ストレイ・ラム【完結】

Motoki

文字の大きさ
6 / 115
黒い幻影

5

しおりを挟む
「ジョーダン! 依羅さんがいなかったから、あんくらいで済んだんじゃないか。友也さんだって、俺があーゆう事するって判っててパフェ作ってくれたんだろ」

「……期待に沿えず悪いね。私は、お前があそこまで言うとは思ってなかったよ」

 苦笑いを浮かべたマスターに、俺はペコリと頭を下げた。

「すいません、雰囲気悪くしちゃって。――でも俺の方は、松岡のお陰で助かった……のかなぁ?」

 首を傾げながら呟くと、松岡は「当然!」と自信満々に笑った。

「でも、依羅さんがいなくて残念だなぁ。あの人ならきっと、もっと面白いやり方してくれんのに」

 うっとりとして言う松岡の頭を、マスターがコツンと軽く叩く。

「依羅なら、周りの人間に笑われるような、彼女に恥をかかせる真似はしないよ」

「でも、俺よりもっと精神的なダメージは与えるじゃん。これ以上ないってくらいにさ」

「まあ、否定はしないよ。只、どちらに思いやりがあるかの問題だ」

「――もちろん、俺」

 自分の胸を親指で示す松岡に、ヒョイと眉を上げる事だけでマスターは応えた。

「よさみさん?」

「オーナーだよ、この店の。此処は依羅さんと友也さん、二人の店なんだ」

「へぇ。オーナーが二人」

 こんな小さな店に? という疑問は声に出さずにおく。そっと見上げた俺を見下ろして、友也さんは見透かすように微笑んだ。

「広くてはいけないし、独りでは駄目なんだ。私達はね。――それにしても、保の友達が偶然入って来るとは思わなかったよ。いつになったら紹介してくれるんだ? 保」

「だから、友達じゃねーって。こいつとしゃべったのは、今日が初めてなんだぜ」

 チラリと俺を見た松岡は、「只」と付け加えた。

「こいつ、俺の事よく見てんだよ。それも変な顔して」

「変な顔?」

 どういう事? と友也さんが俺を見る。

 そんな事言われても、俺だって困る。そもそも変な顔って……。

 それに、俺自身まさか松岡に気付かれてるとは思ってもみなかったので、なんと答えていいか判らず曖昧に頷いた。それを見ていた松岡が、隣の席から不満げな声を出す。

「見てんだろ。あの表情は何だろなぁ。怒ってんでもないし、馬鹿にしてんでもない……。かといって好感を持ってる顔でもないし。――ああ、やっぱ駄目だ。依羅さんのように上手くいかねぇ」

 両手で頭を抱え込んだ松岡は、ガッと勢いよく上げた顔を俺に向けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...