元妻からの手紙

きんのたまご

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明かされ始める真実①

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「あんた達の息子は本当に、簡単に騙せたわ」そう言って両親を馬鹿にし続けるチュニック。
「黙れ!黙れ!黙れ!」
両親を馬鹿にするチュニックに向けて私は叫ぶ。
「ふん、あんただって反対する親が屋敷から出て行った後!清々するって言ってたくせに!あはっ!今になってそんな綺麗事言ったって無駄よ」
「…良く喋るじゃないか。自ら罪を告白してくれるとはな」
そう言って父がチュニックに詰め寄るが、チュニックはそんな事気にしていないかのように続ける。こんなにも自分の罪をさらけ出して尚、罪に問われることは無いと確信するかのようなこの自信はどこから来るのか。
「……なぁに。私をどうしようっていうの?全部知ってるって言ってたけど、一体何を知ってるって言うの?今更そんな事誰も信じないわ、女に騙され何の罪も無い無実の妻に罪を着せて屋敷から追い出し、結果没落しかけたこんな馬鹿な親子の言う事なんてね!それとも自分たちの恥を晒す覚悟で世間に公表でもしようって訳?まぁでも私がやったって証拠なんて何処にもないでしょ?ふふっ残念だったわねぇ。それにいずれこの伯爵家を継ぐ後継者を産んだ母親である私を罪人にしてもいいの?」
チュニックはそう言うと勝ち誇ったような顔で微笑んだ。
そう、そうだチュニックがやったと今自分で罪の告白をしてはいるが確かに証拠は無い。
「あんた達さえ黙っていれば私は今まで通り良い妻良い母親良い嫁を演じてあげるわ。さぁどっちがいい?このままなーんにも知らない振りを続けて今まで通り過ごすか、全てさらけ出して自分達の恥を世間に公表するか!まぁ、そんな簡単な事考えなくても分かると思うけどね」
チュニックのその言葉に私は絶望した。
何も悪くないフレアに罪を着せ、こんな醜悪な女に自らの子供を産ませ、結果この伯爵家はあの女に乗っ取られる。
どうしてこんな事に、何故こうなった、どこで間違えた、誰が悪かった?


「後継者、後継者と繰り返しているけれど……それが貴女にとっての切り札かしら?」
それまで黙っていた母の静かでありながらも凛とした声が執務室に響く。
「……どういう事よ」
「そのままの意味よ」
そして母は一歩一歩チュニックへと近寄る。
「一体、誰の子供なのかしらね」
「っ!」
母のその言葉にチュニックの顔色が明らかに変わる。
「な、何言ってるのよ!正真正銘あの子はアウターの子供よ!」
「へぇ、そう。………私達は全てを知っているのよ」
「……………………だから、どうしたって…」
「全て知っていると言うことはあの子の父親が誰であるか、も知っていると言うことよ」
「「!」」
母のその言葉にチュニックはまずいと言う顔をして私はまさかと思った。
「私達は全てを知っているの」
繰り返される母のその言葉に執務室を見回すと父も母も執事もみんな同じ表情で私を見ていた。
そして急速に理解する。
ああ、そうかこの中でこの事実を知らなかったのは私だけか、と。
そんな私にチュニックは言い募る。
「アウター、アウターは信じるわよね?あの子は貴方の子供よ」
先程まで私を同じ穴の狢だと、何も知らない馬鹿だと、罵倒し馬鹿にしていたその口でチュニックは私へと媚びるように甘えた声を出す。
貴方の子供を産んだのだから助けてくれるでしょう?と。
本当は私の子供では無いのに?
そう思った途端腹の底から吐き気がした。
混み上がってくるなんとも言えぬ不快感を何とか何とか我慢する。

みんなみんな知っていた。
いつから?
フレアも知っていたのか?
いや、知っていた。
だから手紙を送って来たのだろう。
本当は私も気付いていた。
似てない息子。
だが、認めるのが怖かった。
妻を追い出し、浮気相手を屋敷に招き入れ、両親を追い出し、古くからの使用人達も追い出し、大切にしていた花壇までも潰し、そんな勝手な事も今までなら子供の為、その子供を産んでくれたチュニックの為と言い訳がきいたが………。
手紙によって思い起こされる、それらが本当の事ならば………。そう思うと怖かったのだ。

あんなに大事に守っていこうと手にした筈のものは、気が付けば今の私の手の中には何一つ残されていなかった。
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