迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

8.後ろ髪引かれる想い

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 今日は学校から直接バスでフウマ達の活動に付き合っていたし、帰りは自分でも処理出来ないフワフワとした気持ちで足が上手く進まず帰りの時間がかなり遅くなってしまった。
もしかしたらボク寄り道してから家に帰ったりするのも初めてかな…?
そんな事を考えながら自宅に着くと、ボクが帰ってくる前に既に家の鍵は空いていて、明かりも付いてた。

 あれ?
・・・あっそっか。今日早く帰って来る日だったんだっけ…?

 今日は夜勤の仕事が多く、家を空けがちな母が早帰りする貴重な日だったんだった。
今日は色んな事が立て続けに起こり過ぎて、そんな事すらすっかり忘れていたのか…。

 ボクは恐る恐る自宅へと入り、取り敢えず母に帰宅の挨拶をする事にした。

「お母さん……ただいま…。え~と今日はその…」

「ソウジ。こんな時間までどこへ行っていたの?」

 そう言った母の表情はとても暗く悲しそうな顔だった。
その顔に今日の出来事の衝撃に浮わついてたボクの心が、一気に冷えて行くのを感じた…。

「きょ…今日はちょっと色々あって、帰る前公園に寄り道を…」

「寄り道?貴方は他の子と違うのよ…。
出掛けた先で何かあったらどうするの?」

ボクだけじゃなく母の声も震えていた。

「まさか貴方……力を」
「そ、そ…それは大丈夫だよ!能力は使ってないしバレてないから!」

 そうボクが言うと、母は少しは安心してくれたみたいだ。

「そう、良かったわ。
でも心配するから、もうあんまり遅くまで出掛けるのはやめてちょうだいね。」

「ソウジ、頼むから貴方は他の子と一緒に
"普通"でいて。
もうあの頃みたいな傷付いた貴方をお母さんは見たくないのよ。
お願いだから…。」


「……うん 。
そうだね……。分かってるよ…。」

 ああ…さっきまでのボクは相当浮かれてたみたいだ。
普通でいなきゃいけないと、そうじゃなかったらどうなるかって事を嫌と言うほどボクは知っているのに。
それにまた、こんなボクの事を大切に思ってくれてる母を心配させて、悲しい顔にさせてしまった…。

 


だから今日の事は忘れなきゃって、そうしなきゃいけないって思うのに……
そのはずなのに……


――それでも……。


 それでも……。
あの日公園で見た光景も、
アイツの優しく撫でる手の感触も、頭に強く焼き付いて離れてはくれなくって…。
忘れる事なんて出来るはずなくて。


 結局ボクは次の日以降もフウマ達に関わって行く事になる。






 そして次の日。
ボクが登校して教室に着いた瞬間に、委員長が大慌てで話し掛けてきてくれた。

「都築くんおはよう!
昨日あの後大丈夫だったか!?」
「い、委員長おはよう…。
心配してくれてありがとう。
昨日は、その…大丈夫といえば大丈夫だったよ…。」

「あの二人もあの暴風魔のお仲間の能力者なんだろう!?
クソ!転校したばかりで心細い都築くんをつけ狙うなんて本当能力者って卑劣な奴らだよな!
都築君本当に何か嫌な事とかされてないか?」
「い、いや~そんなに…嫌な人達って感じでもなかったかな…?
だから何もされてないから、心配しなくても大丈夫だからね…。」

「本当か?それならいいんだが…。」


 それから何度も大丈夫だと強く念を押すと、委員長は渋々納得してくれたみたいだ。
これ以上委員長に迷惑をかけたくないと思っていたけれど、かえって心配をさせてしまったな。
しかし委員長は本当に優しい人だなぁ…。

 それにしても能力者は卑劣か…。
委員長みたいな優しい人から見ても、能力者の認識ってそんなものなんだよね…?
それでもあの3人は、あの日あの公園で受け入れられていたんだよなぁ…。
と、そこからボクは思い至った。

 あの3人は今日もボクを誘いに来るのだろうか?
そしたらボクは……いやいやいや、昨日のことは忘れるって決めただろ?
お母さんにも、そして委員長にも沢山心配かけちゃったし、やっぱり普通がいいんだって!

 でも…。

 でも…!



 ボクがそんな風に悶々としていた所、ボクの予想を裏切り放課後になってもフウマ達はボクを誘いに来なかった。
暫く粘って待って見ても、全く来る気配がない。
一度勧誘に成功したからもういいってこと?

 ・・・うん…。
願ったり叶ったりじゃないか。
そもそもフウマが明日も来るとか勝手に行ってただけで、1日だけ体験をして見るって話だったし?
それに元々は、あの王様の勧誘に迷惑していたというのは事実としてあるわけで。
むしろ自分から動くまでもなく関係を切れてラッキーじゃないか!
ボクは普通でいるって決めてるんだから。


・・・でも……。


・・・それでも。


・・・それでも!



――気付くとボクは半ば無意識でクラスの教室から出て駆け出していた。
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