72 / 99
第六部 聖王都
第七十二章 聖王都奪還戦⑤ 阿修羅ゴリラ再戦
しおりを挟む
劣勢の人間側だがそれでも耐えていた。
それはなぜかと言えば怪しすぎるのだ。いつもは交戦的な俺達でもこの背水の陣で耐える人間達には近づきたくない。髑髏の魔法で削られているのを援護するくらいだ。俺にしても大地の支配で石棍棒の投擲だ。どう見ても登頂を占拠したらドカーンとかそういう類だろう。ゴブリンでさえ近づいてないぞ。
俺達が近づいて来ないのを知ると人間達が西の方に移動を始める。これまた怪しさ大爆発だ。北は急斜面だが魔素人形なら降りられるだろう。東は川だが最悪飛び込んで逃げるもありだ。だが西は魔物がうようよ居る平地になっている。出口までは遠すぎる。
だが人間達が西の出口に向かうとサーっと魔物の群れが避けて道を作る。そこをノロノロと撤退する人間達。絵面が完全に追放される人間達に石を投げつける構図だ。それもそのはず、俺の記憶が正しければあの人間達が撤退している道は超巨大ロボ、阿修羅ゴリラの着地点だ。神殿から見ていたから憶えている。そして人間の撤退が終わった。
勝ちが決定しているのに誰も勝鬨を上げない。そう俺達は待っている。
少し待つ間魔素ジェネレーターが稼働する。いつもの利便的な中央ではなく端の四隅に一基づつ。計四機。中央東側にもう一基建てる所でそれが現れた。
空中に魔方陣が現れる。そして姿を現したのが予想通りの超巨大ロボ、阿修羅ゴリラだ。
一応人型だ。下半身は貧弱だがそこから延びる猫背の上半身が倍くらいはある。そこから左右に三本ずつ、計六本の腕。
顔は三面。言ってしまえば阿修羅。だがそのスケールが狂っている。
全長は猫背で測りようがないが全高は優に俺の五倍。
下半身の腰の部分で二体分、上半身で三体分。
振り上げた腕を入れるとこれも一本三体分くらいの長さだ。
そして手に持つサーベルは俺一体分だ。上側の手に四本。
それに合わせてシノの魔法が炸裂する。魔王城を崩壊させた例の魔法を縦に三撃。ゆっくりと降りてくる阿修羅ゴリラに食らわす。多少揺らいだがまだ健在だ。二撃目は着地した瞬間に四重の魔法が炸裂する。前回はここで大量の魔法使いが中から出てきたが・・・今回は大量の肉塊と血をばら撒いて終わった。
「先手必勝だな。あの皇帝との戦いは参考になった。まだ一撃残っているが取っておくぞ。使うときは言え」
シノに返事を返そうとした時だ、阿修羅ゴリラの顔がこちらに向く。その巨体の突撃を防ぐ術もなく逃げ惑う。相変わらず凄い機動性能だ。六本腕の下二本を地面に着いてのゴリラスタイルだ。この腕が足のようなもので急発進はもとより急旋回も可能にしている。そしてその地面に腕を着くというその行動自体が強力な武器になる。そして勿論上の四本腕のサーベルはそれ以上の破壊力だ。
奴が狙っているのは黒髑髏のシノだ。赤髪を俺の盾に格納していたのは正解だったな。これは流石に守り切れん。全力の一撃なら巨大サーベルの軌道をずらすことも可能だが、それが四本は流石に無理だ。
「シノ。黒髑髏を囮にするぞ」
「やむを得ん。あれが無くなると一重の魔法しか使えんぞ。トドメには心許ないな」
そう言う間に黒髑髏が巨大サーベルの一撃を食らいあっという間に解体されてしまう。
「こんなことなら食らわせておくべきだった。温存などと裏目に出たな」
「仕方ない。これが最終形態かどうかも定かでないからな」
「なんだ。何か策でもあるのか?」
「策というほどではないが試してみたいことがある」
阿修羅ゴリラは他の髑髏を狙いに行ったようだ。奴の狙いは髑髏か。という事は魔法による攻撃は有効だという事だ。そして意外なことが起きた。足ではなく手を滑らせてその巨体が転がる。見た目ではわからないがダメージの蓄積はある様だな。
「アリエス。タウラスを貸してもらえるか?」
その隙をついて俺は奴への準備を進める。
「私は構いませんが、タウラスどうですか?」
「何をさせようっていうんだい? 事と次第によっては君からもらう時間が増えることになるけどいいかな?」
