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呪いの鎧武者
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うろたえたように、佐藤が依羅さんの顔を見上げる。その横で、依羅さんの態度に綾香が驚きに目を瞠っていた。バッと自分の兄を見上げた彼女の視線を、友也さんは目を伏せたままで完全に無視していた。
「私、昨日の塾帰り、丁度学園の塀に沿って正門の方から裏門の方角に帰ってるんですけど、凄い雨で、雷とかも鳴ってたんです。それで裏門の手前辺りで真っ暗だった校舎の窓に人影があったような気がして、その窓を見上げたんです。丁度その時雷が鳴って、周りが一瞬明るくなりました。――そしたら、その窓の所に鎧が……あの美術室の絵そっくりの鎧武者が立っていて。私、怖くなって、夢中で走って帰ったんです」
チロリと俺達を見回した彼女は、自分の言った事を後悔している様子で小さく嘆息した。
俺の顔にはさぞや疑いの色が出ていた事と思う。しかし意外な事に、隣にいる松岡は真剣な眼差しで彼女を見つめていた。不意に下げたその視線の先は、彼女の震える指に注がれている。
「それはまた……酷く怖い思いをされましたね。それで、私共は何をして差し上げればよろしいのでしょうか?」
「あの、その鎧武者を見た時、言葉に出来ない程の恐怖を感じたんです。馬鹿馬鹿しいとは思いますが、あの噂通りだとしたら、私死んでしまうのかと思って。あれは決して見間違いではありませんし、なんであんな所に鎧武者が立っていたのかも不思議で。出来れば、あの鎧武者が本物かどうか、調べてもらいたいんです。兎に角私、怖くって。今でも自分の見たモノが信じられないくらいです」
「――鎧武者を見た人は死ぬんですか……。それは物騒な『七不思議』ですね」
同情したような声を出して、依羅さんはチラリと松岡に目配せした。それに頷いた松岡が、彼女の方へと体の向きを変える。左手でそっと彼女の手を取り、胸に右手をあてると、身を屈めてお辞儀をした。
「迷える子羊。このご依頼、確かにお引き受け致します。全力を尽くしますので、どうぞご安心下さい。ところで、調査を開始するにあたり、幾つかお伺いしたい事があるのですが――。その鎧武者が見えたのは、美術室の窓ですか?」
椅子に座り直しながら、松岡が訊く。
「いいえ。廊下の窓です。三階の、えっとあれは中央階段の横の」
「私、昨日の塾帰り、丁度学園の塀に沿って正門の方から裏門の方角に帰ってるんですけど、凄い雨で、雷とかも鳴ってたんです。それで裏門の手前辺りで真っ暗だった校舎の窓に人影があったような気がして、その窓を見上げたんです。丁度その時雷が鳴って、周りが一瞬明るくなりました。――そしたら、その窓の所に鎧が……あの美術室の絵そっくりの鎧武者が立っていて。私、怖くなって、夢中で走って帰ったんです」
チロリと俺達を見回した彼女は、自分の言った事を後悔している様子で小さく嘆息した。
俺の顔にはさぞや疑いの色が出ていた事と思う。しかし意外な事に、隣にいる松岡は真剣な眼差しで彼女を見つめていた。不意に下げたその視線の先は、彼女の震える指に注がれている。
「それはまた……酷く怖い思いをされましたね。それで、私共は何をして差し上げればよろしいのでしょうか?」
「あの、その鎧武者を見た時、言葉に出来ない程の恐怖を感じたんです。馬鹿馬鹿しいとは思いますが、あの噂通りだとしたら、私死んでしまうのかと思って。あれは決して見間違いではありませんし、なんであんな所に鎧武者が立っていたのかも不思議で。出来れば、あの鎧武者が本物かどうか、調べてもらいたいんです。兎に角私、怖くって。今でも自分の見たモノが信じられないくらいです」
「――鎧武者を見た人は死ぬんですか……。それは物騒な『七不思議』ですね」
同情したような声を出して、依羅さんはチラリと松岡に目配せした。それに頷いた松岡が、彼女の方へと体の向きを変える。左手でそっと彼女の手を取り、胸に右手をあてると、身を屈めてお辞儀をした。
「迷える子羊。このご依頼、確かにお引き受け致します。全力を尽くしますので、どうぞご安心下さい。ところで、調査を開始するにあたり、幾つかお伺いしたい事があるのですが――。その鎧武者が見えたのは、美術室の窓ですか?」
椅子に座り直しながら、松岡が訊く。
「いいえ。廊下の窓です。三階の、えっとあれは中央階段の横の」
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