王牙転生if リブラズファイル

中級中破微小提督

文字の大きさ
1 / 5
第一章 死の小隊

第1話 邂逅

しおりを挟む
 その男は魔物のオーガとして進軍する群れの中で歩いていた。
 巨大な赤い体。まさに赤鬼と呼べるその巨体は優に3メートルを超える。
 上半身は裸だが腰布はある。その体に巻き付けられた鎖には武器が繋がっている。
 その背にはバスタードソード。そして体の各部に予備の武器が仕込まれている。
 その男は裸足で大地を踏み締め進軍する。ただその流れに逆らわず。

「皆さん。進軍したままで聞いてください」
 男の脳に直接声と映像が映る。目や耳という五感から得られる情報ではない。
「これは選ばれたオーガにのみ見えています。あなたは王牙さん。あっていますね?」
 王牙と呼ばれた男は意識だけで頷く。
「私はリブラ。この世界の神です。あなた方の転生を司どっています。そしてあなた方を選抜しました。あなた方には死の髑髏小隊に行ってもらいます。そこで彼女の指示に従ってください」
 リブラと自称する存在は金髪金目でエルフのような尖った耳をしている。それにニット帽と普段着と思われる服装だ。およそ神と呼べるような風貌ではない。

「それに逆らったらどうなるってんだ? 神様よぉ」
 隣に居た緑のオーガが悪態をつく。彼にもこれが見えているのだろう。
「そうですね。あなたはリンキンさんですね。お答えします。私は転生を司どっています。あなたが死んだらゴブリンに転生させてあげましょう! そこで思考も感情もなくしてただ突撃するだけの生き方をプレゼントします!」
 リブラは映像の中で両手を上げさもいい事の様に宣言する。
「なんだと・・・!?」
 反抗しようとしたリンキンの頭蓋が吹き飛ぶ。これは天上からの攻撃だろうか。その角度から王牙はそう判断する。
 にわかにざわめきだす魔物達。そこに地面が盛り上がるようにして一匹の魔物が生まれる。緑の体に突き出た腹、小柄で醜いその姿は正にゴブリンだった。
「こ、え、あ、がぁぁぁ!!!」
 そのゴブリンが苦しそうに喉を抑える。
「はい。言葉は使えません。思考も感情も失っていくでしょう? どうですか私のプレゼントは。皆さん気に入って私の指示に従ってくれます。あなたもそうでしょう? リンキンさん」
 リブラの言葉にゴブリンが喉を抑え地面にのたうち回り涙を流す。
「あまり喜ばれていないようですね。では王牙さん。リンキンさんを一度死なせてください。私の・・・」
 王牙はリブラの言葉が終わる前にゴブリンの首を斬り飛ばす。あまりにも早い抜刀に騒がしかった周りの魔物が黙り込む。
 そしてまた地面から巨体が生まれる。緑色だがオーガよりも一回り小さい。
「流石ですね。王牙さん。流石私が選別しただけの事はあります。リンキンさん。あなたも王牙さんを見習って私に協力してくださいますか?」
 苦しそうに喉を抑えるリンキンだったがそれは単に先の感覚が残っているからだろう。
「はい。了承しました。わかっていただけで私も嬉しいです。あなた方は神であるこの私が選別したのです。わかっていただけると信じていました」
 リンキンと呼ばれた小柄な緑オーガは顔を俯かせ歩き出す。この脳内での会話で返答したのだろう。

「では点呼を始めます。呼ばれたら手を上げてください。その手を挙げたオーガがあなた達の仲間です。まずは、赤鬼の王牙さん」
 王牙が手を上げる。
「次は緑鬼のリンキンさん」
 先程の小柄な緑鬼が手を上げながら王牙を睨みつける。
「次は青鬼のタウラスさん」
 オーガにしては細身の青鬼が王牙にウインクしながら手を上げる。
「次は白鬼のスコルピィさん」
 無口だが装飾の多い白鬼が手を上げる。特に仲間には興味はなさそうだ。
「最後は黒鬼のマカツさん」
 顔に骨が浮いた明らかに異質な黒鬼が手を上げる。ぶしつけに手をあげたオーガ達を値踏みしているようだ。
「はい。あなたがた五人がこれから死の髑髏の小隊に配属です。現地に着く前に顔見せです。それまで仲良くしてくださいね」

