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プロローグ

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 恋愛するとは何か?


 君は答えられるか?


 僕、玻座間 陽は思う。少なくとも、溺愛することではないと・・・。


 ーー春。それは、一般的に明るい季節であり、桜が咲く頃であり、出会いの季節であると人々は謳う。僕も多分に漏れず、人並みにそうであると思う。しかし、面倒ごとも多くなるのが世の常。例えばそう、今なんかも、目の前で威張っているいかにもな不良とか。


「(うわー。めっちゃ騒いでる。)」


 壮大とも取れるが、陽にとっては無駄にばかでかいとしか思えない高校の門の近くで、不良としか思えない身なりの者たちが写真などを撮っていた。それだけだったら何も問題は無いのだが、彼らは衆目を気にせずに騒いでいた。


 「(まあ、いいか。喧嘩してるわけでもないし。)」


 陽はそんな不良たちの事などすぐに忘れ、普通に素通りしていった。そして、しばらく道なりに進んでいくと、今度はいかにもガリ勉そうな眼鏡をかけた人たちが、道案内をしたり、人助けを積極的に行っていた。


 「(さっきとは、まるで逆だな。)」


 淡々と、それすらもどうでも良さそうな感想を残して、素通りしていった。


 「(しかし、聞いていた通りだなー。流石、征閃か。)」


ーー征閃学園高等学校。中ニ病感溢れる名前だが、侮るなかれ。この学校は、全国一の生徒数を誇る高校である。更に言えば、名門であり、最底辺であり、普通であると呼ばれている。

 つまり、どういうことなのかというと、学力に合った様々なコースがあり、超高校級の頭脳の持ち主や天才的な才能を持つ最高峰な人々が揃うTコース。

 ヤクザや不良が主といったあまり人格的にも学力的にもよろしくない最底辺といわれる人々が集うBコース。

 とにかく学力も運動能力も普通な中間の連中しか居ないHコース。......などなど他にもたくさんあり、絶対こんなの要らねえだろと言いたくなるコースもある。
  

 「(まあ、学費がタダだから来ただけだけど。)」


そう、誰も彼もがこの学校に入学するには訳がある。国が直接経営している為か、学費を含めたあらゆる経費が無料になるからだ。大事なことなのでもう一度言う、タダである。陽ももちろんそれが目当てでここに入学することにした。


 「(ウチはよくも悪くも一般家庭だからなー。出来る限り節約しておきたいし。)」


 と、まあ。至極普通すぎる理由で陽はここに来たので、当然Hコースを希望して受験した。しかし、今彼が持っている受験結果の紙にはHコースではなく、Nコースと書かれていた。


 「(Nコースとか絶対ろくなコースじゃない。早く、Hコースに変えてもらわないと。なんなら、校長に直談判でもしに行こうかな。ここの校長は、かなりの権力を持ってるらしいし。)」


 そんなことを考えながら、彼はそそくさと本校舎に入って行った。
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