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第七部 神呪
第八十一章 名無しの聖女たち
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ノーネームドの一人を倒したのもつかの間、次の苦難が見えてくる。
駆けつけてくる聖女の数は3。その後続も居る様だ。たった一人にここまで手こずり、更にそれが多数でやってくる。勝てる勝てないという話ではないな。いうなれば聖女という名の災害だ。ネームドとして名付けるなら『名無しの聖女たち』。ネームドクラスの実力はないものの聖女ユニット自体が破格の性能だ。
流石にこれは逃がしてくれるという状況でも動きでもないな。
「レオニス。俺の体を使ってくれ。レオで試したいことがある」
こうなればアレしかない。聖女、それも神の加護に厚い人間を屠るとなればレオの神の加護を無効化する施された武器での撃破が必要になるだろう。聖女に対して有利に戦闘が運べるはずだ。
「出来るけどお父様はどうするの? その体だけで戦うの?」
「そうだ。魔王の心臓を使う。それには完璧に俺だけでレオを掌握する必要がある。レオニスは俺の体を使って下がってくれ。最悪レオは撃破されるかもしれんが、その時は俺のインナースペースに入ってくれ。代わりにシノの残した体がある。そこに入ればレオニスという意識体は維持できるはずだ」
「え、と、言ってることは理解できるけど理解したくないのだけど。本当にそれで大丈夫なの?」
「こればかりは絶対とは言えないが、お前の意識体と俺の意識は問題ない。ただレオはここで討ち取られる可能性がある」
そこでシノが口をはさんできた。
「それで私達はどうすればいい」
「俺以外は下がってくれ。魔王の心臓を使うときに周りのノイズは消したい。最悪巻き込む可能性がある。施された剣の一撃は敵味方関わらず切り裂く恐れがある。敵が居なくなっても用心してくれ。シノ、お前とわかっていても切りかかる可能性がある」
「そこまでなら何も言うまい。勝算はあるのか?」
「五分五分と言いたいがどうだろうな。聖女の馬鹿げた神の加護さえ無効化できれば物の数ではないと思うが、その錬度がわからん。最悪足止めだな。このまま戦っても生き残れる可能性は低い。ここはレオという手札の切り時だな」
初めてレオを手に入れた時のことを思い出す。非力ではあったが人間の神の加護を完全に無効化していた。感度というアドバンテージがあれば数の利は覆せるだろう。
ーーー
私はレオの全てに目を向ける。竜翼を仕舞い、神の加護も薄く纏うだけ。竜翼は先の爆発光波でダメージを受けているのもあるけれど、今は少しでも思考の負担を減らしたい。加護の方も、奇跡の術は施されたこの肉体に効きにくいでしょう。
魔王の心臓を起動する。今や馴染の感覚強化。全ての感覚が鋭敏になって目を閉じても背後の状況がわかる。私以外は全て撤退したみたいね。ここに居るのは私一人。足元には先のノーネームドの遺体が横たわっている。
さて、と迷う間もなく名無しの聖女たちの尖峰が私に迫る。トップはグレートソード。左右にレイピアとロングソードの剣盾の二人。計三人。その後ろに離れて二人ね。後続もまだ居そう。
私は施されたサーベルの握りを確かめる。乱戦に持ち込むのに長すぎず、懐から切りつける事もできる。離れた一撃では死角に入ることが出来ないでしょう。超接近からの切断。これが最適解ね。
私目掛けて加護のシャワーが降り注ぐけれど、何の効果もない。この体は加護持ちを狩るのに適し過ぎている。
初撃。名無しの聖女たちのグレートソードが迫る。横薙ぎの一撃が来るけれど、私はそれをそっと左手で押し下げるとその上に腰かける。不安定な剣筋ね。剣戟の最中に揺らぐなんて。それでも聖女?
