言霊

ポンカン牡丹

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第八話 修学旅行3

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(空気が重い)
 昨日の事件のせいで本来楽しみなはずの今日の自由時間が苦しい。
 班のメンバーは俺、吉野、佐藤さん、高橋さんの4人で基本的に佐藤さんは4人でいる時はいつも通りに接している。
 しかし、問題は一緒に行動をしている別グループがいること。メンバーは前野君、前野さん、加藤さん、木嶋君。
 何故一緒に行動しているのかというと修学旅行前にそう約束していたから。
 まさか、その時の約束のせいでこんなに空気が重くなるとは。
 昨日の件を何も知らないあっち側の3人はいつもと変わらない様子だ。
 だがよく分からないのは前野君のテンションがいつもより高い。昨日あんなことがあったというのに。から元気なのか?
 奈良県の有名な大仏がある場所までやって来た。
「木嶋、写真撮って」
「いいよ」
 前野さんと加藤さんが大仏の前で写真を撮っている。
「──ブツ」
 佐藤さんが体を一瞬ビクッと動かした。
「ブス?」
 前野さんが前野君を睨みつける。
「あ? 言ってねえよ。ダイブツって言ったんだよ。俺が大仏好きなの知ってんだろ」
「ふーん」
 前野さんの勘違いだったにもかかわらず、前野君を見る目が冷たい。
「ねえ、前野くん」
「なんだよ佐藤」
「昨日、駅でわたしになんて言ったの?」
「昨日、佐藤に? 俺なんも言ってねえよ。 ダイブツ、ダイブツしか昨日言葉発してねえよ」  
「そっか、そうだよね。ダイブツ……だよね」
「なんだ佐藤も大仏好きなのか?」
「え? うん、好きだよ」
「なんだそうだったのかよ。なら一緒に大仏見て回ろうぜ」
「奈良県だけにね」
「佐藤知ってるか、奈良にはシュワッチ型大仏があるらしいぞ」
「そんなこと知ってるよ~」
 二人は大仏の話で盛り上がりながら遠くへと消えていった。
(……青春っていいな)

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