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【転移74日目】 所持金28兆4139億1130万ウェン 「ステータス欄がバグりそうで怖い。」
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いつもの朝のリハビリ。
普段冷静なマーティンやクュ医師が興奮気味に笑顔を向けてくる。
「コリンズ社長! やりましたね!」
「ええ! ついにここまで来ました!」
『??』
「脚、ここまで大きな反応は初めてです!」
「これは回復の兆しですよー!」
『あ、はい。 いえ、どうも。』
何だ?
確かに今、脚がビクンと少し跳ねた。
ん?
これが回復の兆候なのか?
周りを見渡すと、ヒルダもコレットも満足気に微笑んでいる。
??
正直、実感がない。
何せ感覚が一切無いのだから。
し、しかし、周囲がこれだけ喜んでいる以上、俺も一応喜んでる素振りを見せるべきなのだろうか?
『いやあ!
クュ先生もマーティンさんも本当にありがとうございます!
まさかここまで順調に回復するなんて思ってもいませんでした!
お2人には感謝しかありません!
私一人では、とてもではないがリハビリを続けるなんて不可能でした!
お2人に出逢えた事が私の最大の幸運です!』
…こ、これでいいのだろうか?
一応、殊勝な発言をしてみたつもりなのだが。
「いやあ! コリンズ社長にそこまで仰って頂けるなんて!」
「これからも完治に向けて粉骨砕身致します!」
…ああ、今の発言は的外れでは無かったようだ。
医者の心を繋ぎ止めておけば、例え脚が治らなくても他の傷病に親身な対応をして貰えるだろう。
==========================
さっきのは微笑ましい方の茶番。
次は笑えない茶番の番である。
「いやいやいや!!!
初めまして!!!
お目に掛かれて光栄です!
コリンズ大使閣下!!!」
…俺は、愕然とする。
フェリペ上級司祭。
俺を異世界に召喚して、その場で追放して、おまけにポーション販売義務を押し付けてきた男!!
まさしく仇敵である。
ど、どうしてオマエは満面の笑みで握手を求めて来れるんだ?
いや、思わず手を握り返しちゃったじゃないか。
どうせなら握力の無い方の手を出せば良かったよ…
「いやあ、大使閣下!!
御勇名はお聞きしておりますぞ!
御富裕のみならず、御武勇!
素晴らしい!
ドラゴン討伐! 脚を失いながらも戦場で大奮戦!」
…まだ失ってないから。 リハビリ中だよ、バカヤロー。
『ど、ドラゴン征伐?』
「うふふふー。
流石は連邦の大使様です。
武人としては、ドラゴン如きを征伐した所で自慢にならぬ
と言う訳ですな!
いやあ、感服です!」
『あ、いえ。』
「おおおっと!
自己紹介が遅れてしまいましたね!
改めましてはじめまして!
私の名はフェリペ・フェルナンデス!
こう見えて神聖教団の上級司祭を務めております!」
『こ、これは御丁寧に。
リン・コリンズです。』
「おお、王国風の姓ですな!
実は私、現在王国に赴任中でして。
コリンズなどという王国風の姓には非常に親近感を持てるんですよー!
いやー、初めてお会いしたとは思えませんなーーー!
わっはっはっはっはっは!!」
『あ、いえ。 はい、いえ。』
「聞きましたよー。
アントニオの言い掛かりでファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒の称号を剥奪されてしまったとか!
大富豪のセレブ様に対して何たる暴挙!!!」
『あ、いえ、まあ。』
「なーんたる非道!!
聖職者権限の濫用!!
許せませんな!!」
『あ、まあ。
司教様が剥奪と言ったら剥奪なんじゃないですかね?』
「おおおおおおおおお!!!!!
コリンズ閣下!!!
何と潔い進退!!!
何と謙虚な姿勢!!!
まさしく!! 貴方こそ!!! 従順なる羊の模範です!!!」
『あ、いえ。 恐縮です。』
「だが、安心して下さいっ!!
不肖!! このフェリペ・フェルナンデスめが!