タウラス、ではない黒猫が喋っている。いやこれがタウラスか。
「単にグレートソードになって欲しいだけだ。流石にオーガサイズの鋼鉄のグレートソードは手に余る」
「お安い御用さ。アリエスはどうする?」
「私は私の仕事をします。あれに魔素は効かないでしょうからヒーラーに専念しましょう」
そう言ってアリエスは仮面とシスターフードを取り出す。
「王牙、私はどうする。降りた方がいいか?」
「いや、シノは乗ったままでいてくれ。間違いなく降りたら的だ。奴に見つからないことが先決だな」
「ならばお前と一体化してもいいぞ。その方が安全だろう」
「そこも考えてある。今回はレオとだ。アレを相手に空中戦は何が起こるかわからん。最悪ジャンプを繰り返されて余計に手が付けられなくなるだろう」
それに熱線が効くかどうか。これが効けば上空から熱線爆撃が出来たが、もたついていたら味方の被害も甚大だろう。
俺はインナースペースを解放するとそれをレオと繋げる。インナースペースから出てきたレオが再度俺の中に埋没すると合体が完了する。向こう側でムリエルが驚愕していたな。一言言っておくべきだった。
俺は竜翼を展開する。十二枚。全て使えるな。そして手にはタウラスのグレートソード。その特性で重さはほとんど感じられない。だが攻撃時の重さは感じる。レオとアリエスの模擬戦で実践済みだ。そこにアリエスのバフが加わると俺達は駆けだした。
「アリエス。ついてくるのか?」
「はい。わが父の傍が一番安全でしょうから」
その仮面の下から見える唇が怪しく笑う。その手にはトゲ棍棒が握られている。これは、後方支援をする顔ではないな。
俺は竜翼の先端から加護を放出するとその拒絶反応を使って推力にする。持続性はないが初速はかなり出る。これでだいぶトリッキーな戦い方が出来るな。単純な空中戦では即座に叩き落されるだろう。その俺にアリエスが掴まってくる。魔物のリンクでそれはわかるが本気で着いてくる気か。
既に立ち上がった阿修羅ゴリラは散開した髑髏部隊を追いかけている。見ていると阿修羅ゴリラの右側に魔物の魔法攻撃が、左側は近接が狙っている状態だな。俺は狙いを左腕側に付ける。真後ろから左腕の付け根にタウラスグレートソードを叩き込む。アリエスは俺から降りて魔素回復の胞子と味方の部位回復をしている。敵に密着してのヒーラーか。ある意味この手合いには有効だろうな。下手に間合いを取ると高威力の巨大サーベルが飛んでくる。
流石に俺達を無視という事はないな。四本腕が全てこちらに向いている。俺は竜翼の加護放出でそれらを避けるとその球体関節を狙っていく。しかしこの巨大サーベルは施された武器ではないな。いわば加護の鎧を剣の形にしたものだ。加護で回復できる便利な金属だ。魔物に対して特攻という事はないだろう。まあ、この大きさなら特攻もクソもなく魔物を両断だろうがな。加護の鎧を武器に出来るという視点は新しいな。
アリエスを見ているとこいつも空中戦をしているな。空中に滞留魔素を配置してそれを魔物武器のトゲ棍棒で叩くことで実質足場にしている。人間サイズだからこそできる奴だろうな。オーガでやったら落ちるだろう。そして掠る阿修羅ゴリラの腕を滞留魔素による疑似加護で軽減して滑るようにその腕に取り付く。この前のレオ戦での経験が見事に活かされてるな。加護減衰のトゲ棍棒も効いているようだ。明かにアリエスにヘイトが向いている。
左側の二本の腕がアリエスを狙うと俺とアリエスの目が合う。魔物のリンクを使わなくともわかる。その視線が信用で満ちている。こいつは俺を顎で使う気か。流石は元聖女サマだ。その信用には全力で応えてわからせる必要があるな。
ヘイトが外れた俺は竜翼を全開にすると左腕の付け根へ全力の一撃叩き込む。この球体関節を割れれば腕は落ちるだろう。その思惑通り腕は落ちた。だが腕と球体関節が繋がっていない? その断面は切れたというよりも外れたが正しい。腕の落ちた球体関節は奇麗な球体だ。となればこの腕は加護操作か。
