王牙転生if リブラズファイル

中級中破微小提督

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第一章 死の小隊

第4話 髑髏

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 王牙とシノが神殿の奥に進むと剣戟の音が聞こえる。
 そこには聖剣と戦うマカツたちの姿が見えた。
「状況はどうなっている!」
 シノが怒鳴る。
「聖剣が暴れ出しやがった! 持ち主が死んだらこうだぜ! コイツは強さに比べて成果が少なそうだな!」
 聖剣の相手をしながらスコルピィが答える。防戦ではあるがまだ余裕がありそうだ。
「シノ! コイツをどうしたら止められる! 魔素キャンセラーはもう止まったみたいだぜ!」
 マカツはスコルピィの反対側。聖剣を挟み撃ちにしている状態だ。
 その状況にシノは戸惑っている。
「なぜこんなことになっている。聖剣が宙に浮いて攻撃してくるなど聞いてはいないぞ。持ち主が居れば止まるという話だ!」
 そこに戦う二人を援護しているタウラスが口をはさむ。
「ということは持ち主を捕まえておかなきゃって事かい? それはもう遅いよ。人間は一人も生きていない。まさか人間を連れてきて持ち主になってくださいっていうのかい?」

 シノは考え込む。
「お前達。聖剣を欲しい奴は居ないか。王牙、お前はどうだ?」
「俺は間に合っている。俺の相棒はコイツだけだ。何の変哲もない手入れをした上質な武器。聖剣などお断りだ」

「スコルピィはどうだ? 成果を稼ぐなら理想的な武器だ」
「俺もこいつが手に馴染んでる。そんなもんを使いこなす前に俺は人間に転生済みだ。いらねぇ」

「ではマカツ。お前は?」
「しょうがねぇな。じゃあ俺が手に入れてやるよ。武器コレクションは嫌いじゃねぇ。そんで、どうする? 柄を握るにも小さすぎるぜ。・・・シノ、アンタが手にするのが一番じゃねぇのか?」

「私か。それが一番安全か」
 ちらとシノがタウラスの方を見る。
「聖剣が欲しい魔物なんていないよ。誰が好き好んでそんな危険物を背負いたいのさ」

「その通りだな。わかった! 取り合えず痛めつけろ! 動きが止まれば私が手にする!」

「だったら俺に任せてくれ。剣筋が見えて来た」
 王牙が前に出るとスコルピィとマカツが下がる。
 王牙の体が一瞬陽炎の様に揺らめくと標的を探そうとした聖剣が地に堕ちる。起き上がるような動きをする聖剣に間髪入れず攻撃を叩き込む王牙。
 聖剣の刀身の腹に左右に三撃づつ、交互に五撃、そしてその刃に突きを入れると聖剣の刀身が突きを中心としてくの字に曲がる。そして自身の剣の柄頭で聖剣の柄頭を叩きつけ地面に突き刺す。
「シノ!」
 そのまま地面に押さえつけられた聖剣にシノが手を伸ばす。

 聖剣を中心に風が吹く。その風がシノの髪を揺らし、死の小隊に吹き荒れる。

「これは、この映像はなんだ?」
 最初に口を開いたのはシノだった。聖剣の柄を握ったまま自身が膝をついていたことに気付く。
「俺にも何か見えたぜ。よくわからねぇが風の記憶か?」
 スコルピィが続くとマカツも放心から元に戻る。
「ああ。熱い風の記憶。コイツは・・・?」
「僕にも感じたよ。暗い星の風。どこか懐かしい。風の記憶だね」
 タウラスは目を閉じ元の放心状態を懐かしむ。
「そうだな。風の記憶。世界の風の流れだ」
 シノも目を閉じその感触をもう一度反芻しているようだった。

「もう離しても大丈夫か?」
 王牙の一言で死の小隊は目を覚ました。
「ああ。そうだな。剣をどけてくれ。もう大丈夫だ。聖剣は制圧した」

ーーー

「おおーい! 助けてくれぇ!!!」
 死の小隊が息をつく暇もなくリンキンの声が響き渡たる。
「助けを求める時はこっちに来る。こういう事だね」
 タウラスが納得したように頷く。
「そうだな、それにしてもアイツずっと追いかけられてたのかよ。ま。お陰でこっちは助かったけどな」
 マカツが剣を抜く。
「いや、でかしたぜ。リンキン。あんな成果に繋がらねぇ聖剣なんぞよりこっちに居ればよかったぜ」
 舌なめずりのスコルピィが駆けだそうとする。
「だが気配を消せる精鋭だ。手強いぞ」
 王牙が相棒の握りを確かめる。

「そんなお前たちに朗報だ! 見ていろ!」
 シノが聖剣を敵に向けると感じられなかった人間の気配が戻る。
「いわば神の力キャンセラーだ。フハハハ! 丸見えではないか! 奴ら気付いてないぞ! 今のうちに畳んでしまえ!」

 シノの声にバネの様に弾かれ飛び出す王牙。その一閃が精鋭を貫く。
「王牙テメェ抜け駆けすんじゃねぇ!!!」
 スコルピィの怒号が続く。
 確かに精鋭ではあったが、捉えられる相手に死の小隊が後れを取る筈もなく。
 神殿の制圧は速やかに終了した。