アントニオの横暴によって貶められた閣下の名誉を挽回し!
ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒の称号を見事奪還して御覧に入れます!!!」
『あ、いえ。
本当に、教団の御判断に異議を唱えるつもりもありませんので。』
「んっあああああッ!!
コリンズ閣下は何と敬虔で何と慎み深いのでしょう!!!!
感激致しました! 感動致しました! 感銘が全身を駆け巡っております!!」
『あ、いえ。』
「お任せください!
閣下、閣下はどっしりと構えて下さっているだけで構いません。
このフェリペが! 選挙資金さえもう少しあれば当選確実なフェリペが!
コリンズ閣下をお護り致します!!
どうか! どうか閣下は!
大船に乗ったつもりで今回の選挙戦を見守っていて下さい。」
『あ、はい。』
「ふふふー。
私の選挙公約!
もう見て頂けました!?
そうなんですよー。
私が司教に当選した暁には!
ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒を越える称号!!
ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒の地位を新設致します!!!」
『…ろ、ロぃ?』
「今までの免罪符はせいぜい10億ウェンが上限でしたからなー。
コリンズ閣下の様に信心深い信者様には随分御迷惑をお掛けしました!
御安心下さい!
セレブの皆様の為に!
1000億ウェン分の免罪符を用意いたしました!」
『ん? ん?』
「教団所有の豪華客船による南洋一周ツアー!!
教団所有の超高級リゾートによる楽しいカジノイベント!
教団所有の美人秘書部隊と行く名跡懺悔ツアー!!!
ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒様にはこの様な特典を付与致します!!!!
これがっ!
私っ、フェリペ・フェルナンデスの選挙公約です!!!」
『あ、いえ。』
「御安心下さい。
前倒しになりますが、閣下の為に免罪符を持参致しました。
見て下さい! ここのシリアル番号!!
《信徒番号000000000000001》!!
はい、コリンズ閣下の為に、こっそり第一号を確保しております。
全世界の如何なるセレブをも超越したスーパーセレブとしてのステイタスですよーー!!!」
『いや、ホントに
その様な重要なものを私のような若造などが…』
「んっんーーーーーーーーー!
そこなんですよーーー。
私が閣下を敬愛するのは、その謙虚で控えめな姿勢なんですよーーーーー!!
閣下こそが世界の中心!! 天下の模範!!!
神が人類にもたらした寵愛そのもの!!!!」
『いえ、まあ。
必要ないとか、神への冒涜とか、追放が妥当とか言われた身ですし…』
「ど、どこのどいつですか!!!!!!
閣下に対してそんな無礼な口を効いた馬鹿者は!!!
許せません!! 許せませんなーー!!!
そんな愚か者には必ずや神罰が下るでしょう!!!
いえ!! このフェリペめが!!
閣下を侮辱した慮外者に神に代わって正義の鉄槌を叩きつけてやりますよ!!」
『あ、はあ。』
結局、この男は1人でペラペラ喋っていた。
どうやら俺の事は覚えてくれていないらしい。
いや、俺がオマエに追放されてからまだ2か月ちょっとだぞ?
…というか相手のプロフィールを精査せずに訪問して来たのか?
