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緋い記憶

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 微かに後ろを窺い見た彬は、何度目かになる角を曲がった。案の定同じ角を曲がって来た人物に、勢いよく振り返る。

「テメェーはストーカーかぁ! ケーサツ呼ぶぞ!」

 秀行と別れた辺りから、その気配は続いていた。何度も何度も「偶然同じ道筋なんだ」と自分に言い聞かせ、それを証明しようと目についた角は全て曲がった。

 しかしその結果、明らかに自分を尾行けていると判明した男をグッと睨みつける。

「俺をつける理由があんなら今すぐ言え! それが出来ねぇなら、背中向けてどっか行け! 両方、三秒以内だッ」

 目の前の男を指差し叫んだ彬は、その手に拳を握った。

 このまま三秒以上、無言で無表情なまま突っ立っててみやがれ、殴ってやる。

 ――一、二、三ッ!

 少々早いカウントを心の中で唱えた彬は、「よしっ!」と足を一歩踏み出した。

 彬の脳細胞は、何度も俊介を思い出させ、尚且つすぐに記憶の中から抹消したいと思っている人物が目の前にいるというだけで、殴るには充分な理由と判断した。

「話が――あるんだ」

「ぁ……ああ?」
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