王牙転生~鬼に転生したゲーマーは流されるままに剣を振るう~

中級中破微小提督

文字の大きさ
26 / 99
第二部 聖女

第二十六章 デミ人間

しおりを挟む
「ファイヤーボール!」
 俺は魔物で人間の言葉は鳴き声にしか聞こえないのだが、それでもそれはそう聞こえた。
 人間の手から放たれた火球が飛んでくる。ゆっくりと。
 俺はそれを相棒で絡めるとそれが爆発した。
 おおう。俺の髪が縮れ毛に、いや元からか。
「アイシクルランス!」
 空中に氷柱が育っていく。それが落下してくる。
 俺はそれを相棒でそっとずらす。
 するとそこから棘が出てきて破裂する。
 おおう。まぶしい。
「ロックブレイク!」
 つぶてがちゅどっどどーん。
 ・・・俺は大地の支配で真下から棘を出すとその曲芸は終わった。
 神の加護もないんかい!
 今の手品は何だ? 何もない空中から何かが生み出されていた。ファンタジー物定番の魔法という名の超能力だ。
 まさかのサイキッカーか? いやそれにしても無から有を生み出せる・・・のか?
 何かの鳴き声が響いて俺が目を向けると先ほど倒した人間が血塗れで立ち上がってくる。
 いや。流石の俺でもわかる。この流血量は致命傷だ。立てるはずがない。つまりどこからか血液が生み出されているということだ。そしてこの回復力。俺がその人間の首を落とすと何事もなかったかのように何かを放つ体勢になる。俺が上半身を切り飛ばすとそれが見えた。核だ。内蔵されてはいるが核だ。コアではない。いわばデミ人間だ。案の定再生してくるが痛みを感じている様子はない。これは操作されているな。シノが自ら生み出したデミ髑髏を操っていたのと同じだ。俺はしばし迷ったが核を破壊する。まさかの人間に核だ。もう少し様子を見ようと思ったがこれを操るコア人間が居るのならそちらを優先すべきだろう。
 しかしさっきの手品は核から生み出されたものだったのか。「魔素」「神の加護」「血液」は生み出せる。その原理で行けば炎や水のファンタジー魔法を生み出せても不思議はない。だが魔物にあの生成魔法とでも呼ぶべきか。あの生み出したものをぶつけるというのは効率が悪い。素直に魔素による魔法と加護による奇跡を起こした方が有用だろう。しかも人間がベースであればどちらも使える。魔物と違って加護の守りと魔素の魔法が同時に使えるのだ。人間の魔法使いでも更なる力を手に入れられるだろう。
 狭い路地にでたな。
 今回は人間の街の占拠だ。石壁で囲われているレベルのそれなりの大きな街だが特に何かがあるわけでもない。大きな街特有の水路はあるが、普通の街並みだ。敷き詰められているレンガも施されていない。交通の要所ではあるが戦争部隊が居るわけでもなく自衛のそれなりの加護持ちが居た程度。正直オーガが必要なのかと疑っていたがこういう事か。
 俺はシノに頼むとここら一体を魔法で吹き飛ばしてもらう。すると出てくるわ出てくるわ。間違いなく黒い害虫だな。しかも厄介なことに人間の中に核があり、そのうえ操られているから補足が難しい。シノはまだ半分寝ている状態だ。素直に俺が害虫駆除に勤しむか。
 しかし意外なことが起こった。デミ人間たちが俺には目もくれず人間達を襲いだす。
 これは、どういうことだ?
 流石の俺も戸惑いを隠せない。これでは俺がデミ人間を呼び出したようにも見えるな。
 折角だから観察させてもらおう。今回は街の占拠だ。どのみち人間を片付けなくてはならない。下手に手を出してヘイトを稼ぐよりデミ人間の可能性を探る方が優先だ。さっきも言ったがこの生成魔法は魔物には効果が薄い。だが人間にはとても有効だろう。
 見ていても生成魔法は魔法よりも加護に対する効果が高い。そもそも神の加護に対して魔素の魔法は相性が悪い。それは人間と魔物のスペック差があるからこそ機能しているようなものだ。同じスペックなら魔法など使うはずがない。
 それにしても有効だな。単純に物理効果は神の加護に対して強い。銃があったがあれは魔物よりも加護持ち人間に効果がある武器だ。あの炎一つとっても、あれは油を生み出しているのだろうか、あれが加護に張り付いている。ダメージがなくても単純に暑いだろうな。水牢のようなものある。あれは生み出した水を自身の生成加護で操っている。普通に破られているがその水がさっきの炎と交わって辺り一面に蒸気が発生している。これは単純にきついだろうな。
「高みの見物か?」
 シノが起きたか。
「ああ。もし俺がコアを手に入れたら口から炎を吐くドラゴンになれるかもしれないな」