この球体関節はまさかの加護ジェネレーターか? それが腕の分六基だ。これが動力兼可動部。俺達の世界で言えばサーボモーターが動力と電力供給を兼ねている状態だ。これは強いわけだ。これなら胴体内部はスカスカで兵員輸送も可能なわけだ。
その考え事をしていた俺は視線に気づいて寒気がする。阿修羅ゴリラ左の顔がこちらを向いている。その目が輝くと加護ビーム。俺は咄嗟にタウラスグレートソードを盾にして落下し視線を避ける。第二形態というよりも腕が落ちて使わなくなった余剰加護を加護ビームに回した状態か。
「タウラス。無事か」
「ああ。問題ないよ。ただ一瞬ならともかく浴びせ続けられるのはキツイな」
「了解した。キツくなる前に一言くれ」
「まだしばらくは大丈夫だよ。ただ盾に使うのは遠慮して欲しいかな」
「わかった」
やはりタウラスの物理無効でもこれは無効化できないか。右側を見ていると腕は落ちてないが動きが鈍い。やはり魔法攻撃の方が有効の様だな。
「王牙。盾を使うなら私は降りていいぞ」
「いや、そこに居てくれ。こいつらの狙いがお前だという予感めいたものが俺を縛り付けている。別行動は逆に俺の行動に支障が出る。それよりもあの球体関節に魔法を使ってくれないか? アレの加護を減らさないといつまでも健在だ」
「わかった。トドメの一撃分は残すか?」
「いや。ここはもう使い切ろう。これで落ちないなら撤退も考えた方がいいな。ネームドが出るようなら速攻で逃げるぞ」
「わかった」
「タウラス。あれの加護ビーム中にお前を叩きつけるが可能か?」
「可能かと言われれば可能だけど流石にその後は無理だよ」
「ああ。覚悟しておいてくれ。絶対に死ぬなよ」
「王牙。君といると最高に刺激的だね。わかったよ。絶対に死なない。君との約束は守る」
「その後は俺の盾に入ってくれ。俺との時間を何に使うか知らんが俺が逃げ出すような濃厚なの以外なら歓迎だ」
「それは楽しみだな。そのための黒猫の姿でもあるんだ。これなら君でも撫でまわせるだろう?」
確かにな。それは俺も楽しみだな。
それはなぜかと言えば怪しすぎるのだ。いつもは交戦的な俺達でもこの背水の陣で耐える人間達には近づきたくない。髑髏の魔法で削られているのを援護するくらいだ。俺にしても大地の支配で石棍棒の投擲だ。どう見ても登頂を占拠したらドカーンとかそういう類だろう。ゴブリンでさえ近づいてないぞ。
俺達が近づいて来ないのを知ると人間達が西の方に移動を始める。これまた怪しさ大爆発だ。北は急斜面だが魔素人形なら降りられるだろう。東は川だが最悪飛び込んで逃げるもありだ。だが西は魔物がうようよ居る平地になっている。出口までは遠すぎる。
だが人間達が西の出口に向かうとサーっと魔物の群れが避けて道を作る。そこをノロノロと撤退する人間達。絵面が完全に追放される人間達に石を投げつける構図だ。それもそのはず、俺の記憶が正しければあの人間達が撤退している道は超巨大ロボ、阿修羅ゴリラの着地点だ。神殿から見ていたから憶えている。そして人間の撤退が終わった。
勝ちが決定しているのに誰も勝鬨を上げない。そう俺達は待っている。
少し待つ間魔素ジェネレーターが稼働する。いつもの利便的な中央ではなく端の四隅に一基づつ。計四機。中央東側にもう一基建てる所でそれが現れた。
空中に魔方陣が現れる。そして姿を現したのが予想通りの超巨大ロボ、阿修羅ゴリラだ。
一応人型だ。下半身は貧弱だがそこから延びる猫背の上半身が倍くらいはある。そこから左右に三本ずつ、計六本の腕。
顔は三面。言ってしまえば阿修羅。だがそのスケールが狂っている。
全長は猫背で測りようがないが全高は優に俺の五倍。
下半身の腰の部分で二体分、上半身で三体分。
振り上げた腕を入れるとこれも一本三体分くらいの長さだ。
そして手に持つサーベルは俺一体分だ。上側の手に四本。
それに合わせてシノの魔法が炸裂する。魔王城を崩壊させた例の魔法を縦に三撃。ゆっくりと降りてくる阿修羅ゴリラに食らわす。多少揺らいだがまだ健在だ。二撃目は着地した瞬間に四重の魔法が炸裂する。前回はここで大量の魔法使いが中から出てきたが・・・今回は大量の肉塊と血をばら撒いて終わった。
