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Ωの人生2
雪弥のアメリカに行くという希望の灯は消えてしまったが、天陽の番として、このまま過ごすことができる。
ただし、ペットとして――。
天陽ほどの資産家一族ならありえることだった。
天陽にとってはΩは迷惑な存在ではなく、所有して愛でる生き物なのだ。だからΩに対して寛容なのだ。
(だから、天陽は俺のことも簡単に番にできたりするわけだ)
天陽にとって、番を作ることなど大したことではなかった。
天陽の兄は挨拶代わりに番にならないかと言ってきた。その程度のことだった。
イヌやネコを伴侶にするのはおかしいことだが、ペットとして飼うのは何らおかしなことではない。特に資産家なら何人番がいても何の問題ない。
そういえば、雪弥を担ぎ上げて嬉しそうにしていた天陽の姿は、子どもが欲しいおもちゃをもらえて喜ぶのにも似ていた。
天陽と雪弥は見えている世界が全く違っていた。それだけだ。
(これがΩ、Ωということだ)
天陽の声が聞こえた。ハッと身構える。
「雪弥、探した。クソ兄貴に会ったでしょ。クソなこと言われなかった?」
濡れている頬に気付いて天陽が顔を覗き込んでくる。
「雪弥、どうした?」
思わず顔を背けようとして、自分の立場を思い知る。
(俺は弱い、天陽なしでは生きていけない、非力で弱いんだ。天陽に捨てられたら生きていけない)
雪弥は天陽にすり寄って笑いかけた。
天陽の兄の番たちも必死で媚びを売っているのだ。最初の番のような目に遭いたくない。彼らは生き残るために必死なのだ。ひたすらαのご機嫌を取る哀れなΩ。それは雪弥自身だ。
(俺も必死だ)
それでも、天陽の伸びやかな顔をみれば、変わらずに込み上げる想いがある。
(天陽が、好きだ)
雪弥は涙にまみれた目で天陽を見つめた。
(好きだと自覚して、優しくされて舞い上がって、勘違いしてた)
雪弥の目から涙があふれ出るのを見て、天陽が殺気立つ。
「クソ兄貴に何か嫌なこと言われた? 言って? あいつぶっ殺してやる!」
雪弥は横に首を振る。
「何も言われてない」
「ほんと?」
「うん、いろいろあったの思い出しただけ」
天陽に精一杯、笑いかけた。天陽は心配そうな目をしていたが、すぐに雪弥を抱きしめてきた。
「雪弥、俺たち幸せになろうな?」
雪弥は声が出なかった。
かわりに、雪弥は天陽に甘えるように肩に頬を擦り付けてみせた。
(俺の思う幸せとは違ってた。でもそれでいい。そっちのほうがいいんだ。俺はΩなんだから。天陽の邪魔にはなりたくはない)
雪弥は天陽の人生の邪魔をできるほどの存在ではなかった。
そんなのは最初から要らぬ心配だった。
(これでいいんだ。これでよかった。安心して天陽の番になれる)
天陽は優しい目を向けてくる。
「俺、ちょっと親父と話があるんだ。俺の部屋で待っててくれる?」
(天陽、残酷すぎるぞ。本当に愛する人と愛し合う部屋に俺を入れるなんて。ペットはちゃんと躾なきゃ)
雪弥は涙をぽろぽろこぼしながら首を横に振った。
「俺、帰る……、帰りたい……。寮に帰りたい……。お願いだ、帰りたい………。寮に帰りたい………」
天陽と二人だけで過ごしてきた安全な場所に帰りたい。
雪弥の様子に、天陽はそれ以上引き留めることはなかった。
「わかった、じゃあ送らせる」
雪弥は天陽に見送られて自家用車に乗った。打ちひしがれて手を振る気力もなかった。
けれども天陽のそばにいるために、捨てられないために、天陽に向けて精一杯笑いかけて手を振るしかなかった。
ただし、ペットとして――。
天陽ほどの資産家一族ならありえることだった。
天陽にとってはΩは迷惑な存在ではなく、所有して愛でる生き物なのだ。だからΩに対して寛容なのだ。
(だから、天陽は俺のことも簡単に番にできたりするわけだ)
天陽にとって、番を作ることなど大したことではなかった。
天陽の兄は挨拶代わりに番にならないかと言ってきた。その程度のことだった。
イヌやネコを伴侶にするのはおかしいことだが、ペットとして飼うのは何らおかしなことではない。特に資産家なら何人番がいても何の問題ない。
そういえば、雪弥を担ぎ上げて嬉しそうにしていた天陽の姿は、子どもが欲しいおもちゃをもらえて喜ぶのにも似ていた。
天陽と雪弥は見えている世界が全く違っていた。それだけだ。
(これがΩ、Ωということだ)
天陽の声が聞こえた。ハッと身構える。
「雪弥、探した。クソ兄貴に会ったでしょ。クソなこと言われなかった?」
濡れている頬に気付いて天陽が顔を覗き込んでくる。
「雪弥、どうした?」
思わず顔を背けようとして、自分の立場を思い知る。
(俺は弱い、天陽なしでは生きていけない、非力で弱いんだ。天陽に捨てられたら生きていけない)
雪弥は天陽にすり寄って笑いかけた。
天陽の兄の番たちも必死で媚びを売っているのだ。最初の番のような目に遭いたくない。彼らは生き残るために必死なのだ。ひたすらαのご機嫌を取る哀れなΩ。それは雪弥自身だ。
(俺も必死だ)
それでも、天陽の伸びやかな顔をみれば、変わらずに込み上げる想いがある。
(天陽が、好きだ)
雪弥は涙にまみれた目で天陽を見つめた。
(好きだと自覚して、優しくされて舞い上がって、勘違いしてた)
雪弥の目から涙があふれ出るのを見て、天陽が殺気立つ。
「クソ兄貴に何か嫌なこと言われた? 言って? あいつぶっ殺してやる!」
雪弥は横に首を振る。
「何も言われてない」
「ほんと?」
「うん、いろいろあったの思い出しただけ」
天陽に精一杯、笑いかけた。天陽は心配そうな目をしていたが、すぐに雪弥を抱きしめてきた。
「雪弥、俺たち幸せになろうな?」
雪弥は声が出なかった。
かわりに、雪弥は天陽に甘えるように肩に頬を擦り付けてみせた。
(俺の思う幸せとは違ってた。でもそれでいい。そっちのほうがいいんだ。俺はΩなんだから。天陽の邪魔にはなりたくはない)
雪弥は天陽の人生の邪魔をできるほどの存在ではなかった。
そんなのは最初から要らぬ心配だった。
(これでいいんだ。これでよかった。安心して天陽の番になれる)
天陽は優しい目を向けてくる。
「俺、ちょっと親父と話があるんだ。俺の部屋で待っててくれる?」
(天陽、残酷すぎるぞ。本当に愛する人と愛し合う部屋に俺を入れるなんて。ペットはちゃんと躾なきゃ)
雪弥は涙をぽろぽろこぼしながら首を横に振った。
「俺、帰る……、帰りたい……。寮に帰りたい……。お願いだ、帰りたい………。寮に帰りたい………」
天陽と二人だけで過ごしてきた安全な場所に帰りたい。
雪弥の様子に、天陽はそれ以上引き留めることはなかった。
「わかった、じゃあ送らせる」
雪弥は天陽に見送られて自家用車に乗った。打ちひしがれて手を振る気力もなかった。
けれども天陽のそばにいるために、捨てられないために、天陽に向けて精一杯笑いかけて手を振るしかなかった。
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