「どらごん? 宇宙の龍は火を吐くのか」
「宇宙ではないが創作だ。あの生成魔法はまさに絵に描いたような魔法だとは思わないか?」
「確かにお伽噺の光景だな。あれは私にもできるがお勧めはしないぞ」
「髑髏のプライドが許さないとかそういう事か?」
「違う。アレを魔法と呼ぶのは私も抵抗があるがそれよりもコアが持たない。無限に生成できるようなものでないだろう。私もデミ髑髏の生成と魔素の生成を同時に行っていたが、コアの疲労を感じる事が出来なかった。急に動けなくなった」
 ああ。魔物惑星の時のアレか。慎重な髑髏のシノがガス欠を起こしたのはそのせいか。
「じきに終わるだろう。それよりもコア人間が伸びているがアレをどうする」
 シノのマーキングを見ると先ほどシノが吹き飛ばした瓦礫の下に埋まっている。
 罠ではなさそうだが。俺は大地の支配で周りを掘っていく。色々な機材が見えてくるが何かの施設というよりも地下室レベルか。そこには実験材料と思わしき耳長の人影が見えてきた。細部の描写は避けるがそういう事だろう。
 どのみち見逃す気はないが、楽にしてやろう。
 俺が剣を振りかぶると別の加護持ちエルフが襲ってきた。町の中でエルフが二人、流石にこれは不自然過ぎる。短剣を使ってはいるが殺意がない。俺は戦っているふりをしながら剣の腹でエルフを壁に叩きつける。そして加護を失ったエルフを左手で掴み上げた。
「よぉ、旦那」
 まあそうだろうな。案の定ゴブリンだ。
「状況は?」
「そいつを助けに来た。その後町を出る」
「シノ。ゴブリンの俺の魔素はどうだ」
「もう凝り固まっている。摘出が必要だな」
 なるほど。
「ゴブリン。少し痛いが耐えろ。後で俺の魔素を吸え」
 俺はゴブリンの上半身を咥えると牙でコアへの穴を開け、舌で同期させ俺の魔素を吸いあげる。シノの時のように口からは無理だろう。
 暴れるふりをしているゴブリンを堪らず口から出す演技。そこからゴブリンが俺の指に噛みつき魔素を吸いあげる。その終わりと同時に加護を発生させたゴブリンを捕らわれていた方のエルフに投げ飛ばす。
 さて、あとは追いかけるふりをしながらゴブリンとエルフの逃亡援護か。やはり人間の町など碌でもないな。
「まて、それを逃がすのか?」
 シノか。何を今更だが俺は問いただした。
「何がだ」
「いまそれを捕らえろと指示が来ていないか?」
 なんだそれは。いつものシノの口癖を俺が言う所だった。
 コア持ちを捉えろ? それも名指しで? 
 俺が魔物のリンクを探ると確かにそれを捕らえろと指示が来ている。しかし何だこれは。あまりに精巧すぎて逆に怪しさ大爆発だ。まさかの偽指示だ。
 遂に来たか。世界改変の情報操作。チートによるサイバー戦だ。
「これは一大事だな。まさかここまでやるとはな」
「だがそこまでするほどの価値はあるぞ。魔物ではない人間種のコア持ちだ。それも使いこなしている。私も少し興味はあった」
「なら人間どもと同じ様に縛り付けて実験道具か?」
「そこまでする必要があるか。普通に連れて行けばいいだろう」
 シノの魔法への探求心は高いがそこまでの外道にまで堕ちるほどでないか。
「お前はそうでも。その指示を出した奴はどうだろうな」
 いつもと立場が逆だな。いつも何かを信じている俺と、今の指示を単純に信じているシノが被る。シノがいつも感じている俺への危機感はこれか。何かを盲目的に信じているように見えるのか。
「シノ。俺はコイツラを見逃す。お前はどうする」
「・・・お前と敵対してまで指示には従わん。何より私の力の源はお前との好感度なのだからな。そっちを優先する。それにしても甘すぎだ」
 いや違うのだがな。いまこの指示が偽物だと言っても逆効果だろう。ゴブリンの方も拘束が解けたようだ。

 俺は逃げるエルフ二人を追いかけながら町の中を探っていく。
 デミ人間はガス欠で止っている個体が増えてきたな。意外なのがエルフ二人が人間のいる側に逃げたことだ。どうやら味方をする人間もいるらしい。辺に干渉してはマズイな。
 俺がまた高みの見物を決め込んでいると新しい指示が届く。撤退指示だ。あるポイントまで合流。勿論偽指示だ。
 元の指示であるここの占拠も大事だが、このサイバー戦を仕掛けている存在の方が脅威だ。今潰すしかないだろう。
 俺達はこの街を後にする。ゴブリンは上手くやっただろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...