「先手必勝だな。あの皇帝との戦いは参考になった。まだ一撃残っているが取っておくぞ。使うときは言え」
シノに返事を返そうとした時だ、阿修羅ゴリラの顔がこちらに向く。その巨体の突撃を防ぐ術もなく逃げ惑う。相変わらず凄い機動性能だ。六本腕の下二本を地面に着いてのゴリラスタイルだ。この腕が足のようなもので急発進はもとより急旋回も可能にしている。そしてその地面に腕を着くというその行動自体が強力な武器になる。そして勿論上の四本腕のサーベルはそれ以上の破壊力だ。
奴が狙っているのは黒髑髏のシノだ。赤髪を俺の盾に格納していたのは正解だったな。これは流石に守り切れん。全力の一撃なら巨大サーベルの軌道をずらすことも可能だが、それが四本は流石に無理だ。
「シノ。黒髑髏を囮にするぞ」
「やむを得ん。あれが無くなると一重の魔法しか使えんぞ。トドメには心許ないな」
そう言う間に黒髑髏が巨大サーベルの一撃を食らいあっという間に解体されてしまう。
「こんなことなら食らわせておくべきだった。温存などと裏目に出たな」
「仕方ない。これが最終形態かどうかも定かでないからな」
「なんだ。何か策でもあるのか?」
「策というほどではないが試してみたいことがある」
阿修羅ゴリラは他の髑髏を狙いに行ったようだ。奴の狙いは髑髏か。という事は魔法による攻撃は有効だという事だ。そして意外なことが起きた。足ではなく手を滑らせてその巨体が転がる。見た目ではわからないがダメージの蓄積はある様だな。
「アリエス。タウラスを貸してもらえるか?」
その隙をついて俺は奴への準備を進める。
「私は構いませんが、タウラスどうですか?」
「何をさせようっていうんだい? 事と次第によっては君からもらう時間が増えることになるけどいいかな?」
タウラス、ではない黒猫が喋っている。いやこれがタウラスか。
「単にグレートソードになって欲しいだけだ。流石にオーガサイズの鋼鉄のグレートソードは手に余る」
「お安い御用さ。アリエスはどうする?」
「私は私の仕事をします。あれに魔素は効かないでしょうからヒーラーに専念しましょう」
そう言ってアリエスは仮面とシスターフードを取り出す。
「王牙、私はどうする。降りた方がいいか?」
「いや、シノは乗ったままでいてくれ。間違いなく降りたら的だ。奴に見つからないことが先決だな」
「ならばお前と一体化してもいいぞ。その方が安全だろう」
「そこも考えてある。今回はレオとだ。アレを相手に空中戦は何が起こるかわからん。最悪ジャンプを繰り返されて余計に手が付けられなくなるだろう」
それに熱線が効くかどうか。これが効けば上空から熱線爆撃が出来たが、もたついていたら味方の被害も甚大だろう。
俺はインナースペースを解放するとそれをレオと繋げる。インナースペースから出てきたレオが再度俺の中に埋没すると合体が完了する。向こう側でムリエルが驚愕していたな。一言言っておくべきだった。
俺は竜翼を展開する。十二枚。全て使えるな。そして手にはタウラスのグレートソード。その特性で重さはほとんど感じられない。だが攻撃時の重さは感じる。レオとアリエスの模擬戦で実践済みだ。そこにアリエスのバフが加わると俺達は駆けだした。
「アリエス。ついてくるのか?」
「はい。わが父の傍が一番安全でしょうから」
その仮面の下から見える唇が怪しく笑う。その手にはトゲ棍棒が握られている。これは、後方支援をする顔ではないな。
俺は竜翼の先端から加護を放出するとその拒絶反応を使って推力にする。持続性はないが初速はかなり出る。これでだいぶトリッキーな戦い方が出来るな。単純な空中戦では即座に叩き落されるだろう。その俺にアリエスが掴まってくる。魔物のリンクでそれはわかるが本気で着いてくる気か。