ーーー

 その後、死の小隊は神殿内での残敵掃討をしていた。
 あらかた片付いた所でリンキンが口を開く。
「なぁ、姉御。あの髑髏のことを聞いてもいいか?」
「どうした。あれは私ではないぞ。気にするな」
「無理いうな! あの髑髏の姉御は帰ってくるのか?」
 シノの顔色が変わる。
「お前、話したのか」
「ん? ああ。いや、赤髪の姉御は知ってるかのかと思って聞いてみたんだが違うみてぇだな。やっぱり髑髏の姉御は別物か」
「・・・何を聞いた」
 それを聞いたシノの目が鋭くなる。それに気づいたリンキンは慌て気味で返す。
「いや何も聞いてないぜ。自分は捨て駒だから手伝えってな。ちゃんと転生も確認したぜ。次に会っても記憶はないって話ぐらいだぜ。俺が聞いたのは」
 リンキンの言葉を聞いてシノはいつもの状態に戻る。
「・・・そうか。確かにその通りだ。次の戦闘ではまた会えるが今回の事は憶えていないだろうな。だがそれがどうした?」
「いや、流石にあの捨て方はな。俺は最初、旦那が本当に姉御を見捨てて逃げ出したかと思ったぜ」
 言い辛そうにするリンキンに王牙が答える。
「ああ、そう見える様にした。それが奴の願いだった。あそこで逡巡していては奴の最後を穢す事になる。別れを告げる暇は必要ないだろう」
「そういう話じゃねぇよ。それにして捨て方があっただろうって話だぜ旦那」
 戸惑いの表情を見せる王牙に助け舟を出したのはマカツだった。
「おい流石にそりゃ酷だろ。聞いてた限りじゃ髑髏を囮にしたって感じだろ。それもその髑髏は望んで、だ。好き好んでやってるようにも見えねぇ。下手すりゃお前らがここに居なかったかもしれねぇんだろ? 上々じゃねぇか」
「いや、いくら覚悟が決まっててもよ。それでもよ」
 なおも渋るリンキンにスコルピィが食って掛かる。
「ごちゃごちゃとうるせぇな。だったらお前がその髑髏を担いでここまで走ればいいじゃねぇか。さっきの奴らを相手にそれが出来たんならな」
 流石に黙るリンキン。それまで黙っていた王牙が口を開く。
「リンキン。髑髏と最後に何を話した?」
 言い辛そうにしていたリンキンだが、それでもそれを言葉にした。
「・・・もしも自分が生き残っていたら止めを刺してくれってな。その必要はなかったけどな。それでもな。転生するっていってもな。やり切れねぇよ」
 リンキンの言葉に納得したように王牙が即答する。
「そうか。助けたかった。それが本音だな?」
「・・・ああ。そうかもな。俺じゃできなかった。もし俺が旦那だったら何かできたんじゃねぇかってな」
 スコルピィが何かを言いかけたが王牙の視線で黙る。その喉まで出かけた言葉は悪態だろう。そして王牙が言葉をつづる。
「リンキン。もし俺が完全に本気を出して戦っていれば髑髏のシノを助けられたかもしれん。だがそれはあまりにも危険な賭けだった。今のこの結果を手にすることが出来なかったかもしれん。俺が取れた最善の選択肢に髑髏を救ってここまでくるという未来はなかった。だから選択した。今の結果を、だ。これが今の俺の限界だ」
 その真摯な答えをリンキンは受け止めた。
「悪ぃ、旦那。わかってるんだ。わかってる。全部わかってるんだ。俺が夢見てぇな事言ってんのは。はー。切り替えねぇとだな。ちょっとばかし上手くいって欲が出ちまったな」
 リンキンはいつもの飄々とした態度に戻る。それに王牙が応える。
「欲はあって当然だ。リンキン、今のお前の言葉で思い知った。今の俺は強さが足りていない。あの状況であの連中を皆殺しに出来る強さが今の俺にはない。次の目標が出来たな」
 何の事もない当たり前に様に語る王牙にリンキンも唖然とする。その代わりに答えたのはマカツだった。
「お前がこれ以上強くなってどうするんだ。出来ねぇことは諦めろ。髑髏を捨てたお前の選択は間違ってねぇ。それとも次は出来もしねぇ選択で死にに行くのか?」
「そうだぜ旦那。気持ちはありがたいけどよ。旦那が危険じゃ意味ねぇよ」
 止めようとする二人に王牙は不敵な笑みで答える。
「いや、今回の戦いで奴らの殺し方はわかった。次に出た時は皆殺しだ。今回のような選択肢は必要ない」
 とうとうマカツまで唖然とした表情になる。そこに言葉を挟めたのはタウラスぐらいだろう。
「ゾクゾクするよ王牙。やっぱり君は僕の理想だ。いつでも君と褥を共にしたいよ」
 そこにシノの笑い声が響く。
「ハハハハハ! 退屈しない連中だ! これからも期待するぞ王牙! それにリンキン。最期を看取ってくれて感謝するぞ。あれも私の一部だ。孤独の中で逝かなかったのは僥倖だ。ありがとうな」
 シノの言葉にようやく顔が明るくなるリンキン。
 それを見てスコルピィが愚痴る。
「・・・付き合ってらねぇ」

 そして掃討が終わり神殿の外にでる死の小隊。
 もう戦いは魔物の勝利で集結しつつあった。
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