「おい。赤鬼野郎。さっきは良くも俺を殺してくれたな」
 リブラの会話が終わると真っ先に緑鬼のリンキンが王牙に絡んでくる。
「背中には気を付けておけよ。邪魔なら真っ先に殺すからな」
 「だったら君はあのまま苦しみたかったのかい? リンキン。王牙は君を助けてくれたんだ。それもわからないのかい?」
 王牙に凄むリンキンを止めたのは青鬼のタウラスだ。そのまま王牙の方に腕を乗せる。
「そうだろう王牙。君からは優しさを感じるよ。僕にもその優しさを分けて欲しいくらいだ」
 そっと王牙の体を撫でるタウラスにリンキンが嫌悪を示す。
「げぇ! なんだお前。タウラスとか言ったな。そっちかよ! 俺の所には来るなよな!」
「リンキン。君って奴は自意識過剰だよ。僕も君はお断りだ。選ぶ権利は僕にあるんだ。そうだよね。王牙」
 王牙はタウラスを軽くかわすとリンキンを見つめる。
「俺は、見ていられなかったからな。リンキン。あれはそんなに苦しかったのか?」
 その真っすぐな視線に居心地が悪そうなリンキンだったが渋々というように口を開いた。
「・・・ああ。かなりな。魂が消えてなくなりそうだったぜ。あのままだったら、ああ、放置された方がヤバかったぜ」
「ならばよかった。お前が消えそうに見えたからな。リンキン」
 王牙の返しを聞いてリンキンは照れ臭そうに頭を掻いた。
「なんだ。アンタ良い奴だな。もっとヤバい奴だと思ったぜ旦那。正直そこの黒いのよりな」
 リンキンが声を掛けると黒鬼のマカツがこちらに来る。
「俺がヤバい奴ってのは当たりだな。俺と組んで生きていた奴は居ない。皆死んでゴブリン送りさ。まさかの戦う前にゴブリン落ちが出たのは初めてだけどな」
 見た目の風貌に見合わず軽い感じの話し方をするマカツ。だがそれでも滲み出る威圧感にリンキンは身震いする。
「俺がゴブリンに落ちたのはあんたの影響かよマカツ。幸先が悪ぃな。戦えるのはアンタと旦那。俺とナヨナヨはそこまでじゃねぇ。そこの白いのはどうなんだ?」
 リンキンが先程からこちらに関心のない白鬼のスコルピィに話しかける。
「・・・俺はどうでもいい。俺は死ねない。このまま生き延びて、人間への転生権を得るんだ。それ以外はどうでもいい。アンタラがそれに見合わなけりゃ俺は見捨てる。それだけだ」
「めっちゃ喋ってんじゃねぇか! お前はそういう奴か。だったら俺達と仲良くしとけよスコルピィ。成果がなけりゃ生き延びても意味ねぇだろ」
「そういうのが一番ムカつくんだよな緑鬼野郎。だったらお前は何しにここに来たんだ。目的もねぇ奴が俺を語るんじゃねぇ」
 今まで無反応だったスコルピィがリンキンに詰め寄る。
「・・・確かに何もねぇな」
「・・・だったら仲良しごっこは止めろ。成果がだせねぇならリンキン。お前こそ背中に気を付けるんだな」
 そしてスコルピィは黙って歩く。

 その重苦しい空気を壊したのは王牙だった。
「人間への転生権というのはなんだ?」
「旦那は知らねぇのか? さっきの転生の神リブラに認められれば人間に転生可能って事だ。まあ、目的があるってだけでもいいものかもな」
「なるほどな。俺はここに来たばかりでな。魔物に関しては無知だ。教えてもらえるか?」
「ウッソダロ旦那。アンタが一番の歴戦の魔物に見えてたぜ」
「王牙。だったら僕が教えてあげるよ。二人っきりで」
「タウラス。悪いが俺はノーマルだ。他所を当たってくれ。リンキン頼めるか?」
「いや構わねぇけどよ。はー。一体アンタどこから来たんだよ。転生直後でここまで落ち着いてる奴なんて初めて見たぜ」
 それを見ていたマカツが会話に加わる。
「俺から見ても意外だな王牙。まさか戦えないなんて言わないよな?」
「安心しろマカツ。そっちは問題ない。一戦するか?」
 王牙が背のバスタードソードに手を掛ける。
「いいな。一度知っておきたい。結局俺達は言葉よりもこっちだな」
 マカツの返答に王牙の顔が凄みを帯びた笑い顔に変わる。
「旦那。アンタ、本当に名前通りのオーガ野郎だな」
 リンキンの呆れ声を合図に王牙とマカツが進軍から外れ切り合いながら前進していく。

「僕達はあの二人に付き合うのか。リンキン、君もあれくらい強いのかい?」
「馬鹿言うなよ。なんで俺がこんな死地に送られなきゃいけねぇんだ」
「だよねぇ」

 王牙達は聖王都に向かう。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト
ファンタジー
魔物の襲撃で滅んだベルタ王国。 襲撃から生き延びたベルタ王国の姫カリーナが選んだ祖国再興の手段は、「なんでも屋」の開業だった! 旅の途中で出会った、ギャンブル狂いの元騎士の盗賊、人語を話すオーク、龍人族の剣士という一癖も二癖もある野郎共を従えて、亡国の姫による祖国再建の物語が始まる。 「報酬は、国一つ分くらい弾んでもらうわよ?」 カリーナは今日も依頼に奔走する。 完結まで書き切っています。 カクヨム様でも投稿しております。    

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...