元妻からの手紙

きんのたまご

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チュニック①

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こんな家に産まれなければ……ずっとそう思ってきた。
平民からしたら貴族に産まれただけでも…なんて思うのかもしれない……でも貴族社会で一番爵位の低い男爵家なんて結局……家族のはる見栄の為に我慢して我慢して生活しなければならず、こんな生活なら裕福な平民の方が幾分か……いや、絶対にそっちの方が良かった。

小さい頃から可愛い可愛いと褒められていたけれどそんなにいいドレスが着れる訳でもなくて……それでも自分は可愛い、これだけの可愛さは財産だと思って過ごして来た。
その頃はまだ家の中や親しい人達という小さい集まりの中だけだったから自分の事を可愛いと思えていただけだとアカデミーに入学してから思い知る。

同じ制服を着ていても滲み出る…気品のようなもの……。それは私が手に入れたくても絶対に手に入らないもの。
苦労を知らない顔で笑う……本当のお嬢様。
そんな子達は勿論いっぱいいた、だけどその中でも公爵でも侯爵でも無く伯爵家の娘で注目されている姉妹がいた。
それがボトムス家の姉妹。
家の事業も順調で、家族とも仲良しで姉妹も仲良くて、好きあった婚約者がいて、美人。
羨ましくて妬ましくて……悔しくて悔しくてたまらなかった。
なんの苦労も知らずに笑っている、その顔が大嫌いだった。
それからはフレアを見かける度に嫌味を言うようになった。
でもフレアは怒らない。
そのうちちょっとした嫌がらせをするようになった。
それでもフレアは怒らない。
下位貴族の私にすら何も言えない小心者だと思えば少しは気が晴れたような気もしたが…フレアの目には私が写ってないような、私なんかの存在は眼中にも無いと言われているような……。
一度そう感じてしまうと、被害妄想なのかなんなのか現実にフレアからそう言われた訳ではないのに本当にそう言われているように思って益々フレアの事が嫌いになった。
そのうち私にも婚約者が出来た。
相手は子爵家の次男、そんな高位の貴族ではないけれど最近事業が上手くいっているみたいでお金目当てに婚約した。
向こうはパッとしない顔なのにお金を持っているだけで私みたいな美人を婚約者に出来たんだから感謝して欲しいわ。
その頃は私も婚約者の相手をするのに忙しくてフレアの相手もしていなかったのだが
………初めは良かった。相手も私に沢山プレゼントをくれたりして私の虚栄心を満たしてくれた、でもその内プレゼントも少なくなって………。
「もう、君には付き合ってられない。君は僕の事を金蔓としか見ていないのだろう。顔が美しくても性格がそれでは………ボトムス家のフレアさんを見習ったらどうだい?彼女は素晴らしいよ!美しくて優しくて!君みたいな偽りの見せかけだけの美しさでは無い!君とはもう婚約破棄をしようと思う」
それが私と婚約者だった男の最後の会話。



そこからはずっとずっとフレアの事を考える日々を送っていた。

どうすればあの邪魔な女を苦しめる事が出来るのだろうか………。
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