その後、1000億ウェンの免罪符を買わされそうになったのでカネだけ渡して追い出した。
そんな長い名前の称号を受けとってしまったら、ステータス欄がバグりそうで怖い。
==========================
【所持金】
21兆3140億1140ウェン
↓
21兆3139億1140ウェン
※フェリペ・フェルナンデス選挙事務所に1億ウェンを寄付
==========================
『ヒルダ、貴方の指示通りにしたけど。
あれで良かったの?』
「大事の前の小事と申します。
今は余計なトラブルを起こすべきではありません。」
『わかった。
ヒルダが言うならそうなんだろう。
選挙、かなり近いの?』
「全ての候補がソドムタウン入りしたと聞いてます。
予備選挙で落選した候補者は先に帰還しておりますから
総本山に全教団幹部が揃ったのは5年ぶりだとかで。
あちらの方では盛り上がってます。」
『へえ、それで王国担当のあの男が来たんだ。』
「キーン社長から既に連絡を受けてるかも知れませんが
財界から寄付を出さなければならないようです。」
『あ、やっぱりそうなんだ。』
「会社の規模に応じて割り当てがあるそうなのですが
恐らく(株)エナドリは1億ウェンの割り当てになるかと。
予備費からだしておきますね。」
『ああ、わかった。
色々任せてすまない。』
「明後日に投票前夜慰労パーティーが催されます。
財界の子女が給仕の真似事をさせられるそうなので。
コレットと行ってまいります。」
『そ、そんな事までさせられるのか?』
「ええ、軍部は軍楽隊を供出させられるようですし。
教団も自由都市の全面的支持があるように見せたいのでしょう。」
『お、俺も行った方がいい?』
「リンは破門の身でしょう?
馬車の中でお待ち下さい。
用事が終わり次第声を掛けますので。」
『何から何まですまんな。』
「幾らリンが英傑であっても何から何まで解決するのは不可能です。
私も可能な限りはサポートしますよ。」
『すまん。』
「では教団の方は私に任せて頂いて宜しいのですね?
無難に収めておきますけど。」
『そうだな。
教団の事は全てヒルダに任せる。
あ、それと色々ヒルダの枠から出費させて済まないな。
予備費を補充しておくよ。
2兆だけそちらで保管しておいて。』
「…夕食の後にでも運び入れます。」
女はきっちりしてるね。
==========================
午後から軍隊の偉い人がまとめて来訪。
向こうは気を遣ってそうしているつもりなのだが、ガタイのいい軍人に囲まれる圧迫感は正直辛い。
オブラートに包んではいたが、話題は《首長国王室が倒れたら戦後処理をどうするか?》だった。
かなりヤバいらしい。
未確認情報だが、どうやら王族クラスがデモに巻き込まれて負傷したか死んだかしたらしい。
相手が同盟国なので、あまり強引な諜報も出来ない。
が、それでも。
首長国の民意が王室から離れ始めているのは確実だ。
大胆な地域だと《ミュラー閣下御統治予定地》のポスターが掲示されてしまっているらしい。
ミュラーに比べれば、現在の首長国王陛下は別格の仁君である。
常に国際政治に目を配り、積極的に技術開発を行い、広くインフラを整備し、戦争が起れば各王族と共に陣頭に立ち、何より人民を深く愛している。
それでも、税率の低さには勝てない。
結局人民が求めているのは、奪われた税金の使い道に納得することではなく、そもそも税金を奪われないことである。
故にミュラーこそが世界最強の名君である。
事実、この異世界で統治者を自由に選べる選挙が行われれば、ミュラーがダントツでトップ当選を果たすであろう。
その証左に、首長国はミュラーの統治を求めて自壊を始めた。
あの老将はたまに首長国との国境際でこれ見よがしに豊穣祭を開いているらしい。
…むごいことをする。
==========================
別れ際に参謀総長と雑談。
聞けば彼は士官学校時代も含めて全て首席で入学卒業してきたという。
まさしくスーパーエリートである。
『こんなに数日で内戦が起こるなんて信じられません。』
「コリンズ社長、それは違います。
例えここ数日の蜂起だとしても
やはり首長国内で不満はずっと燻っていたのです。
それこそ何十年か、何百年か。」
『あの…
自由都市は大丈夫なんでしょうか?』
「??
我が自由都市では平等な共和政治が行われておりますよ?
全ての政策は全人民の同意によって執り行われております。
そもそも不満が生じる余地がありません。」
え?
「自由都市では全ての職業が平等に門戸を開いており。
社会的経済的格差はただ本人の努力の差のみによって生じております。
我が国では全てが公正に運営されておりますから。」
え?
…公人がそんな馬鹿な発言をして許されるものなのか?