私は右手のサーベルで首を跳ね飛ばす。その血が噴き出す前に私はグレートソードから降りると左手の甲でその背を押す。つんのめった体からほとばしる鮮血。後ろの二人はまだそれを認識していないようね。私が最初のグレートソードを搔い潜ったように見えるのでしょう。その突き出されたロングソードを左手の指でそっと撫でると私の前進に合わせて下がっていく。そしてその剣先が盾と交わる。右手が前に出ているのに剣先が自分の盾に当たっているなんて。どんな気分なのかしら。私はそのまま前進して右手のサーベルで首を撥ねる。そして彼女の後ろへ。
レイピアはこちらに気付いたようね。切断されてもまだ首が繋がっているロングソードの体をこするように鋭い一撃が飛んでくる。左手から繰り出される神速の一撃。ロングソードの背後に回った私に反応するなんて素晴らしいわ。ただ・・・。そっとつまんだレイピアから伝わる絶望感で減点ね。前後させようとする動きに合わせて動けなくしているのだけれど、それに気づいているのに握りしめているなんて。それが死に直結するとわからないのかしら。貴女が掴んでいるのは自分の心臓よ。握りしめれば呼吸も動きも止まってしまう。私は彼女の伸びた左腕を這わせるようにサーベルを進めていく。そしてそれが首に到達したとき、私は左手で彼女のレイピアを握り、右手で彼女の首を縊り切る。まるでダンスのお相手をしているかのよう。とても可愛らしい聖女さんね。
私が手を離すと思い出したかのように血が噴き出し血煙が私の背後で吹き上がる。次の二人にはカーニバルの演出のようにも見えるでしょう。その驚いたであろう表情は見えないのだけれど、その圧倒された態度で動きを止めるのは戴けないわ。こんな間抜けな顔が貴女達の最後だなんて。もはや武器を構える事も出来ないの?
私が一回りステップを踏むと二人の血煙が吹き上がる。なんだか楽しくなってきたわね。いつまで私一人に踊らせる気なのかしら。ここに人間は居ないの? さっきから催しの人形しか見ていない。
人間は何処?
その先にハイキングをしているお人形たちが居る。武器も構えずに悪い子たちね。不真面目すぎるお人形には罰を与えないと。
加護の展開も出来ず、加護の鎧も非活性。私の一閃で10の塊になるお人形。この一筆書きが終わるまで大人しくしているなんて。本当にこれは生き物なの?
人間は何処??
こちらにも歯応えがありそうな人形が・・・聖女ってマシュマロで出来ているの?
人間は何処・・・???
何処にも居ない。私に応えられない人間なんていらない。
誰も俺には応えられない。
「俺に応えられない人間など死滅してしまえ!!!」
ようやく、
「ようやく捕まえたわよ王牙!!! あなたの心の在り処をね!!!」
ーーー
俺、レオーネは飛ぶ。レオの体で。
なぜ飛べるのかって? それは私が決めたから。そこに法則も何もいらない。この世界がそう変わった。
最高の気分ね。俺はどうして今までこれを使わなかったのかしら? 私なら躊躇なく使う。宝の持ち腐れね。
そして俺私(おれし)の前に巨大な塔が現れる。コロッセオを縦に伸ばしたような平らで広大な塔だ。
これが人類を隔てる結界。全てで八つ。破壊するのはこれで二つ目。
世界は全て平等に苦しまなければならないの。
誰一人としてそこから漏れてはいけないの。
今一度世界を均等に。
・・・私だけが神のオモチャでいるなんて許せないのよ!!!
