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第三部 魔族
第三十七章 悪役令嬢終了
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魔族の王城。そこはゴシック調の建物の森だった。城下も全てが尖塔のような佇まいだ。それが山のようになり高くそびえる王城に繋がっている。この規模から多くの魔族が居るのだろうがあまり活気がない。夜の城下は明かりが灯っていても人通りはない様だ。
それはつつがなく行われた。
今の相棒は捕食形態を何本も束ねたヒュドラのような形態をとっている。シノがこれ以上の血液が摂取できないと知って魔族を完全に消滅させる気だ。そこに光が灯り眼下の城下を照らしていく。多頭となった魔素イレイザーが次々と魔族を消滅させていく。異変を感じてあがってきた合成獣の騎兵は音もなく崩れていく。出しゃばりの精神攻撃で魂を砕かれたのだろう。
それはあまりにも静かだった。
その光景はまるで多頭の怪獣がレーザーを薙ぎ払うようなものだが、全く音がしない。建物も一切の被害がない。ただ魔族と合成獣だけが消えていく。
その光景はまるで停電で明かりが消えていく街そのものだ。今しがた人が居た街並みが何もない廃墟へと変貌していく。ここには一切の音も戦闘もない。ただ静かに消えていく。王城まで来てもそれは何も変わらなかった。
その光景はまるで時だけが過ぎた廃墟のようだ。消滅した合成獣の塵だけが降り積もる灰被りの都市。
その光景はまるで地獄のような光景だが、これは寧ろ天国なのか。この短時間で全ての命が消え去っていく。
魔族を全滅させた俺達は王城の地下の合成獣プラントに足を踏み入れた。流石に地下では俺がチートの禁止を発動して進んでいる。機材の破壊は俺自身がやるしかないだろう。プラントといっても俺の言い回しで工場というより研究所だ。それも改変魔法が全開で俺のチート禁止に触れて自己崩壊していく。
流石の俺もため息が出る。この改変魔法の使用に使われているのは魔族式魔素ジェネレーター、つまり魔族の心臓だ。この合成獣プラントも合成獣自体も魔族の心臓が動力になっている。つまりどういうことかといえば、
俺の目の前に試作型合成獣が現れる。何の試作かといえば魔族と合成獣のツインジェネレーター仕様だろうな。合成獣自体は俺の禁止で崩れ始めるが、この試作型はそれに抵抗を持つらしい。中央に埋め込まれた魔族が体を維持しているのだろう。
爪の一撃を食らうがこんなものが魔物に効くとでも思っているのか。こんなものは人間のハンマー持ち以下の代物だ。あのデミ掃除部隊の一撃に劣る。
そして巨大化した俺の爪で握りつぶせる。これが人間なら巨大化した魔素の爪など施された武器の一撃で潰されていただろう。
こんなものの為にどれだけの外道を重ねたんだ?
「これが私の行きつく先だったのかもしれないな」
シノがぽつりと呟く。
「もしもお前が遅れて居たら私はここでお前を待っていたかもしれない。その時はどうしていた?」
「即殺だ。このようなものにお前の魂が穢されるのは耐えられん」
「そうか。助けようとは思わないのか?」
「わからん。このまま生きることが助けなのか? お前の望みはそこにはないだろう」
「その通りだ。だがそれでも聞きたい言葉というものがあるぞ」
「嘘で良ければいくらでも吐こう。だがそうはならなかった。そうはさせなかった。それが俺の答えだ」
「そうだな。感傷だ。私はもう魔族のシノ・ヴァレンティーノではない。魔物のシノ。死の髑髏だ」
「そうだ。俺達はもう人間ではない。それを捨てて魔物に成り果てた」
合成獣プラントを出た俺達は生存者を追いかけていた。
人間の皇女。
・・・のように見える魔族だ。本物の皇女が見えない所を見ると何かの奇跡があるのだろうか。皇女自体は加護を持っている可能性はある。
俺は捕まえた皇女擬きを手にどうやって本物を誘き出すかを考えていた。
「王牙。今のお前の最優先はなんだ?」
シノだ。何かいい考えでもあるのか。
「勿論皇女の撃破だ。こいつを使ってどうやって本物を炙り出すか考えていたところだ」
「王牙。お前の最優先は私だ。常に私の事を考えろ。お前は私の物なのだからな」
なんだ?