目指す分には幾らでも目指せばいい。
でも口が裂けても《到達した》などと言ってはいけない。
案外、首長国もこういう脇の甘さがあったから、こんな事態に陥っているんじゃないだろうか。
…やっぱりミュラーは賢いな。
そりゃあ誰もあの爺さんに勝てない訳だわ。
《7兆1000億ウェンの配当が支払われました。》
==========================
【所持金】
21兆3139億1140ウェン
↓
28兆4139億1140ウェン
↓
26兆4139億1140ウェン
↓
28兆4139億1130ウェン
※7兆1000億ウェンの配当を受け取り。
※ヒルダ・コリンズ管轄の予備枠に2兆ウェンを補充
※ポール・ポールソンのアポなし訪問、多忙の為10万ウェンの小遣い支給で退出させる
【ポールソンハーレム】
レニーちゃん (ポールズバー店員)
メアリちゃん (ポールズバー店員) ← 家出中
エミリーちゃん (営業部長)
ナナリーさん (近所のシンママ)
ビッキーちゃん (戦災孤児) ← in
ノーラちゃん (フリーター) ← in
==========================
夜にミュラーからの伝令が到着。
「首長国人民から、早く進駐して欲しいとの請願書が大量に送られてきている(笑)。
正直困ってる(笑)。
不本意ながら解放軍を進軍させても良いだろうか(笑)」
文面からドヤ顔が薫っていたので、急遽軍部に緊急通報。
偉い人が慌てて駆け付けて来て、ミュラーの制止を嘆願する。
俺もミュラーに急使を送り進軍に反対の旨を伝える。
《ミュラー卿が国際社会の同意なく国境を越えられた場合
今後如何なる形での資金援助も行わない!》
とも書き添える。
自由都市側も緊急特使を派遣する事になったので、頼まれて添え状を書く。
絶対、あの爺さん理由を付けて国境を跨ぐな…
『参謀総長!
ヤバいんですよね!?』
「ヤバいです!!!」
『どれくらいヤバいんですか!?』
「防波て… 首長国が完全滅亡します!!」
俺も海沿いに住んでた時期あるからね。
防波堤が無くなっちゃた時のヤバさはすっごくわかるよね。
普段冷静なマーティンやクュ医師が興奮気味に笑顔を向けてくる。
「コリンズ社長! やりましたね!」
「ええ! ついにここまで来ました!」
『??』
「脚、ここまで大きな反応は初めてです!」
「これは回復の兆しですよー!」
『あ、はい。 いえ、どうも。』
何だ?
確かに今、脚がビクンと少し跳ねた。
ん?
これが回復の兆候なのか?
周りを見渡すと、ヒルダもコレットも満足気に微笑んでいる。
??
正直、実感がない。
何せ感覚が一切無いのだから。
し、しかし、周囲がこれだけ喜んでいる以上、俺も一応喜んでる素振りを見せるべきなのだろうか?
『いやあ!
クュ先生もマーティンさんも本当にありがとうございます!
まさかここまで順調に回復するなんて思ってもいませんでした!
お2人には感謝しかありません!
私一人では、とてもではないがリハビリを続けるなんて不可能でした!
お2人に出逢えた事が私の最大の幸運です!』
…こ、これでいいのだろうか?
一応、殊勝な発言をしてみたつもりなのだが。
「いやあ! コリンズ社長にそこまで仰って頂けるなんて!」
「これからも完治に向けて粉骨砕身致します!」
…ああ、今の発言は的外れでは無かったようだ。
医者の心を繋ぎ止めておけば、例え脚が治らなくても他の傷病に親身な対応をして貰えるだろう。
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さっきのは微笑ましい方の茶番。
次は笑えない茶番の番である。
「いやいやいや!!!
初めまして!!!
お目に掛かれて光栄です!
コリンズ大使閣下!!!」
…俺は、愕然とする。
フェリペ上級司祭。
俺を異世界に召喚して、その場で追放して、おまけにポーション販売義務を押し付けてきた男!!
まさしく仇敵である。
ど、どうしてオマエは満面の笑みで握手を求めて来れるんだ?