人類を守る結界がひび割れていく。二つ壊せば綻びが出来る。もう絶対ではない。
あと少し、もう少しで、
だがそれは天から降ってきた塔によって遮られた。
ひび割れ崩れそうな結界の塔に神の塔が突き刺さる。それが支えになるかのように結界の塔の崩壊が止まった。
ーーー
「王牙さん。意識はありますか?」
この声はリブラか。目開けるとここは神の塔のボス広間か。
「レオーネは隔離しました。こことは違うこの場所に」
レオーネ? 俺は自身の姿を見るとレオではない。鬼の姿だ。
「あなたはレオーネに乗っ取られ世界の改変を使って人間の結界の塔を破壊する寸前までいきました。そこで私は現身の塔を下ろし王牙さんを強制的にここに呼びました。そしてここに来たのは王牙さんの意識とレオーネの意識、そしてオーガの体です」
つまりリブラに助けられたのか。
「下にはレオの体とレオニスさんが残っています。どういうことかわかりますか?」
俺の視線にリブラが続ける。
「聞きたいことはあるでしょうが今すぐに戻るべきです。わかりますか?」
「わかった。世話になった」
「はい。レオニスさんの魂はなんの変哲もない普通の魂です。ここに来たときはその正しい流れに戻します。安心してください」
俺の周りに加護ジェネレーターが纏わりつく。
「最後に。未だ王牙さんとレオーネの間にはインナースペースの繋がりがあります。極力インナースペースは開かないように。わかりますか?」
「理解した」
「はい。それではまた。王牙さん」
ーーー
俺が地上に戻るとこの前と同じ、相棒と出しゃばりと脇差を抱えて倒れているレオニスの姿が見える。特に襲われている様子はないが動ける状態ではなさそうだ。魔王の心臓を全開にした後に世界の改変を行ったのだ。その身に何が起こっていてもおかしくない。
俺はレオニスを抱える上げると繋げる。
マズイな。本当の問題はレオーネの消失か。これにより加護を失っている。魔素と加護のバランスが崩れている。
取り敢えずはムリエルの判断を仰ぐか。
「これは厳しいのぉ。応急処置は終わった。じゃが、レオニスを聖女へ改変するは危険すぎる。この体はもう世界の改変を使い過ぎておる。グリッチで疑似聖女にしたとき、レオニスがそのままでいられる保証がないのじゃ。汝の中に入れるわけにはいかんのかえ?」
ここはムリエルの牛車の中だ。そこにレオニスを安置して聖王都へと戻る最中。幸い人間達の追撃は無い様だ。
「今インナースペースを開けば隔離したレオーネ、つまりこの元凶を呼び込むことになる。今以上の惨状になるな」
その上レオの調整も難しい。これはパルテに頼るか。
▽
Tips設定変更の可能性
この世界の流通は基本的に加護持ちの人力が主流。馬などは加護のない人間達が使う。
一言で言えば馬車を馬で引くより、加護持ち人間が馬車を持ち上げて運んだ方が速い。
ただ、現実の世界的に人間が荷車を引く姿や、人を乗せた荷車を人が引くという表現に問題がありそうなんで後で変更するかもしれません。
今回の聖女達は自分の足で走っていますが、これが馬や馬車に変わったら世界観の設定が変更されたと考えてください。
駆けつけてくる聖女の数は3。その後続も居る様だ。たった一人にここまで手こずり、更にそれが多数でやってくる。勝てる勝てないという話ではないな。いうなれば聖女という名の災害だ。ネームドとして名付けるなら『名無しの聖女たち』。ネームドクラスの実力はないものの聖女ユニット自体が破格の性能だ。
流石にこれは逃がしてくれるという状況でも動きでもないな。
「レオニス。俺の体を使ってくれ。レオで試したいことがある」
こうなればアレしかない。聖女、それも神の加護に厚い人間を屠るとなればレオの神の加護を無効化する施された武器での撃破が必要になるだろう。聖女に対して有利に戦闘が運べるはずだ。
「出来るけどお父様はどうするの? その体だけで戦うの?」
「そうだ。魔王の心臓を使う。それには完璧に俺だけでレオを掌握する必要がある。レオニスは俺の体を使って下がってくれ。最悪レオは撃破されるかもしれんが、その時は俺のインナースペースに入ってくれ。代わりにシノの残した体がある。そこに入ればレオニスという意識体は維持できるはずだ」
「え、と、言ってることは理解できるけど理解したくないのだけど。本当にそれで大丈夫なの?」
「こればかりは絶対とは言えないが、お前の意識体と俺の意識は問題ない。ただレオはここで討ち取られる可能性がある」
そこでシノが口をはさんできた。
「それで私達はどうすればいい」