シノの意図に気付いて俺は止まる。
俺は何をしている。皇女を庇う魔族を餌にして皇女の撃破だと? なんだその人間が如き行動は。
いや少し前からおかしい。俺がコイツラの行動に呑まれてるのか。相棒と出しゃばりのあまりにも冷酷な行動に感化されていたらしい。コイツラの世界の改変をしたものへの制裁は度を越しているからな。俺が俺を殺してまで皇女を撃破する意味がそこにあるのか。
「わかった。だが皇女は間違いなく人間の聖女の二の舞だぞ」
「それでもだ。今のお前は皇女に囚われ過ぎている。自分を取り戻せ」
やはりそういう事か。
それはそれとして敵を見逃すわけには行かない。俺は皇女擬きの首をはねるとその体を丁寧に横たえる。そして宣言した。
「相棒、出しゃばり、ここまでだ。元に戻れ」
相棒が最後の魔素キャンセラーで索敵を終えるとただの剣に戻る。それを鞘に戻すと盾の跳躍でこの場から離れる。短い時間だったが長く感じる時間だったな。
「これで悪役令嬢物ではなく正当な皇女物語になってしまったな」
「なんだそれは」
「本来なら主役の悪役令嬢が魔物と手を組んで魔物になり下がり王都を廃墟に変えるんだ。もう完全に悪役側だな」
「神に弓引く私に何を今更だ。私は主役などではない。なる気もない。その主人公は神の糸で操られた人形だぞ。私にそれになれというのか?」
「それもそうだ。そうだ先の質問だがな。お前が合成獣のパーツにされたらという話だ。やはり俺はお前を連れて逃げるかもしれないな。コイツラを捨てて、魔物であることも捨てて、神への反逆など忘れて、二人で獣のような日々を過ごす。俺の最優先はシノお前だ」
「王牙。お前と言う奴は・・・。そうだ。その通りだ。その答えで満足だ。だがそんなことにはならないぞ。私たちが二人でいてそんなことになるものか。私は私をそんな目に合わせた世界を許す筈がない。お前がそんな退屈な日常で我慢できるものか。その時はその時の私達らしく楽しくやるだろうさ」
「そうだな。俺達はきっと変わらない。いつもの俺達だ」
それを確認できただけでも今回の旅に意味はあったか。俺の恨みと悔恨に満ちた旅はここで終了だな。
それはつつがなく行われた。
今の相棒は捕食形態を何本も束ねたヒュドラのような形態をとっている。シノがこれ以上の血液が摂取できないと知って魔族を完全に消滅させる気だ。そこに光が灯り眼下の城下を照らしていく。多頭となった魔素イレイザーが次々と魔族を消滅させていく。異変を感じてあがってきた合成獣の騎兵は音もなく崩れていく。出しゃばりの精神攻撃で魂を砕かれたのだろう。
それはあまりにも静かだった。
その光景はまるで多頭の怪獣がレーザーを薙ぎ払うようなものだが、全く音がしない。建物も一切の被害がない。ただ魔族と合成獣だけが消えていく。
その光景はまるで停電で明かりが消えていく街そのものだ。今しがた人が居た街並みが何もない廃墟へと変貌していく。ここには一切の音も戦闘もない。ただ静かに消えていく。王城まで来てもそれは何も変わらなかった。
その光景はまるで時だけが過ぎた廃墟のようだ。消滅した合成獣の塵だけが降り積もる灰被りの都市。
その光景はまるで地獄のような光景だが、これは寧ろ天国なのか。この短時間で全ての命が消え去っていく。
魔族を全滅させた俺達は王城の地下の合成獣プラントに足を踏み入れた。流石に地下では俺がチートの禁止を発動して進んでいる。機材の破壊は俺自身がやるしかないだろう。プラントといっても俺の言い回しで工場というより研究所だ。それも改変魔法が全開で俺のチート禁止に触れて自己崩壊していく。
流石の俺もため息が出る。この改変魔法の使用に使われているのは魔族式魔素ジェネレーター、つまり魔族の心臓だ。この合成獣プラントも合成獣自体も魔族の心臓が動力になっている。つまりどういうことかといえば、
俺の目の前に試作型合成獣が現れる。何の試作かといえば魔族と合成獣のツインジェネレーター仕様だろうな。合成獣自体は俺の禁止で崩れ始めるが、この試作型はそれに抵抗を持つらしい。中央に埋め込まれた魔族が体を維持しているのだろう。
爪の一撃を食らうがこんなものが魔物に効くとでも思っているのか。こんなものは人間のハンマー持ち以下の代物だ。あのデミ掃除部隊の一撃に劣る。
そして巨大化した俺の爪で握りつぶせる。これが人間なら巨大化した魔素の爪など施された武器の一撃で潰されていただろう。
こんなものの為にどれだけの外道を重ねたんだ?
