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紛れ込んだΩ3
(生徒会に、俺のことを知っている奴がいる)
雪弥はそう確信せざるを得なかった。
文化祭の日に資料室で休んでいたときのことを思い返す。
(そもそも、秀人には見抜かれている)
夢うつつに耳にしたことは、記憶の底に沈んでいたが、秀人は確かに雪弥からΩの匂いがし、発情しかけている、と言っていた。
(秀人は俺がΩだと見抜いている。その可能性は高い。しかし、他のメンバーはどうだ)
発熱で意識が朦朧としており記憶が曖昧だが、生徒会メンバーの幾人かが生徒会室にいた。
その生徒たちの真横を通り過ぎたときに、匂いに気付かれたのか。
静まり返るグループトーク。それが暗に示すこと。
誰もが話題に出来ないだけではないのか。
(どうして?)
考えられることは一つしかない。
(俺がΩかもしれない、と彼らが疑っているからだ)
最初にΩに関して話題に持ち出した生徒会メンバーはその日、いなかったのだ。だから無邪気に話題に持ち出した。
だが、ほかのメンバーは触れてはいけない話題だと感づいている。
(俺の前では触れられないのだ)
そして、その無邪気だった役員も黙り込み始めたことを思えば、個人的なやり取りで、雪弥のことが噂されているとみたほうがいい。
「藤堂先輩がΩかもしれないってさ」
「そんなはずないっしょ」
「でも、匂ったんだってば」
「そのとき、秀人会長も神妙な顔をしてたし」
誰もその話題を広げることがないことで、その噂は信憑性を増すだろう。
そして、あの「ヤマダ」は。
(あえて話題にしている。俺を追放したがっている?)
雪弥から血の気が引いていく。
(あのメッセージは俺への宣戦布告だ)
これといって波乱はなく日々は過ぎる。しかし、静かに何かが進行していた。
雪弥を見ると声を潜める生徒らに、不安に陥る。
(あいつら俺のことを噂しているのか、俺がΩだと)
これまでも雪弥はそうした生徒らを見てきた。雪弥は目立つ存在として常に噂される立場にいる。大抵が好意的な噂で、陰口なら生徒らはその場を逃げるように立ち去る。
その場を去らないで、恥ずかしそうに顔を赤らめているのを見れば、悪い噂ではないはずだ。それでも、不安になる。
(もしも俺がΩだとわかってしまえば)
雪弥を憧れの目で見ていたものたちの視線は変わるに違いない。侮蔑へや嘲りへと。
雪弥は注目を受けるのが苦痛になっていた。天陽の後ろに隠れるようにして歩くようになり、教室での発言も減り、口数も減っていく。
(これまで俺の積み上げてきたものは何だったのだろうか)
六年間、学年トップの成績を維持してきて、生徒会長として学園内外で活躍し、名実ともに学園の覇者として崇められてきた。
もちろん、それは努力あってのことだ。淡々と日々を積み重ねてきた。
(そんな俺が学校を追い出されることに怯えているなんて)
学園は雪弥が主人公の舞台のようなものだった。
合唱では指揮をし、体育祭では団長をしてきた。両親が見に来ることはなかったが、中2のときには母方の祖母が行事を見に来たこともあった。
祖母の誇らしげな顔を思い出すと苦しくなる。
(おばあちゃま、俺、こんなになっちゃったよ)
今は他界した祖母と最後に撮った写真を眺める。もう4年前のものだ。
微笑んでいる祖母。家に居場所を無くしていく雪弥を祖母はいつも温かく出迎えてくれていた。
祖母の隣に写っているのは、意気揚々とした雪弥だった。未来に期待しか抱いていない、そんな雪弥。
(俺、放校されるかもしれない。そしたら)
雪弥は喉の奥に苦いものが込み上げるのを感じた。
(そしたら俺に未来はない)
雪弥はそう確信せざるを得なかった。
文化祭の日に資料室で休んでいたときのことを思い返す。
(そもそも、秀人には見抜かれている)
夢うつつに耳にしたことは、記憶の底に沈んでいたが、秀人は確かに雪弥からΩの匂いがし、発情しかけている、と言っていた。
(秀人は俺がΩだと見抜いている。その可能性は高い。しかし、他のメンバーはどうだ)
発熱で意識が朦朧としており記憶が曖昧だが、生徒会メンバーの幾人かが生徒会室にいた。
その生徒たちの真横を通り過ぎたときに、匂いに気付かれたのか。
静まり返るグループトーク。それが暗に示すこと。
誰もが話題に出来ないだけではないのか。
(どうして?)
考えられることは一つしかない。
(俺がΩかもしれない、と彼らが疑っているからだ)
最初にΩに関して話題に持ち出した生徒会メンバーはその日、いなかったのだ。だから無邪気に話題に持ち出した。
だが、ほかのメンバーは触れてはいけない話題だと感づいている。
(俺の前では触れられないのだ)
そして、その無邪気だった役員も黙り込み始めたことを思えば、個人的なやり取りで、雪弥のことが噂されているとみたほうがいい。
「藤堂先輩がΩかもしれないってさ」
「そんなはずないっしょ」
「でも、匂ったんだってば」
「そのとき、秀人会長も神妙な顔をしてたし」
誰もその話題を広げることがないことで、その噂は信憑性を増すだろう。
そして、あの「ヤマダ」は。
(あえて話題にしている。俺を追放したがっている?)
雪弥から血の気が引いていく。
(あのメッセージは俺への宣戦布告だ)
これといって波乱はなく日々は過ぎる。しかし、静かに何かが進行していた。
雪弥を見ると声を潜める生徒らに、不安に陥る。
(あいつら俺のことを噂しているのか、俺がΩだと)
これまでも雪弥はそうした生徒らを見てきた。雪弥は目立つ存在として常に噂される立場にいる。大抵が好意的な噂で、陰口なら生徒らはその場を逃げるように立ち去る。
その場を去らないで、恥ずかしそうに顔を赤らめているのを見れば、悪い噂ではないはずだ。それでも、不安になる。
(もしも俺がΩだとわかってしまえば)
雪弥を憧れの目で見ていたものたちの視線は変わるに違いない。侮蔑へや嘲りへと。
雪弥は注目を受けるのが苦痛になっていた。天陽の後ろに隠れるようにして歩くようになり、教室での発言も減り、口数も減っていく。
(これまで俺の積み上げてきたものは何だったのだろうか)
六年間、学年トップの成績を維持してきて、生徒会長として学園内外で活躍し、名実ともに学園の覇者として崇められてきた。
もちろん、それは努力あってのことだ。淡々と日々を積み重ねてきた。
(そんな俺が学校を追い出されることに怯えているなんて)
学園は雪弥が主人公の舞台のようなものだった。
合唱では指揮をし、体育祭では団長をしてきた。両親が見に来ることはなかったが、中2のときには母方の祖母が行事を見に来たこともあった。
祖母の誇らしげな顔を思い出すと苦しくなる。
(おばあちゃま、俺、こんなになっちゃったよ)
今は他界した祖母と最後に撮った写真を眺める。もう4年前のものだ。
微笑んでいる祖母。家に居場所を無くしていく雪弥を祖母はいつも温かく出迎えてくれていた。
祖母の隣に写っているのは、意気揚々とした雪弥だった。未来に期待しか抱いていない、そんな雪弥。
(俺、放校されるかもしれない。そしたら)
雪弥は喉の奥に苦いものが込み上げるのを感じた。
(そしたら俺に未来はない)
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