「俺以外は下がってくれ。魔王の心臓を使うときに周りのノイズは消したい。最悪巻き込む可能性がある。施された剣の一撃は敵味方関わらず切り裂く恐れがある。敵が居なくなっても用心してくれ。シノ、お前とわかっていても切りかかる可能性がある」
「そこまでなら何も言うまい。勝算はあるのか?」
「五分五分と言いたいがどうだろうな。聖女の馬鹿げた神の加護さえ無効化できれば物の数ではないと思うが、その錬度がわからん。最悪足止めだな。このまま戦っても生き残れる可能性は低い。ここはレオという手札の切り時だな」
初めてレオを手に入れた時のことを思い出す。非力ではあったが人間の神の加護を完全に無効化していた。感度というアドバンテージがあれば数の利は覆せるだろう。
ーーー
私はレオの全てに目を向ける。竜翼を仕舞い、神の加護も薄く纏うだけ。竜翼は先の爆発光波でダメージを受けているのもあるけれど、今は少しでも思考の負担を減らしたい。加護の方も、奇跡の術は施されたこの肉体に効きにくいでしょう。
魔王の心臓を起動する。今や馴染の感覚強化。全ての感覚が鋭敏になって目を閉じても背後の状況がわかる。私以外は全て撤退したみたいね。ここに居るのは私一人。足元には先のノーネームドの遺体が横たわっている。
さて、と迷う間もなく名無しの聖女たちの尖峰が私に迫る。トップはグレートソード。左右にレイピアとロングソードの剣盾の二人。計三人。その後ろに離れて二人ね。後続もまだ居そう。
私は施されたサーベルの握りを確かめる。乱戦に持ち込むのに長すぎず、懐から切りつける事もできる。離れた一撃では死角に入ることが出来ないでしょう。超接近からの切断。これが最適解ね。
私目掛けて加護のシャワーが降り注ぐけれど、何の効果もない。この体は加護持ちを狩るのに適し過ぎている。
初撃。名無しの聖女たちのグレートソードが迫る。横薙ぎの一撃が来るけれど、私はそれをそっと左手で押し下げるとその上に腰かける。不安定な剣筋ね。剣戟の最中に揺らぐなんて。それでも聖女?
私は右手のサーベルで首を跳ね飛ばす。その血が噴き出す前に私はグレートソードから降りると左手の甲でその背を押す。つんのめった体からほとばしる鮮血。後ろの二人はまだそれを認識していないようね。私が最初のグレートソードを搔い潜ったように見えるのでしょう。その突き出されたロングソードを左手の指でそっと撫でると私の前進に合わせて下がっていく。そしてその剣先が盾と交わる。右手が前に出ているのに剣先が自分の盾に当たっているなんて。どんな気分なのかしら。私はそのまま前進して右手のサーベルで首を撥ねる。そして彼女の後ろへ。
レイピアはこちらに気付いたようね。切断されてもまだ首が繋がっているロングソードの体をこするように鋭い一撃が飛んでくる。左手から繰り出される神速の一撃。ロングソードの背後に回った私に反応するなんて素晴らしいわ。ただ・・・。そっとつまんだレイピアから伝わる絶望感で減点ね。前後させようとする動きに合わせて動けなくしているのだけれど、それに気づいているのに握りしめているなんて。それが死に直結するとわからないのかしら。貴女が掴んでいるのは自分の心臓よ。握りしめれば呼吸も動きも止まってしまう。私は彼女の伸びた左腕を這わせるようにサーベルを進めていく。そしてそれが首に到達したとき、私は左手で彼女のレイピアを握り、右手で彼女の首を縊り切る。まるでダンスのお相手をしているかのよう。とても可愛らしい聖女さんね。
私が手を離すと思い出したかのように血が噴き出し血煙が私の背後で吹き上がる。次の二人にはカーニバルの演出のようにも見えるでしょう。その驚いたであろう表情は見えないのだけれど、その圧倒された態度で動きを止めるのは戴けないわ。こんな間抜けな顔が貴女達の最後だなんて。もはや武器を構える事も出来ないの?
私が一回りステップを踏むと二人の血煙が吹き上がる。なんだか楽しくなってきたわね。いつまで私一人に踊らせる気なのかしら。ここに人間は居ないの? さっきから催しの人形しか見ていない。
人間は何処?
その先にハイキングをしているお人形たちが居る。武器も構えずに悪い子たちね。不真面目すぎるお人形には罰を与えないと。
加護の展開も出来ず、加護の鎧も非活性。私の一閃で10の塊になるお人形。この一筆書きが終わるまで大人しくしているなんて。本当にこれは生き物なの?
人間は何処??
こちらにも歯応えがありそうな人形が・・・聖女ってマシュマロで出来ているの?
人間は何処・・・???
