café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第35話 春のテラスは和やかに

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 グラスに口がついたところで、莉子が運んできたのは細長く四角い皿だ。
 そこにはいくつかのひと口料理が並んでいる。

「今日は旬の筍が入りましたので、そちらをメインで出させていただきますね」

 左から、鶏肉の生ハム、カマンベールチーズのアーモンドハニー添え、生ハムの筍巻きが並んでいる。
 筍はカツオ出汁で炊いて薄切りにされ、それを生ハムで巻かれている。

「鶏肉の生ハムは塩を添えてます。どれからでもシャンパンに合うかと思うので、どうぞ」

 莉子がつたえると、さっそくとみんなは箸をとる。
 連藤にもいつもどおりに手を取り伝え、連藤は生ハムと筍巻きをつまみあげた。

「おお……莉子さん、これはおいしい」

 生ハムの塩気と出汁の風味がうまく合い、さらにシャンパンのシルキーな泡がマッチする。

「莉子さん、カマンベールも美味しい~。僕、これ好きだなぁ~」

 するすると飲み込まれていくシャンパンを注ぎ足してから、莉子は次の料理を運んでくる。
 大皿にもられて出てきたのは、殻つきのホタテにアスパラ、大ぶりのエビに、筍だ。

「次は、こちらです。ただのバケツと思うなかれ。バケツ型バーベキューバケットになります。
 ここで焼くのは、筍とアスパラ、あとホタテと海老を炙って召し上がっていただきます。自分で食べ頃と思ったら食べてくださいね」

 フォルムはまるでバケツ。
 だが、炭受けがついた扱いやすい焼き台だ。
 仄かな熱気が流れてくるが、少し涼しくなってきた外気にちょうどいい。

 乗せられた筍にアスパラが、じっくりとあぶられ、香ばしい香りがのぼりはじめる。
 さらにホタテは貝殻つきなので、ぱかりと開くのが待ち遠しい。
 そこに合わせて出てきたのは白ワインだ。
 ニュージーランドのシャルドネで造られたワイン。
 明るく力強く、香りも華やかだ。

「じゃ、焼きは俺がやるかな」

 腕まくりをして立ち上がったのは三井だ。

「やっぱ、焼き台っていったら、三井だよな」

 巧がいうが、どういうことだろうと見つめていると、巧パパが声をたてて笑う。

「うちの三井、アウトドア派なんですよ。年に数回、三井主催のバーベキューがありましてね」

 話をしつつ、莉子は焼き上がりを待つ間につまめるものをと、ポテトサラダに、生ハムと、チーズの盛り合わせを添えておく。このポテトサラダは本当に芋のサラダだ。サイコロ状に切って茹でた芋に、粒マスタードとマヨネーズで和えてある。ちょっぴり大人味のポテトサラダだ。

 莉子は5人を店側からながめる。
 楽しげな表情、会話、笑い声……
 これを聞くだけで、カフェをやっていてよかったと莉子は思う。
 やはり南のワインは大勢で飲むのに似合う。
 軽やかな味わいは、気持ちも軽く弾ませてくれる。

 ただ、ちょっぴり、感じる気持ちもある。


 寂しさだ。
 
 どんなに仲良くなっても、客と店、この距離は縮まらない───


「……よし、次の料理の準備もはじめよ」

 莉子は厨房へと戻るのだった。

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