いや、思わず手を握り返しちゃったじゃないか。
どうせなら握力の無い方の手を出せば良かったよ…
「いやあ、大使閣下!!
御勇名はお聞きしておりますぞ!
御富裕のみならず、御武勇!
素晴らしい!
ドラゴン討伐! 脚を失いながらも戦場で大奮戦!」
…まだ失ってないから。 リハビリ中だよ、バカヤロー。
『ど、ドラゴン征伐?』
「うふふふー。
流石は連邦の大使様です。
武人としては、ドラゴン如きを征伐した所で自慢にならぬ
と言う訳ですな!
いやあ、感服です!」
『あ、いえ。』
「おおおっと!
自己紹介が遅れてしまいましたね!
改めましてはじめまして!
私の名はフェリペ・フェルナンデス!
こう見えて神聖教団の上級司祭を務めております!」
『こ、これは御丁寧に。
リン・コリンズです。』
「おお、王国風の姓ですな!
実は私、現在王国に赴任中でして。
コリンズなどという王国風の姓には非常に親近感を持てるんですよー!
いやー、初めてお会いしたとは思えませんなーーー!
わっはっはっはっはっは!!」
『あ、いえ。 はい、いえ。』
「聞きましたよー。
アントニオの言い掛かりでファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒の称号を剥奪されてしまったとか!
大富豪のセレブ様に対して何たる暴挙!!!」
『あ、いえ、まあ。』
「なーんたる非道!!
聖職者権限の濫用!!
許せませんな!!」
『あ、まあ。
司教様が剥奪と言ったら剥奪なんじゃないですかね?』
「おおおおおおおおお!!!!!
コリンズ閣下!!!
何と潔い進退!!!
何と謙虚な姿勢!!!
まさしく!! 貴方こそ!!! 従順なる羊の模範です!!!」
『あ、いえ。 恐縮です。』
「だが、安心して下さいっ!!
不肖!! このフェリペ・フェルナンデスめが!
アントニオの横暴によって貶められた閣下の名誉を挽回し!
ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒の称号を見事奪還して御覧に入れます!!!」
『あ、いえ。
本当に、教団の御判断に異議を唱えるつもりもありませんので。』
「んっあああああッ!!
コリンズ閣下は何と敬虔で何と慎み深いのでしょう!!!!
感激致しました! 感動致しました! 感銘が全身を駆け巡っております!!」
『あ、いえ。』
「お任せください!
閣下、閣下はどっしりと構えて下さっているだけで構いません。
このフェリペが! 選挙資金さえもう少しあれば当選確実なフェリペが!
コリンズ閣下をお護り致します!!
どうか! どうか閣下は!
大船に乗ったつもりで今回の選挙戦を見守っていて下さい。」
『あ、はい。』
「ふふふー。
私の選挙公約!
もう見て頂けました!?
そうなんですよー。
私が司教に当選した暁には!
ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒を越える称号!!
ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒の地位を新設致します!!!」
『…ろ、ロぃ?』
「今までの免罪符はせいぜい10億ウェンが上限でしたからなー。
コリンズ閣下の様に信心深い信者様には随分御迷惑をお掛けしました!
御安心下さい!
セレブの皆様の為に!
1000億ウェン分の免罪符を用意いたしました!」
『ん? ん?』
「教団所有の豪華客船による南洋一周ツアー!!
教団所有の超高級リゾートによる楽しいカジノイベント!
教団所有の美人秘書部隊と行く名跡懺悔ツアー!!!
ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒様にはこの様な特典を付与致します!!!!
これがっ!
私っ、フェリペ・フェルナンデスの選挙公約です!!!」
『あ、いえ。』
「御安心下さい。
前倒しになりますが、閣下の為に免罪符を持参致しました。
見て下さい! ここのシリアル番号!!
《信徒番号000000000000001》!!
はい、コリンズ閣下の為に、こっそり第一号を確保しております。
全世界の如何なるセレブをも超越したスーパーセレブとしてのステイタスですよーー!!!」
『いや、ホントに
その様な重要なものを私のような若造などが…』
「んっんーーーーーーーーー!
