幸せなΩの幸せの約束

萌於カク

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幸せの約束5

(うかつだった……)

雪弥は茫然と父親を見返した。父親は雪弥に見向きもせずに、皿をつついている。

親が進学費用を出してくれるものだと思っていた。確認することなど、頭から完全に抜け落ちていた。

「まさか、まだ親に頼るつもりでいたわけではないだろうな」

「い、いえ」

雪弥にそれ以上は何も言えなかった。

ゲストルームのベッドにゴロンと寝転がると、スマホで検索を始める。

(奨学金? 今から?)

学校の生徒用サイトを探す。しかし、校内で奨学金を必要とする生徒もいないのか、具体的なものは載っていなかった。

ネットで片っ端から探す。親が高所得となると、奨学金の申し込み条件に合うものがぐんと減る。

風呂から出ると、永青に呼ばれて勉強を見てやるが、上の空だった。

永青が寝た後、夜更けまで検索したが、見つからない。

自分名義の貯金残高を確認する。

もともと仕送りの額も多くなく、入試費用も追加では送ってもらえなかったために、残額はわずかしか残っていない。

(俺、進学できない? いや、今から進学先を変える……? 学費の安いところに、それか特待入学。にしても今更間に合うところがあるのか? 試験費用すらないのに?)

次第に目の前が暗くなっていく。

(働く? はァ? Ωなのに? 住む家はどうする? 二か月先には寮を追い出されるんだぞ……)

アメリカ行きの予定が、ガラガラと崩れ落ちる。

アメリカ行きに希望を見出していただけに、そこが崩れるとすべてが崩れるような気がした。

このままではまともに生きていくことすら難しい状況になった。そのことに愕然とする。

(何とか金を工面して進学せねば。進学どころか、保護施設行きだぞ)

進学費用は二百万を超えるが、当面の生活費も含めるとその倍は欲しい。

普通に考えて、父親に一時的に学費を立て替えてもらうしかないだろう。

(親に疎まれていることを知りながらも、結局はぬくぬくと甘えてきたのだ。この状況は自業自得だ)

廊下に出るとリビングの吹き抜けからテレビの音が聞こえてくる。

(どう切り出そうか)

父親が嫌味をぶつけてくるのは目に見えていた。けれども苦境を伝えれば見捨てることはないだろう。

継母の声が聞こえてくる。

「あら主人公なのに死んじゃった」

「この主人公、アホやね。俺ならこんな死に方いやや」

「死に方は選べないわよお」

父親の方言を久しぶりに耳にした。くつろいでいるのがわかる。父親と継母が気を許し合っているのをひしひしと感じとる。

(お父さんは、お母さんに対していつも尊大に振るまっていたのに)

「雪弥さんに学費くらい出してあげればいいのに。お金ならあるんでしょ?」

継母のその声に、ハッと耳を澄ませた。

「金の問題やない」

「じゃあ何の問題?」

「あいつを見とると、苛々すんねん。俺はあいつが苦手やねん」

聞こえてきたのはさも嫌なものに対する口ぶりで雪弥のことを話す父親の声だった。

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