元妻からの手紙

きんのたまご

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その後

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その後私は当然ながらカーディガン家から除籍された。
当主をまた父に戻し私はフレアに協力していた取引先の侯爵家の領地で平民として暮らしていくことになった。
身一つで追い出されたとしても文句も言えない私に最後の情けとして住むところを用意してくれた両親には感謝しかない。
そしてこんなどうしようも無い男を受け入れてくれた侯爵家にも……。


チュニックとは直ぐに離縁となった。
あんなに好きだった筈のフレアの事を蔑ろにする位に好きだった筈のチュニックと離縁する事になっても……もう何も思わなかった。
あの、全てのことが明るみになった日。あの日こそ全てチュニックのせいだ!あの女さえ居なければ!そう憎く思った。しかしチュニックの言っていた通り…………今なら分かる。見え透いた嘘に踊らされてフレアを裏切ったのは他の誰でも無い私なのだ、誰かのせいにして楽になる事は……許されない。

ずっと我が子だと思って育てていたトップス……。結局トップスはカーディガン家で育てられる筈も無く領地内で子供の居ない平民夫婦に引き取られる事になった。
可愛くて可愛くて大好きだったトップス。
……自分の子供では無かった……それは勿論ショックだった。でも、だからといってあの子が私を父と呼び私が我が子として育てて来た日々、家族として過ごした日々は……嘘では無い、そこには確かに愛情があった。
二度と会えないトップスの幸せを願う事位は……許されるだろうか。


そして、いよいよ屋敷を出て行く日。
父にはあの日以来口をきいて貰えなかったが今日最後に一言元気で暮らせと声を掛けて貰えて………泣きそうになった。
母は馬車に乗るまで見送ってくれた。
もう父、母、とは呼べないが今まで大切に育てて貰った事に感謝を伝え………そして決して二人の子育てが間違っていた訳では無く、全て私が間違っていたと伝えた。
その言葉を聞いて母はその場に崩れ落ちるように泣き崩れた。
もう慰める権利すら無い私はそんな母をその場に残し馬車へと乗り込む。
もう今後見る事が無いであろう屋敷を、この光景を目に焼きつける。
馬車が走り出す、滲む視界に思い出すのはフレアと結婚して直ぐの頃の幸せな時間。
何故、あの幸せな日々をもっと大事に出来なかったのか、悔やんでも悔やんでも悔やんでも悔やんでも…………あの日々がもう戻る事の無い夢のような時間だと、もう分かっている。

フレアからのあの手紙が全ての始まりだった。あの手紙が送られて来なければ……今もあの偽りだらけの幸せな日々を送っていたのだろうか……。
どちらが良かったかなんて分からない……でも知らなかった事を悔やむ自分に、これで良かったのだと生涯言い続けていくしかないのだ。


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