そこなんですよーーー。
私が閣下を敬愛するのは、その謙虚で控えめな姿勢なんですよーーーーー!!
閣下こそが世界の中心!! 天下の模範!!!
神が人類にもたらした寵愛そのもの!!!!」
『いえ、まあ。
必要ないとか、神への冒涜とか、追放が妥当とか言われた身ですし…』
「ど、どこのどいつですか!!!!!!
閣下に対してそんな無礼な口を効いた馬鹿者は!!!
許せません!! 許せませんなーー!!!
そんな愚か者には必ずや神罰が下るでしょう!!!
いえ!! このフェリペめが!!
閣下を侮辱した慮外者に神に代わって正義の鉄槌を叩きつけてやりますよ!!」
『あ、はあ。』
結局、この男は1人でペラペラ喋っていた。
どうやら俺の事は覚えてくれていないらしい。
いや、俺がオマエに追放されてからまだ2か月ちょっとだぞ?
…というか相手のプロフィールを精査せずに訪問して来たのか?
その後、1000億ウェンの免罪符を買わされそうになったのでカネだけ渡して追い出した。
そんな長い名前の称号を受けとってしまったら、ステータス欄がバグりそうで怖い。
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【所持金】
21兆3140億1140ウェン
↓
21兆3139億1140ウェン
※フェリペ・フェルナンデス選挙事務所に1億ウェンを寄付
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『ヒルダ、貴方の指示通りにしたけど。
あれで良かったの?』
「大事の前の小事と申します。
今は余計なトラブルを起こすべきではありません。」
『わかった。
ヒルダが言うならそうなんだろう。
選挙、かなり近いの?』
「全ての候補がソドムタウン入りしたと聞いてます。
予備選挙で落選した候補者は先に帰還しておりますから
総本山に全教団幹部が揃ったのは5年ぶりだとかで。
あちらの方では盛り上がってます。」
『へえ、それで王国担当のあの男が来たんだ。』
「キーン社長から既に連絡を受けてるかも知れませんが
財界から寄付を出さなければならないようです。」
『あ、やっぱりそうなんだ。』
「会社の規模に応じて割り当てがあるそうなのですが
恐らく(株)エナドリは1億ウェンの割り当てになるかと。
予備費からだしておきますね。」
『ああ、わかった。
色々任せてすまない。』
「明後日に投票前夜慰労パーティーが催されます。
財界の子女が給仕の真似事をさせられるそうなので。
コレットと行ってまいります。」
『そ、そんな事までさせられるのか?』
「ええ、軍部は軍楽隊を供出させられるようですし。
教団も自由都市の全面的支持があるように見せたいのでしょう。」
『お、俺も行った方がいい?』
「リンは破門の身でしょう?
馬車の中でお待ち下さい。
用事が終わり次第声を掛けますので。」
『何から何まですまんな。』
「幾らリンが英傑であっても何から何まで解決するのは不可能です。
私も可能な限りはサポートしますよ。」
『すまん。』
「では教団の方は私に任せて頂いて宜しいのですね?
