老舗あやかし和菓子店 小洗屋

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豆腐小僧のヨツロウくん編

小洗屋のシラタマと豆腐小僧のヨツロウくん 5話

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 今日の夕飯は湯豆腐だ。
 囲炉裏をかこんで、じんわりと暖かい部屋で、熱々の豆腐を頬張っていく。
 囲炉裏には豆腐田楽が刺さり、香ばしいニンニク味噌の香りがシラタマの食欲をそそってくる。

「やっぱり、鶴雪さんのお豆腐は味が濃いね」

 父がポン酢に浸した豆腐をすすり、言った。
 それに、母もそうねとうなずく。

 シラタマはようく冷ました豆腐を頬張り、ゆっくりと飲み込むと、口を開く。

「父ちゃん、母ちゃん、あのね、」

 慎重に話し出したシラタマの声をじっと2人は聞いてくれる。

「あたしも、和菓子屋さんに、なれる?」

 その質問に父と母は顔を見合わせる。

「あたし、父ちゃんと母ちゃんの子だけど、猫又だから、和菓子屋さんにはなれないって、ユウちゃんにいわれたことあって。……猫又はお金のお仕事をする人多いし……」

 となりに座っていた母がシラタマの頭をゆっくりとなでる。

「シラタマがなりたいって思ったら、なんだってなれるわ」
「そっかぁ。和菓子、興味、わいてくれたか!」

 父と母は別々の言葉でシラタマの気持ちをうけとったようだ。

「父ちゃんは、シラタマがなりたいもをずっと探してくれたらいいと思っててな。でも、和菓子をやってみたいって思うなら、いくらでも教えるぞー」

 とても乗り気な父に、母が手でいさめる。

「シラタマ、シラタマにはいろんな選択肢があるわ。この和菓子屋を継ぐこと、新しい和菓子屋を作ること、和菓子屋をやめて別な仕事だってある。たくさん失敗して、大丈夫。だから、なになにだからできない、とか、なになにだからやらないといけない、とか、考えないでね。母ちゃんとの約束よ?」

 母の長い小指に、シラタマのふわふわの小指がひっかけられた。

「「やーくーそーくー」」

 2人で声をそろえると、指を切る。

 やりたいことをどんどん探すのは、少しばかり難しい。
 でも、失敗してもいいのは、とても心強い。

 シラタマは、まず何から教えてもらおうか、ワクワクしながら、鍋に箸を伸ばす。

 知らないことを学んでいく作業は、いつでもとっても楽しくて、おもしろい!
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