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緋い記憶

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「ちょっと待て。お前じゃないって、じゃ、誰なんだ?」

 唇に指先をあて暫く考え込んでいた隆哉が、ポンと手を打った。

「やっぱり一緒に帰ろう。それしかない」

 それだけ言って、歩き出す。

「待てよ! まだ一緒に行くなんて言ってねぇぞ!」

 彬の叫び声にピタリと足を止めて振り返った隆哉は、虚ろな瞳で彬を見つめた。

「納得したいならついて来て。別にいいなら構わない。今すぐ決めてね。両方、三秒以内」

 ――結構、根に持つタイプじゃねぇかよ。

 返事を待たず歩き出した隆哉の背中に、彬は中指を突き立てた。

「上等! って訳でヒデ、俺行くわ。ワリィ、今日は一人で帰って」

 片手を振って歩き出した彬に、秀行が心配そうに声をかける。

「大丈夫か? 俺も一緒に行こうか?」

「いんや、心配ご無用」

 ニンマリと笑ってみせると、腰に手をあてた秀行が溜め息混じりに告げる。

「悪いけど、俺が心配してるのは相沢の方だ。さっきのお前を見てると心配だよ、問答無用で殴るんじゃないかって」

 それを聞いて振り返った隆哉が、後ろ向きで足は進めたまま掌を突き出した。
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