりか、何処かでそんなような気がしていた。どうせ本人もいないからとか何とか言ったのだろうあの口先だけの男が。
「ご主人様と奥様はどう思っていらっしゃるか分かりませんが、少なくともマリアンヌ様はお嬢様とヘクター様の事を反対なさっておいでなのでいずれはこのご婚約は無かった事になるのではないですかね」
「なら、いいけど」
私は寝転んでいたベッドから身を起こす。
「カトリーヌに手紙を書くわ!」
「……構いませんが、急にどうなされたのです?」
唐突にそんな事を言い出した私に怪訝な顔でメアリーはレターセットを手渡してくれる。
「カトリーヌも私とヘクターの事を知っているのでしょう?家族は学園での私達の事を知らないはず、だから私達が婚約者としてどれだけ上手くいって無かったか教えて貰うわ!」
私は急いで手紙を書いてメアリーに出して貰うように託した。
なんだか変な方向に頑張っているなぁと生暖かい目を向けるメアリーには気付かない私はカトリーヌからどんな話が聞けるか今からワクワクしていた。
ふふっさぞ学園でも私を蔑ろにしていたのでしょうね。これで確実に婚約解消へと大きな一歩を踏み出せるわ!この時の私はその事を微塵も疑わなかった。
「メアリーどう思う?あの男本当にあの子の事を好きだと思う?」
夜、お嬢様が眠った後私はマリアンヌ様に呼ばれていた。
「私には分かりかねます」
「……あの男最後まで婚約解消を受け入れなかった。婚約破棄では無く解消にしてあげると言っているのに」
「…しかしそれだけでヘクター様がお嬢様に好意を寄せている証明にはなりません」
「ええ、勿論よ。今までのこともある、信用なんて出来るわけが無いわ。ただ、今あの子は記憶を無くしているからヘクターへの気持ちが無いけれど、もし!万が一思い出したら…ずっと慕っていたヘクターにそんな事を言われて…どう思うのかしら」
「……………」
お嬢様の記憶で無くなったのはあの男がお嬢様の婚約者であったという所だけ、正直もう絶対に戻らなくてもいいとさえ思っている。
だがしかし元々お嬢様の中にあった記憶…そう、それはいつお嬢様の中に蘇ってもおかしくは無い。
自分が記憶を無くしている間に勝手に大好きな婚約者と別れさせられたら……。
でもあの男はやはりお嬢様には相応しくない。
絶対に別れて貰いたい。
近々来られるであろうカトリーヌ様からどんな話が聞けるのか私も少し楽しみになって来た。
「大丈夫です、マリアンヌ様。こうなれば後々お嬢様が後悔されないようにもっともっとヘクターの事を嫌いになって頂きましょう!」
「!そうね!それはいい考えだわ!」
その夜マリアンヌの部屋から明かりが消えることは無かった。
もうこちらが婚約解消でいいと言っているのに、何をそんなに嫌がるのか。
これまでの行動を見てもヘクターが婚約者である私の事を好きでは無いのは分かりきっているのに、そんなにも自分の事を好きだと言う女を手放すののが惜しいのだろうか。もし本当にそんな事を思っているのならクズ男としか言いようが無い。
怒りに任せ部屋を飛び出し自分の部屋に戻った私は怒りのままクッションを殴り付ける。
ごめんクッション!お前は悪く無い!無いけど…今は殴らせてーーー!
はぁはぁはぁ、ひとしきり暴れに暴れて病み上がりの軟弱な身体がとうとう悲鳴をあげた。
「大丈夫ですか?お嬢様。そんなに興奮なされてはお体に悪いですよ」
はぁはぁはぁ、うん、今実感中。
「…ヘクターは?」
「お帰りになられましたよ」
「そう……婚約の事は…」
「婚約解消はなされていません」
「はぁ…」
やっぱりか、何処かでそんなような気がしていた。どうせ本人もいないからとか何とか言ったのだろうあの口先だけの男が。
「ご主人様と奥様はどう思っていらっしゃるか分かりませんが、少なくともマリアンヌ様はお嬢様とヘクター様の事を反対なさっておいでなのでいずれはこのご婚約は無かった事になるのではないですかね」
「なら、いいけど」
私は寝転んでいたベッドから身を起こす。
「カトリーヌに手紙を書くわ!」
「……構いませんが、急にどうなされたのです?」
唐突にそんな事を言い出した私に怪訝な顔でメアリーはレターセットを手渡してくれる。
「カトリーヌも私とヘクターの事を知っているのでしょう?家族は学園での私達の事を知らないはず、だから私達が婚約者としてどれだけ上手くいって無かったか教えて貰うわ!」
私は急いで手紙を書いてメアリーに出して貰うように託した。
なんだか変な方向に頑張っているなぁと生暖かい目を向けるメアリーには気付かない私はカトリーヌからどんな話が聞けるか今からワクワクしていた。
ふふっさぞ学園でも私を蔑ろにしていたのでしょうね。これで確実に婚約解消へと大きな一歩を踏み出せるわ!この時の私はその事を微塵も疑わなかった。
「メアリーどう思う?あの男本当にあの子の事を好きだと思う?」
夜、お嬢様が眠った後私はマリアンヌ様に呼ばれていた。
「私には分かりかねます」
「……あの男最後まで婚約解消を受け入れなかった。婚約破棄では無く解消にしてあげると言っているのに」
「…しかしそれだけでヘクター様がお嬢様に好意を寄せている証明にはなりません」
「ええ、勿論よ。今までのこともある、信用なんて出来るわけが無いわ。ただ、今あの子は記憶を無くしているからヘクターへの気持ちが無いけれど、もし!万が一思い出したら…ずっと慕っていたヘクターにそんな事を言われて…どう思うのかしら」
「……………」
お嬢様の記憶で無くなったのはあの男がお嬢様の婚約者であったという所だけ、正直もう絶対に戻らなくてもいいとさえ思っている。
だがしかし元々お嬢様の中にあった記憶…そう、それはいつお嬢様の中に蘇ってもおかしくは無い。
自分が記憶を無くしている間に勝手に大好きな婚約者と別れさせられたら……。
でもあの男はやはりお嬢様には相応しくない。
絶対に別れて貰いたい。
近々来られるであろうカトリーヌ様からどんな話が聞けるのか私も少し楽しみになって来た。
「大丈夫です、マリアンヌ様。こうなれば後々お嬢様が後悔されないようにもっともっとヘクターの事を嫌いになって頂きましょう!」
「!そうね!それはいい考えだわ!」
その夜マリアンヌの部屋から明かりが消えることは無かった。
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コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
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