王牙転生Ⅱ~神亡き世界で流れる様に剣を振るう~

中級中破微小提督

文字の大きさ
3 / 6
第九部

第九十九章 集合写真(一期と重複)

しおりを挟む
 ここはいつもの聖王都の北の街。
 人間が集結しつつある結界の塔への攻勢を見据えて準備が進められていた。
 そんな中ムリエルに呼び出された俺達は街を背にした郊外に集まろうとしていた。

「ジンバよ。人間形態で噛みつくのはどうかと思うぞ」
 いち早く着いた俺とジンバは積み上げられた資材の上に腰掛けていた。
 そこで人間形態のジンバが俺の左手の指に噛み付いて、足もばたつかせている。馬形態の時は俺の頭に噛み付いてのしかかりながら前足を俺にぶつけていたからだ。その名残だろう。
「申し訳ありません。こうしてないと落ち着かなくて。王牙様。いつものようにわたくしを撫でまわして欲しいのですが」
 それは馬形態の時の話だろうが。誤解を生みそうな表現だな。そして誤解を生む輩が現れた。
「王牙。君って奴は僕を差し置いて浮気かい?」
 タウラスだ。いつもの黒い長髪と黒い肌の人間形態だ。それが黒猫に変化して俺の膝に乗ってくる。
「ジンバには負けられないね。さあ。僕の物理無効の毛皮だよ。存分に堪能してくれ」
 俺はその言葉通りに指の腹で黒猫になったタウラスを撫でまわす。俺の指が噛めなくなったジンバがスカートを馬体に変えると上半身はそのままにケンタウロス形態で俺の上にのしかかって頭を噛んでくる。
「タウラス。ズルいですよ」
 そこに現れたのはシスタースタイルのアリエスだ。黒猫になったタウラスを抱き上げると代わりに俺の膝に座る。身を預けてくるアリエスの頭を撫でる。
「アリエスだけズルい! 私もいいよね! ダンナ!」
 その反対側の膝に座ったのはリンセスだ。青い髪と金の瞳に尖ったエルフ耳が見える。息子たちと一緒にここに来ているのだろう。いつも大変だなと頭を撫でる。
「旦那、モテモテだな」
 リンセスの夫であるゴブリン種のリンキンもいる。リンセスの乗った左膝の外側の資材に座る。
「モテると言っても娘と動物だけだがな」
「違ぇねぇw オニアック教の旦那像は柔らかい素材で作らねぇといけねぇな」
 そこに白衣を着た桃色女型オーガのパルテがやってくる。
「な~に~。何の話さね。王牙っちの銅像でも建てるって話?」
「ああ。旦那のゾディアック命名から取って鬼の教祖のオニアック教だ。この名を貰って旦那の膝に座ると愛が成就するっていうありがたーい二人掛け王牙像さ。全然浸透してねぇけどな」
 それで納得したパルテが右膝の外に陣取る。
「あー。もうみんな集まってるじゃない。じゃあ私はお姉ちゃんとお兄さんの間で。ジンバ君。一緒に写ろ」
 銀髪のレオニスがリンセスと一緒に左膝に座る。それに抱き着くジンバ。
「もう満員ではないか。しょうがない私は後ろに行くか」
 赤髪のシノが俺の右肩にしなだれかかる。
「これは俺の入る場所がねぇな赤鬼野郎」
「スコルピィ。私の後ろが空いてるよ」
「ああ。今行くぜ。ただ二人掛け王牙像の恩恵が受けたかったがな」
 撫で髪モヒカンゴブリン種のスコルピィが俺の左肩でレオニスの肩に手を掛ける。
「皆そろっておるな。ではポラロイドカメラを設置するのじゃ」
 最後にやってきたムリエルがポラロイドカメラを空中に浮かべる。そして中央。俺の目の前に座る。
「さあ準備はいいかの? それでは行くのじゃ!」
「「「カニ!」」」
 全員でピースポーズをする。その後も何枚か撮り終えると撮影は終了した。

 ムリエルが世界の改変で写真をコピーしてるのを見て、俺が同じく世界の改変でラミネート加工する。
「珍しいの。汝がこういう事に関わるのは」
「フラグに関係なく、こういうものにも慣れていきたくてな。一セット余分に持って行ってもいいか? 飾っておきたい場所がある。神の代弁者の部屋にな」
「汝も不思議な男じゃな。お主がここまでこの世界を動かすとは思っておらなかったのじゃ。よいぞ。持っていけ。お主のためなら何枚でも刷ってやるぞ」
「ありがたい。こういう事はこれからも増えていくだろう。その時も頼む」
「・・・なんじゃ。お主、自分にフラグが立ったとは思っておらんじゃろうな?」
「俺はいつでもそう思っている。その捉え方が変わっただけだ。フラグがいつ起動しても良い様にな。勿論そうはさせないが」
「そうだ。お前の呪いは私が解いた。これからはなんにでも祝福するがいい。私が共に居る」
 シノだ。いつも助けられるな。
「ああ。もうフラグに怯えるには数が多すぎる。気にしても始まらないからな。その全てを破壊するまでだ。その根源をな」
「まったくお前という奴は。それをするまでもないと言っているんだ。私達はもう私達だけではないのだぞ」
 そうだな。この賑やかな空間で俺はそれを実感する。
 俺はいつの間にか一人ではない。今はそれが心地よい。
 今はそれでいい。この命が続く限りはそれでいい。
 俺の転生はまだ始まったばかりだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...