無難に収めておきますけど。」
『そうだな。
教団の事は全てヒルダに任せる。
あ、それと色々ヒルダの枠から出費させて済まないな。
予備費を補充しておくよ。
2兆だけそちらで保管しておいて。』
「…夕食の後にでも運び入れます。」
女はきっちりしてるね。
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午後から軍隊の偉い人がまとめて来訪。
向こうは気を遣ってそうしているつもりなのだが、ガタイのいい軍人に囲まれる圧迫感は正直辛い。
オブラートに包んではいたが、話題は《首長国王室が倒れたら戦後処理をどうするか?》だった。
かなりヤバいらしい。
未確認情報だが、どうやら王族クラスがデモに巻き込まれて負傷したか死んだかしたらしい。
相手が同盟国なので、あまり強引な諜報も出来ない。
が、それでも。
首長国の民意が王室から離れ始めているのは確実だ。
大胆な地域だと《ミュラー閣下御統治予定地》のポスターが掲示されてしまっているらしい。
ミュラーに比べれば、現在の首長国王陛下は別格の仁君である。
常に国際政治に目を配り、積極的に技術開発を行い、広くインフラを整備し、戦争が起れば各王族と共に陣頭に立ち、何より人民を深く愛している。
それでも、税率の低さには勝てない。
結局人民が求めているのは、奪われた税金の使い道に納得することではなく、そもそも税金を奪われないことである。
故にミュラーこそが世界最強の名君である。
事実、この異世界で統治者を自由に選べる選挙が行われれば、ミュラーがダントツでトップ当選を果たすであろう。
その証左に、首長国はミュラーの統治を求めて自壊を始めた。
あの老将はたまに首長国との国境際でこれ見よがしに豊穣祭を開いているらしい。
…むごいことをする。
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別れ際に参謀総長と雑談。
聞けば彼は士官学校時代も含めて全て首席で入学卒業してきたという。
まさしくスーパーエリートである。
『こんなに数日で内戦が起こるなんて信じられません。』
「コリンズ社長、それは違います。
例えここ数日の蜂起だとしても
やはり首長国内で不満はずっと燻っていたのです。
それこそ何十年か、何百年か。」
『あの…
自由都市は大丈夫なんでしょうか?』
「??
我が自由都市では平等な共和政治が行われておりますよ?
全ての政策は全人民の同意によって執り行われております。
そもそも不満が生じる余地がありません。」
え?
「自由都市では全ての職業が平等に門戸を開いており。
社会的経済的格差はただ本人の努力の差のみによって生じております。
我が国では全てが公正に運営されておりますから。」
え?
…公人がそんな馬鹿な発言をして許されるものなのか?
目指す分には幾らでも目指せばいい。
でも口が裂けても《到達した》などと言ってはいけない。
案外、首長国もこういう脇の甘さがあったから、こんな事態に陥っているんじゃないだろうか。
…やっぱりミュラーは賢いな。
そりゃあ誰もあの爺さんに勝てない訳だわ。
《7兆1000億ウェンの配当が支払われました。》
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【所持金】
21兆3139億1140ウェン
↓
28兆4139億1140ウェン
↓
26兆4139億1140ウェン
↓
28兆4139億1130ウェン
※7兆1000億ウェンの配当を受け取り。
※ヒルダ・コリンズ管轄の予備枠に2兆ウェンを補充
※ポール・ポールソンのアポなし訪問、多忙の為10万ウェンの小遣い支給で退出させる
【ポールソンハーレム】
レニーちゃん (ポールズバー店員)
メアリちゃん (ポールズバー店員) ← 家出中
エミリーちゃん (営業部長)
ナナリーさん (近所のシンママ)
ビッキーちゃん (戦災孤児) ← in
ノーラちゃん (フリーター) ← in
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夜にミュラーからの伝令が到着。
「首長国人民から、早く進駐して欲しいとの請願書が大量に送られてきている(笑)。
正直困ってる(笑)。
不本意ながら解放軍を進軍させても良いだろうか(笑)」
文面からドヤ顔が薫っていたので、急遽軍部に緊急通報。
偉い人が慌てて駆け付けて来て、ミュラーの制止を嘆願する。
俺もミュラーに急使を送り進軍に反対の旨を伝える。
《ミュラー卿が国際社会の同意なく国境を越えられた場合
今後如何なる形での資金援助も行わない!》
とも書き添える。
自由都市側も緊急特使を派遣する事になったので、頼まれて添え状を書く。
絶対、あの爺さん理由を付けて国境を跨ぐな…
『参謀総長!
ヤバいんですよね!?』
「ヤバいです!!!」
『どれくらいヤバいんですか!?』
「防波て… 首長国が完全滅亡します!!」
俺も海沿いに住んでた時期あるからね。
防波堤が無くなっちゃた時のヤバさはすっごくわかるよね。
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【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
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勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
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上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
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