「これが私の行きつく先だったのかもしれないな」
シノがぽつりと呟く。
「もしもお前が遅れて居たら私はここでお前を待っていたかもしれない。その時はどうしていた?」
「即殺だ。このようなものにお前の魂が穢されるのは耐えられん」
「そうか。助けようとは思わないのか?」
「わからん。このまま生きることが助けなのか? お前の望みはそこにはないだろう」
「その通りだ。だがそれでも聞きたい言葉というものがあるぞ」
「嘘で良ければいくらでも吐こう。だがそうはならなかった。そうはさせなかった。それが俺の答えだ」
「そうだな。感傷だ。私はもう魔族のシノ・ヴァレンティーノではない。魔物のシノ。死の髑髏だ」
「そうだ。俺達はもう人間ではない。それを捨てて魔物に成り果てた」
合成獣プラントを出た俺達は生存者を追いかけていた。
人間の皇女。
・・・のように見える魔族だ。本物の皇女が見えない所を見ると何かの奇跡があるのだろうか。皇女自体は加護を持っている可能性はある。
俺は捕まえた皇女擬きを手にどうやって本物を誘き出すかを考えていた。
「王牙。今のお前の最優先はなんだ?」
シノだ。何かいい考えでもあるのか。
「勿論皇女の撃破だ。こいつを使ってどうやって本物を炙り出すか考えていたところだ」
「王牙。お前の最優先は私だ。常に私の事を考えろ。お前は私の物なのだからな」
なんだ?
シノの意図に気付いて俺は止まる。
俺は何をしている。皇女を庇う魔族を餌にして皇女の撃破だと? なんだその人間が如き行動は。
いや少し前からおかしい。俺がコイツラの行動に呑まれてるのか。相棒と出しゃばりのあまりにも冷酷な行動に感化されていたらしい。コイツラの世界の改変をしたものへの制裁は度を越しているからな。俺が俺を殺してまで皇女を撃破する意味がそこにあるのか。
「わかった。だが皇女は間違いなく人間の聖女の二の舞だぞ」
「それでもだ。今のお前は皇女に囚われ過ぎている。自分を取り戻せ」
やはりそういう事か。
それはそれとして敵を見逃すわけには行かない。俺は皇女擬きの首をはねるとその体を丁寧に横たえる。そして宣言した。
「相棒、出しゃばり、ここまでだ。元に戻れ」
相棒が最後の魔素キャンセラーで索敵を終えるとただの剣に戻る。それを鞘に戻すと盾の跳躍でこの場から離れる。短い時間だったが長く感じる時間だったな。
「これで悪役令嬢物ではなく正当な皇女物語になってしまったな」
「なんだそれは」
「本来なら主役の悪役令嬢が魔物と手を組んで魔物になり下がり王都を廃墟に変えるんだ。もう完全に悪役側だな」
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「それもそうだ。そうだ先の質問だがな。お前が合成獣のパーツにされたらという話だ。やはり俺はお前を連れて逃げるかもしれないな。コイツラを捨てて、魔物であることも捨てて、神への反逆など忘れて、二人で獣のような日々を過ごす。俺の最優先はシノお前だ」
「王牙。お前と言う奴は・・・。そうだ。その通りだ。その答えで満足だ。だがそんなことにはならないぞ。私たちが二人でいてそんなことになるものか。私は私をそんな目に合わせた世界を許す筈がない。お前がそんな退屈な日常で我慢できるものか。その時はその時の私達らしく楽しくやるだろうさ」
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