王牙転生~鬼に転生したゲーマーは流されるままに剣を振るう~

中級中破微小提督

文字の大きさ
3 / 99
第一部 チュートリアル

第三章 魔物チュートリアル(挿絵あり)

しおりを挟む

「よくやった鬼の」
 俺を出迎えたのは魔法を放ったのと同じ声だった。髑髏の顔にボロ布。それも浮いている。体もほとんどが骨だな。だがその大きさはオーガに迫る。何処から声が出ているのかと思えば、コレは声でも魔物だけに通じるリンクで共通言語のようなものだのだろう。
「助かった。あんたは骨の…リッチか?」
 あの魔法と言いこの出立と言い、アンデッド最上位といえばリッチか何かだろう。その体の魔素を見ても解る。体の耐久度こそオーガに及ばないがその含有魔素の量が桁じゃない。魔素で出来た魔物ならば魔素の多さがそのまま強さに直結するのだろう。
「りっち? この髑髏をそんな名で呼ぶ鬼は初めてだ。私がりっちならお前は何だ?」
「俺はオーガだろう。さっきゴブリンも居た。ファンタジー物の定番だと思ったが違うのか?」
「鬼の王牙か。ならば私の事は死の髑髏とでも呼べ。ここで名前を呼び合うとは変わった鬼が居たものだ」
 どうも何か勘違いを与えているようだがここの流儀に疎い俺はあえてそれを否定しなかった。あまりも情報が少ない。
 ここはさっきの森を抜けた所、森から離れた盆地にある休憩所のようなものだ。勿論魔物に休息などは要らないが魔素の補給は必要になる。ここはその魔素が溜まりやすい場所なのだろう。魔素が溜まりやすいという事は他の生物が近づきがたい事を意味している。近づいた場合もその魔素の揺らぎで感知しやすい。安全な場所と言うよりも地形効果的に有利な場所と考えていいだろう。
「いやなに。久しぶりに会話のできる鬼を見かけてな。ほとんどの者は口を開かずとも足りるからな」
 確かに。こと同族であれば目を合わせずとも疎通できる。
「それで王牙。お前の前世は人間だな?」
 ツーと通じていた糸のようなものが切れた。だが切れたのはその一瞬。張り詰めた物は魔物特有の感応で敵意を感じるものではなかった。むしろ同郷を悼むような。
「あんたもか」
「ああ。ここで人の意識を保てる者は多くは無い。そもそもが元人間かどうかも怪しいものだがな」
「それだけここの魔物の生き方が熾烈だという事か」
「・・・? 気付いてないのか?」
「なにをだ?」
「お前、息をしているか? 食事はしているか? 睡眠は? その欲求に耐えられるのか?」
「何を言っている。俺たち魔物に呼吸も食事も睡眠も、休息さえいらないだろう」
「驚いた。本気でそう言っているのか。普通はそこで耐えられないんだ」
「よくわからんが、俺はゲーマーだ。食事もしない睡眠もない休息も要らない。こんな理想的な体が他にあるか。呼吸だってしようと思えば出来るだろう。意味は無いが会話はしやすしな」
「・・・お前は本当に人間か? げーまーとは新種の人類か?」
「違う。ゲーマーはゲームを生業とする人間だ。ゲームの為なら生理機能など捨ててる奴が五万といるぞ。俺はそれの端くれだ。廃人でさえないからな」
 やはり髑髏は訝し気な顔をしているな。確かにまともな人間なら理解の範疇外だろう。言葉を持つ魔物が全てゲーマーであるという仮説はこれで崩れたな。
「…そうか。遠い未来から来たのかもしれないな」
 その可能性があったか。だが元が普通の人間ならその認識も頷ける。
「そうだな。時代と言うか人間性にズレがあるのは俺も承知している」
「本当に不思議な鬼だ。鬼に墜ちた存在が人間性を語るのか。先ほども小鬼を庇っていたな」
「それが俺達の役割だろう。護衛対象が全滅しては何のための俺達だ」
「・・・まるでわからない」
 どういう事だ? 俺達は俺達を呼びだしたか生み出した存在に従っただけだ。本隊を逃がしてエルフの森を脱出する。その損害は少ない方が良いだろう。
「鬼、いや王牙だったか。お前に興味が湧いた。しばらく同行しよう」
「それは助かるがいいのか?」
「どの道行くべき場所は同じだろう。髑髏では区別が付かんな。さっきの通り私の事はシノと呼べ」
「心得た」
 満足げに頷くシノ。俺も心強い味方が出来て満足している。オーガは肉体に優れていても魔素の扱いには慣れていない。寧ろ扱えるビジョンが見えない。五感に頼らない魔素の索敵はそれだけで十二分に役に立つ。頼りになりそうだな。

Tips
転生
基本的に死からの蘇り。別の存在への生まれかわり。
転移ではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...