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元妻と今の妻
私と今の妻であるチュニックが初めて出会ったのは元妻であるフレアと出席したとある夜会。
その夜会は結婚してから初めて出た夜会であの時は皆フレアの妖精のような美しさに私に良い奥様を貰って羨ましいと言って来ていた。
元々美人で有名だった妻、私は周りから羨望の眼差しを向けられていた。
そんな中「あら、フレア様ではありませんか!お久しぶりです」そう言って近付いて来たのがチュニックだった。
二人は同じ歳で、アカデミーの同級生だった。
「私は男爵令嬢でフレア様よりも家格は下ですが在学中はとても仲良くさせてもらっていたのですよ」
と言って笑うチュニックに妻の優しさを再確認した。
ああ、この妻は例え自分よりも身分が低い人達にも優しく出来るのだと。
それはそうか使用人達にも優しいのだそんな事は当たり前だ。
何故かそんな妻に私の方が誇らしく思ったのを覚えている。
それから暫くチュニックは妻の横に立ち在学中のフレアがどんな様子だったかを聞かせてくれた。
フレアは元々大人しい性格で目立つ事も得意では無く恥ずかしがり屋な所もあって、チュニックがあまりにもフレアを褒めるようなことをずっと言っていたので終始下を向き恥ずかしそうにしていた。
それに対してチュニックは社交的なのか聞き手を飽きさせない話術で、私も話をしていてとても楽しかった。
今思えばフレアを褒められていたのも一つの要因だったのだろう。
そんな折チュニックが悩ましげに言い出した。
「あーあ、本当にフレア様が羨ましいわぁ。こんなに素敵な旦那様がいて。私なんてまだ婚約者もいないのです!」
「そうなのか、君ほど美しければすぐに見つかるだろう」
それは本心で思った事。勿論フレアの美しさには叶わないが彼女も中々の美人、しかも社交的で明るく妻が仲良くしていたというのだからきっと優しい心の持ち主なのだろう。
「ありがとうございます。ですが中々爵位の低い家ですので……それで何処かに行儀見習いとしてお仕えできる所がないかと探していたところなんです。そういう所の方が良い方と出会えるとも聞きますし、婚姻は家の為でもありますし少しでも良い方と出会いたくて。フレア様のような優しい方の侍女なんて素敵ですよね。羨ましいです」
「そうか……」
私は少し考える。
「フレア、チュニック令嬢を君の侍女として迎えてはどうだい?君も気心の知れた友人が侍女として来てくれたら安心だろう?」
私はとてもいい考えだと言わんばかりにその場でチュニックを侍女にする事を決めた。
「あ、でも旦那様…」
その提案に驚いた顔をしたフレアがその時何か言いかけていたがその言葉はチュニックが「嬉しいです!」と言った言葉に掻き消えた。
その時の私は美しく優しい妻に同じく美しく優しい侍女を侍らせて、皆からの羨望を集め満足していた。
懐かしい夢を見た。
あの頃はフレアを優しい女だと思い込んでいた。
隣で眠るチュニックを見る。
こんなに優しいチュニックの何が気に入らなかったのか。
チュニックの顔を見ているとあの夢でのフレアが蘇った。
チュニックから褒められて嬉しがっていたはずのフレアの顔が思い出せない、チュニックを侍女にすると決めた時の嬉しそうな顔も思い出せない。
………………何かを言おうとしていたフレア。
立て続けに送られて来た手紙…そのせいで余計な事まで考えてしまう。
もしかして……あの時、喜んでいると思ったのは勘違いだったのだろうか……あの時、言おうとしていたのは………。
「貴方、どうしたの?もう少し眠りましょう?」
まだ夜も明けきらぬ薄暗い部屋の中、ベッドに座ったまま動かない私を見て怪訝に思ったチュニックがそう言いながら私の手を引く。
「いや、なんでもない」
そんな愛しい妻の行動に私は考えるのを止め再び眠りに落ちた。
その夜会は結婚してから初めて出た夜会であの時は皆フレアの妖精のような美しさに私に良い奥様を貰って羨ましいと言って来ていた。
元々美人で有名だった妻、私は周りから羨望の眼差しを向けられていた。
そんな中「あら、フレア様ではありませんか!お久しぶりです」そう言って近付いて来たのがチュニックだった。
二人は同じ歳で、アカデミーの同級生だった。
「私は男爵令嬢でフレア様よりも家格は下ですが在学中はとても仲良くさせてもらっていたのですよ」
と言って笑うチュニックに妻の優しさを再確認した。
ああ、この妻は例え自分よりも身分が低い人達にも優しく出来るのだと。
それはそうか使用人達にも優しいのだそんな事は当たり前だ。
何故かそんな妻に私の方が誇らしく思ったのを覚えている。
それから暫くチュニックは妻の横に立ち在学中のフレアがどんな様子だったかを聞かせてくれた。
フレアは元々大人しい性格で目立つ事も得意では無く恥ずかしがり屋な所もあって、チュニックがあまりにもフレアを褒めるようなことをずっと言っていたので終始下を向き恥ずかしそうにしていた。
それに対してチュニックは社交的なのか聞き手を飽きさせない話術で、私も話をしていてとても楽しかった。
今思えばフレアを褒められていたのも一つの要因だったのだろう。
そんな折チュニックが悩ましげに言い出した。
「あーあ、本当にフレア様が羨ましいわぁ。こんなに素敵な旦那様がいて。私なんてまだ婚約者もいないのです!」
「そうなのか、君ほど美しければすぐに見つかるだろう」
それは本心で思った事。勿論フレアの美しさには叶わないが彼女も中々の美人、しかも社交的で明るく妻が仲良くしていたというのだからきっと優しい心の持ち主なのだろう。
「ありがとうございます。ですが中々爵位の低い家ですので……それで何処かに行儀見習いとしてお仕えできる所がないかと探していたところなんです。そういう所の方が良い方と出会えるとも聞きますし、婚姻は家の為でもありますし少しでも良い方と出会いたくて。フレア様のような優しい方の侍女なんて素敵ですよね。羨ましいです」
「そうか……」
私は少し考える。
「フレア、チュニック令嬢を君の侍女として迎えてはどうだい?君も気心の知れた友人が侍女として来てくれたら安心だろう?」
私はとてもいい考えだと言わんばかりにその場でチュニックを侍女にする事を決めた。
「あ、でも旦那様…」
その提案に驚いた顔をしたフレアがその時何か言いかけていたがその言葉はチュニックが「嬉しいです!」と言った言葉に掻き消えた。
その時の私は美しく優しい妻に同じく美しく優しい侍女を侍らせて、皆からの羨望を集め満足していた。
懐かしい夢を見た。
あの頃はフレアを優しい女だと思い込んでいた。
隣で眠るチュニックを見る。
こんなに優しいチュニックの何が気に入らなかったのか。
チュニックの顔を見ているとあの夢でのフレアが蘇った。
チュニックから褒められて嬉しがっていたはずのフレアの顔が思い出せない、チュニックを侍女にすると決めた時の嬉しそうな顔も思い出せない。
………………何かを言おうとしていたフレア。
立て続けに送られて来た手紙…そのせいで余計な事まで考えてしまう。
もしかして……あの時、喜んでいると思ったのは勘違いだったのだろうか……あの時、言おうとしていたのは………。
「貴方、どうしたの?もう少し眠りましょう?」
まだ夜も明けきらぬ薄暗い部屋の中、ベッドに座ったまま動かない私を見て怪訝に思ったチュニックがそう言いながら私の手を引く。
「いや、なんでもない」
そんな愛しい妻の行動に私は考えるのを止め再び眠りに落ちた。
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