灰色のねこっち

ひさよし はじめ

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第十八話 ねこっちと発病

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 ねこっちが、くんちゃんと暮らすようになって十三年が経ちました。ねこっちももうおばぁちゃんです。ごはんもあんまりたくさん食べられなくなってしまいました。でもくんちゃんは、変わらずねこっちの頭をなでてくれます。ねこっちが食べやすいごはんも用意してくれます。

 ある日の夜、いつものようにくんちゃんの傍にあるねこっちのお気に入りクッションで丸くなっていました。トイレに行きたくなったねこっちは、クッションから立ち上がり玄関にあるねこっち用トイレにトコトコ歩いていきました。
 トイレまでもう少しのところで、目の前の景色がグニャリとゆがみました。

 ────ドサリ

 気が付くとねこっちの体は床に倒れています。景色はグルグルまわっています。体に力が入りません。

「ねこっち、どうした?」

 すぐにくんちゃんが、ねこっちに駆け寄ってきました。ねこっちはまだ動けません。ねこっちは弱々しい声で助けを求めました。

「くんちゃん、助けて。ねこっちは体が動きません」

 くんちゃんは慌ててどこかへ電話をかけて、コートを羽織るとねこっちを連れて車に乗り込みました。着いた所はねこっちの掛かりつけの病院でした。病院は閉まっていましたが、くんちゃんが電話をしてくれていたので先生が待ってくれていました。

 先生とくんちゃんは話をしています。話が終わると先生が近づいてきて言いました。

「ねこっちちゃん、体辛いよね。少し点滴しようね。そうしたら楽になるからね」

 ねこっちは横になったまま、腕に点滴がうたれます。その間も、くんちゃんと先生は何か話をしていました。

 点滴が終わると、くんちゃんがねこっちの頭をなでながら説明してくれました。原因は、ねこっちがノラ猫だった頃から持っていた病気「猫白血病」。それが発病してしまったのです。くんちゃんに先生が言いました。

「もって一週間です。出来る限りのことはやらせてもらいますが、覚悟はしておいて下さい」

 くんちゃんは、辛そうな顔をしています。だからねこっちは、くんちゃんの指をペロペロなめて慰めました。

「くんちゃん、大丈夫ですよ。ねこっちが傍にいますよ」

 体はうまく動かせないけど、少しでもくんちゃんに元気になってほしかったのです。するとくんちゃんは、先生に向き直って言いました。

「先生、私が仕事の間ねこっちを病院で預かってもらえませんか? 点滴で少しでも楽になるなら点滴をして下さい。仕事が終わったらすぐに迎えにきます。もし、急変するようなことがあったら電話を下さい。仕事中でもすぐに迎えにきます」

 先生は快く引き受けてくれました。その夜、ねこっちはずっとぐったりしていました。くんちゃんはねこっちの傍にずっといてくれました。トイレにいかなくてもいいように、ペットシートを敷いてくれました。あったかいフリースも用意してくれました。夜中も時々ねこっちの様子を伺って声をかけてくれました。

 そして朝になりました。
 仕事に出掛けるくんちゃんは、ねこっちをつれて病院に向かいます。点滴を打たれながら、動物病院のケージの中に入っているねこっちにくんちゃんが言います。

「ねこっち、私は今から仕事に行ってくる。何かあったら先生を呼ぶこと。ねこっちは、いつ死んでもおかしくない病気にかかっている。生きているものは、いつか必ず死ぬ。そして動物は人間より命が短い。だからこそ一つだけ約束をしてほしい」

 くんちゃんの真剣な目を見て、ねこっちもくんちゃんの目を見つめ返します。

「死ぬ時は私の腕の中で死んでほしい。ねこっちの目に最後に映るのは私であってほしいから。だから最後まで頑張って生きろ!」

 その言葉を聞いて、ねこっちはヨロヨロと立ち上がります。

「うん。約束する。ねこっちは最後までくんちゃんの傍にいます。だからお仕事がんばって。いってらっしゃい!」

 くんちゃんはいつもより気合の入った声で「いってきます!」と言って病院を出て行きました。
 ねこっちは先生に見守られながら横になりました。
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