何処にも居ない。私に応えられない人間なんていらない。
誰も俺には応えられない。
「俺に応えられない人間など死滅してしまえ!!!」
ようやく、
「ようやく捕まえたわよ王牙!!! あなたの心の在り処をね!!!」
ーーー
俺、レオーネは飛ぶ。レオの体で。
なぜ飛べるのかって? それは私が決めたから。そこに法則も何もいらない。この世界がそう変わった。
最高の気分ね。俺はどうして今までこれを使わなかったのかしら? 私なら躊躇なく使う。宝の持ち腐れね。
そして俺私(おれし)の前に巨大な塔が現れる。コロッセオを縦に伸ばしたような平らで広大な塔だ。
これが人類を隔てる結界。全てで八つ。破壊するのはこれで二つ目。
世界は全て平等に苦しまなければならないの。
誰一人としてそこから漏れてはいけないの。
今一度世界を均等に。
・・・私だけが神のオモチャでいるなんて許せないのよ!!!
人類を守る結界がひび割れていく。二つ壊せば綻びが出来る。もう絶対ではない。
あと少し、もう少しで、
だがそれは天から降ってきた塔によって遮られた。
ひび割れ崩れそうな結界の塔に神の塔が突き刺さる。それが支えになるかのように結界の塔の崩壊が止まった。
ーーー
「王牙さん。意識はありますか?」
この声はリブラか。目開けるとここは神の塔のボス広間か。
「レオーネは隔離しました。こことは違うこの場所に」
レオーネ? 俺は自身の姿を見るとレオではない。鬼の姿だ。
「あなたはレオーネに乗っ取られ世界の改変を使って人間の結界の塔を破壊する寸前までいきました。そこで私は現身の塔を下ろし王牙さんを強制的にここに呼びました。そしてここに来たのは王牙さんの意識とレオーネの意識、そしてオーガの体です」
つまりリブラに助けられたのか。
「下にはレオの体とレオニスさんが残っています。どういうことかわかりますか?」
俺の視線にリブラが続ける。
「聞きたいことはあるでしょうが今すぐに戻るべきです。わかりますか?」
「わかった。世話になった」
「はい。レオニスさんの魂はなんの変哲もない普通の魂です。ここに来たときはその正しい流れに戻します。安心してください」
俺の周りに加護ジェネレーターが纏わりつく。
「最後に。未だ王牙さんとレオーネの間にはインナースペースの繋がりがあります。極力インナースペースは開かないように。わかりますか?」
「理解した」
「はい。それではまた。王牙さん」
ーーー
俺が地上に戻るとこの前と同じ、相棒と出しゃばりと脇差を抱えて倒れているレオニスの姿が見える。特に襲われている様子はないが動ける状態ではなさそうだ。魔王の心臓を全開にした後に世界の改変を行ったのだ。その身に何が起こっていてもおかしくない。
俺はレオニスを抱える上げると繋げる。
マズイな。本当の問題はレオーネの消失か。これにより加護を失っている。魔素と加護のバランスが崩れている。
取り敢えずはムリエルの判断を仰ぐか。
「これは厳しいのぉ。応急処置は終わった。じゃが、レオニスを聖女へ改変するは危険すぎる。この体はもう世界の改変を使い過ぎておる。グリッチで疑似聖女にしたとき、レオニスがそのままでいられる保証がないのじゃ。汝の中に入れるわけにはいかんのかえ?」
ここはムリエルの牛車の中だ。そこにレオニスを安置して聖王都へと戻る最中。幸い人間達の追撃は無い様だ。
「今インナースペースを開けば隔離したレオーネ、つまりこの元凶を呼び込むことになる。今以上の惨状になるな」
その上レオの調整も難しい。これはパルテに頼るか。
▽
Tips設定変更の可能性
この世界の流通は基本的に加護持ちの人力が主流。馬などは加護のない人間達が使う。
一言で言えば馬車を馬で引くより、加護持ち人間が馬車を持ち上げて運んだ方が速い。
ただ、現実の世界的に人間が荷車を引く姿や、人を乗せた荷車を人が引くという表現に問題がありそうなんで後で変更するかもしれません。
今回の聖女達は自分の足で走っていますが、これが馬や馬車に変わったら世界観の設定が変更されたと考えてください。
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