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黒い幻影
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それはまるで、時間が巻き戻ったようで……。なんだか懐かしくて。俺は、新田へと手を伸ばしかけていた。
『俺、お前がいなくなって、結構寂しかったんだぜ』
と。
しかし。それをかわすように新田がフイと顔を背ける。彼は目の端で松岡を捉えると、そのまま静かに瞼を閉じた。
「僕には教えてくれなかった事を彼が知ってるなんて口惜しいから、報酬は支払わないよ」
冗談半分の口調だったが、その台詞は俺の胸にチクリとした痛みを走らせた。
『それだけ特別な友達だったのかもよ、お前はさ』
不意に、松岡の言葉が蘇る。
「あ、あれは! お前が訊かなかったからっ……!」
慌てて言いさした俺に、新田は一瞬驚いた表情を見せてから「じゃ、訊けばよかったな」と微笑んだ。
「新田はさ、待ってたんだよ。お前から話してくれるのをな。だから言ったろ? 俺の方が素直だって。俺なら、訊きたい事は殴ってでも訊き出すからな」
「……それくらいで、殴られるなんてご免だ」
コーヒーを口に運んだ松岡が、俺の返事にヒョイと片眉を上げる。
「じゃあ。喫茶店らしく、コーヒー代だけ払わせてもらうよ」
松岡にコーヒー代を手渡しドアに向かった新田は、「訊かなくていいのか?」という松岡の言葉に足を止めた。
「……どうもごちそう様。今度は昭弘も連れて来るよ」
ドアの前で振り返り微笑んだ新田に、松岡は「そうか」と呟いてヒラヒラと手を振った。
「いつでも来てくれ。うちの自慢のコーヒーを飲みにな」
「じゃあね、山下。開店前に、すみませんでした。失礼します」
ペコリと頭を下げて出て行った新田に、肩越しに振り返った依羅さんがボソリと呟いた。
「真面目な子だね」
「ああ、なんせ弁護士の息子らしいから。なあ? 山下。――って、何変な顔してんだよ?」
俺に顔を向けた松岡が、怪訝そうに眉を寄せる。
「なんだお前? なんか拗ねてんのか?」
「だって、訳解んねぇから。さっきの手紙には、何が書いてあったワケ?」
ムッと顔を顰めた俺は、松岡に真っ直ぐ向き直った。その拍子に、子犬が膝から落ちそうになる。松岡はその子犬を抱き上げると、床へとそっと降ろした。
「まんま、イエローカードさ。今回の真相が書いてある。端的に言うと『脅し』だな。『全てを知っているぞ』っていう。……それにしても、全然鳴かねぇなぁ、コイツ」
『俺、お前がいなくなって、結構寂しかったんだぜ』
と。
しかし。それをかわすように新田がフイと顔を背ける。彼は目の端で松岡を捉えると、そのまま静かに瞼を閉じた。
「僕には教えてくれなかった事を彼が知ってるなんて口惜しいから、報酬は支払わないよ」
冗談半分の口調だったが、その台詞は俺の胸にチクリとした痛みを走らせた。
『それだけ特別な友達だったのかもよ、お前はさ』
不意に、松岡の言葉が蘇る。
「あ、あれは! お前が訊かなかったからっ……!」
慌てて言いさした俺に、新田は一瞬驚いた表情を見せてから「じゃ、訊けばよかったな」と微笑んだ。
「新田はさ、待ってたんだよ。お前から話してくれるのをな。だから言ったろ? 俺の方が素直だって。俺なら、訊きたい事は殴ってでも訊き出すからな」
「……それくらいで、殴られるなんてご免だ」
コーヒーを口に運んだ松岡が、俺の返事にヒョイと片眉を上げる。
「じゃあ。喫茶店らしく、コーヒー代だけ払わせてもらうよ」
松岡にコーヒー代を手渡しドアに向かった新田は、「訊かなくていいのか?」という松岡の言葉に足を止めた。
「……どうもごちそう様。今度は昭弘も連れて来るよ」
ドアの前で振り返り微笑んだ新田に、松岡は「そうか」と呟いてヒラヒラと手を振った。
「いつでも来てくれ。うちの自慢のコーヒーを飲みにな」
「じゃあね、山下。開店前に、すみませんでした。失礼します」
ペコリと頭を下げて出て行った新田に、肩越しに振り返った依羅さんがボソリと呟いた。
「真面目な子だね」
「ああ、なんせ弁護士の息子らしいから。なあ? 山下。――って、何変な顔してんだよ?」
俺に顔を向けた松岡が、怪訝そうに眉を寄せる。
「なんだお前? なんか拗ねてんのか?」
「だって、訳解んねぇから。さっきの手紙には、何が書いてあったワケ?」
ムッと顔を顰めた俺は、松岡に真っ直ぐ向き直った。その拍子に、子犬が膝から落ちそうになる。松岡はその子犬を抱き上げると、床へとそっと降ろした。
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