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1章 由雄と健太の夏休み

第111話 とりあえず逃げる

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 頬に当たる感触を感じて俺は目を覚ました。ぽたっと再び俺の頬に何かが落ちてくる。どうやら水滴のようだ。目を開けているはずなのだが、まだ完全に目が覚めていないのかあたりが薄暗く少しだけ見難い。
 よく見てみるとすぐ近くに健太たちも転がっていた。何でこんなところで寝ているんだろうと少しだけ不思議に思ったが、再び落ちてきた水滴に俺は顔を見上げる。

「なっ…なんだここは!」

 天井はかなり高くよく見えない…が何故か上から降ってくる水滴、触ると弾力がある足元、そして生臭い。

「うるせぇ…何騒いでるんだ?」
「…ボスは、どこ?」

 健太とリノが目を覚ます。ボスってあの大きなヤツか…たしか大きな口を開いてそれから…いやまさかな。

「リノ…まさかとは思うんだが、ここそのボスの腹の中とかじゃないのか?」
「…そういえば、食べられた?」
「うわああああああっまじで俺達食われたの!?」

 冷静に応えるリノと違って健太が騒がしい。まあ俺もその気持ちは理解出来るから怒ったりしないが、今騒いでも何も変わらないからまずは落ち着け。
 健太の声にまだ起きていなかったファーナさんとミネも起き上がり今の状況を話し合うことになった。どうやら食べられたが正解のようだ。

「状況はわかったけどどうするんだよっ俺達このままだと消化されちゃうってことだろう?」
「ひぇっそれは困る!」

 それは誰だって同じだろう。黙って栄養になるわけには行かない。みんな若干顔色も悪いがその中で1人武器を取り出したのがいた。

「…っ」

 リノが杖を振り下ろすとそこにはやられて消えていく手足の生えた魚みたいなのがいた。

「出口、探そう。なぜか、魔物も、いるし?」

 半漁人ってやつか…?いや、マーマン??まあどっちでもいいが。とりあえずこのボスの腹の中には魔物が住んでいるみたいだ。と言うかこいつらも食われたとかなのかもしれんか。

「あれ…なんか揺れてる?」

 ファーナさんが足元を見ながらそんなことを口に出した。言われてみれば少しゆれているような気もするが…まあ生き物の腹の中ならこいつが動けば揺れるってこともあるわけだよな。
 その揺れだと思われたものは段々と音が大きくなり、その音の正体もなんとなーくわかってくる。いやな予感しかしない。

「これ、俺達がここに飲み込まれたみたいにまた水を飲み込んだ音じゃないか?」
「ということは…ここに水が入ってくるってことっ!?」

 俺の言葉に反応したミネがすごい勢いでキョロキョロと周りを見始める。音は段々と大きくなり俺の左側のほうからしてきているようだ。

「逃げるぞ!」

 俺はすぐに大きな声を上げ反対方向へ逃げるように走り出した。リノもファーナもそれに従いすぐに後をついてくる。健太とミネだけがすぐにわからなかったのか遅れて走り出した。

「とりあえず魔法かけるわね!!」

 後ろのほうで走っているミネが念のためにみんなに魔法をかけ始めた。俺達がここに飲み込まれてからどのくらい時間がたっているかわからず、このまま水にでも飲み込まれたら呼吸できず間違いなくおぼれるだろう。これであとは水量によるが水で埋まることがないのなら『フライト』で逃げれるかもしれない。

「『フライト』!!」
「そうかっ『フライト』!」

 俺が『フライト』を使用するとそれに気がついた健太も使う。その後に続きみんなも使っていく。もう音はすぐ後ろまで迫っていた。
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