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黒い幻影
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校舎の一階廊下を歩いていた俺は、ふと中庭に人影を見つけて足を止めた。
よくよくあいつは、雨に濡れるのが好きなんだな。
こちらに背を向けているが、松岡なのに間違いない。暫く見ていた俺の視線に気付いたのか、クルリと顔だけをこちらに向けた。
ガラリと窓を開け、雨音に負けないよう声を張り上げる。
「何やってんの、お前」
体ごと振り返ったその腕には、何かを抱きかかえている。小走りに走って来た松岡が、俺の目の前にその黒い物体を掲げるように差し出した。
「なんだ? 子犬?」
俺にその泥まみれの子犬を押し付けて、窓をよじ登ってくる。
「窓から出入りするのって、癖なのか? その上お前、上履きで出てたのかよ。泥だらけじゃねーか」
ビタンッと水を滴らせながら廊下に飛び降りた松岡は、濡れた前髪をかき上げながらハハッと笑った。
「だって、廊下歩いてたら中庭でモゾモゾ何か動いてんだぜ。気になんだろ?」
「……なるかもしれないけどな、どーすんだよ、そんなびしょ濡れで。――…ああ。でもお前は二回目だから平気か」
呆れ半分でそう言ってる間にも、校舎に五時限目開始のチャイムが鳴り響く。
「なぁ、チャイム鳴ったぞ。この子犬どーすんの?」
「勿論、洗って乾かしてやんだよ」
俺から子犬を取り上げた松岡は、チャイムなどお構いなしで歩き出しながら、俺を振り返った。
「ところで。お前も付き合ってくれんだよなぁ?」
仕方なく「そうだな」と答えた俺に、松岡は満足げに頷いた。
「じゃあ、保健室行ってバスタオル借りてきてくれ」
「オッケ」
松岡とは反対側に歩き出した俺は、ハタッと気がついて足を止めた。振り返り、松岡の後ろ姿を見送りながら、一人呟く。
「五時限目って、地理じゃん。俺も小山に怒られんのかぁ」
――まぁ、それはいいにしても。
今日は窓から飛び降りようとするのだけは、絶対止めないといけないな、と再び廊下を歩き出した。
「二階から飛び降りて擦り傷作るなんて、俺はイヤだし……」
よくよくあいつは、雨に濡れるのが好きなんだな。
こちらに背を向けているが、松岡なのに間違いない。暫く見ていた俺の視線に気付いたのか、クルリと顔だけをこちらに向けた。
ガラリと窓を開け、雨音に負けないよう声を張り上げる。
「何やってんの、お前」
体ごと振り返ったその腕には、何かを抱きかかえている。小走りに走って来た松岡が、俺の目の前にその黒い物体を掲げるように差し出した。
「なんだ? 子犬?」
俺にその泥まみれの子犬を押し付けて、窓をよじ登ってくる。
「窓から出入りするのって、癖なのか? その上お前、上履きで出てたのかよ。泥だらけじゃねーか」
ビタンッと水を滴らせながら廊下に飛び降りた松岡は、濡れた前髪をかき上げながらハハッと笑った。
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「……なるかもしれないけどな、どーすんだよ、そんなびしょ濡れで。――…ああ。でもお前は二回目だから平気か」
呆れ半分でそう言ってる間にも、校舎に五時限目開始のチャイムが鳴り響く。
「なぁ、チャイム鳴ったぞ。この子犬どーすんの?」
「勿論、洗って乾かしてやんだよ」
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「ところで。お前も付き合ってくれんだよなぁ?」
仕方なく「そうだな」と答えた俺に、松岡は満足げに頷いた。
「じゃあ、保健室行ってバスタオル借りてきてくれ」
「オッケ」
松岡とは反対側に歩き出した俺は、ハタッと気がついて足を止めた。振り返り、松岡の後ろ姿を見送りながら、一人呟く。
「五時限目って、地理じゃん。俺も小山に怒られんのかぁ」
――まぁ、それはいいにしても。
今日は窓から飛び降りようとするのだけは、絶対止めないといけないな、と再び廊下を歩き出した。
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