既に立ち上がった阿修羅ゴリラは散開した髑髏部隊を追いかけている。見ていると阿修羅ゴリラの右側に魔物の魔法攻撃が、左側は近接が狙っている状態だな。俺は狙いを左腕側に付ける。真後ろから左腕の付け根にタウラスグレートソードを叩き込む。アリエスは俺から降りて魔素回復の胞子と味方の部位回復をしている。敵に密着してのヒーラーか。ある意味この手合いには有効だろうな。下手に間合いを取ると高威力の巨大サーベルが飛んでくる。
流石に俺達を無視という事はないな。四本腕が全てこちらに向いている。俺は竜翼の加護放出でそれらを避けるとその球体関節を狙っていく。しかしこの巨大サーベルは施された武器ではないな。いわば加護の鎧を剣の形にしたものだ。加護で回復できる便利な金属だ。魔物に対して特攻という事はないだろう。まあ、この大きさなら特攻もクソもなく魔物を両断だろうがな。加護の鎧を武器に出来るという視点は新しいな。
アリエスを見ているとこいつも空中戦をしているな。空中に滞留魔素を配置してそれを魔物武器のトゲ棍棒で叩くことで実質足場にしている。人間サイズだからこそできる奴だろうな。オーガでやったら落ちるだろう。そして掠る阿修羅ゴリラの腕を滞留魔素による疑似加護で軽減して滑るようにその腕に取り付く。この前のレオ戦での経験が見事に活かされてるな。加護減衰のトゲ棍棒も効いているようだ。明かにアリエスにヘイトが向いている。
左側の二本の腕がアリエスを狙うと俺とアリエスの目が合う。魔物のリンクを使わなくともわかる。その視線が信用で満ちている。こいつは俺を顎で使う気か。流石は元聖女サマだ。その信用には全力で応えてわからせる必要があるな。
ヘイトが外れた俺は竜翼を全開にすると左腕の付け根へ全力の一撃叩き込む。この球体関節を割れれば腕は落ちるだろう。その思惑通り腕は落ちた。だが腕と球体関節が繋がっていない? その断面は切れたというよりも外れたが正しい。腕の落ちた球体関節は奇麗な球体だ。となればこの腕は加護操作か。
この球体関節はまさかの加護ジェネレーターか? それが腕の分六基だ。これが動力兼可動部。俺達の世界で言えばサーボモーターが動力と電力供給を兼ねている状態だ。これは強いわけだ。これなら胴体内部はスカスカで兵員輸送も可能なわけだ。
その考え事をしていた俺は視線に気づいて寒気がする。阿修羅ゴリラ左の顔がこちらを向いている。その目が輝くと加護ビーム。俺は咄嗟にタウラスグレートソードを盾にして落下し視線を避ける。第二形態というよりも腕が落ちて使わなくなった余剰加護を加護ビームに回した状態か。
「タウラス。無事か」
「ああ。問題ないよ。ただ一瞬ならともかく浴びせ続けられるのはキツイな」
「了解した。キツくなる前に一言くれ」
「まだしばらくは大丈夫だよ。ただ盾に使うのは遠慮して欲しいかな」
「わかった」
やはりタウラスの物理無効でもこれは無効化できないか。右側を見ていると腕は落ちてないが動きが鈍い。やはり魔法攻撃の方が有効の様だな。
「王牙。盾を使うなら私は降りていいぞ」
「いや、そこに居てくれ。こいつらの狙いがお前だという予感めいたものが俺を縛り付けている。別行動は逆に俺の行動に支障が出る。それよりもあの球体関節に魔法を使ってくれないか? アレの加護を減らさないといつまでも健在だ」
「わかった。トドメの一撃分は残すか?」
「いや。ここはもう使い切ろう。これで落ちないなら撤退も考えた方がいいな。ネームドが出るようなら速攻で逃げるぞ」
「わかった」
「タウラス。あれの加護ビーム中にお前を叩きつけるが可能か?」
「可能かと言われれば可能だけど流石にその後は無理だよ」
「ああ。覚悟しておいてくれ。絶対に死ぬなよ」
「王牙。君といると最高に刺激的だね。わかったよ。絶対に死なない。君との約束は守る」
「その後は俺の盾に入ってくれ。俺との時間を何に使うか知らんが俺が逃げ出すような濃厚なの以外なら歓迎だ」
「それは楽しみだな。そのための黒猫の姿でもあるんだ。これなら君でも撫でまわせるだろう?」
確かにな。それは俺も楽しみだな。
10
あなたにおすすめの小説
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる