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1章 由雄と健太の夏休み

第125話 6階層攻略開始

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 おやつを食べ終えた俺達はパネルを操作し、6階層へ移動した。どうやら外ではなく、どこかの建物の中を思わせるつくりになっていた。薄暗く、洋式な装飾を施した壁紙と取り付けられた明かりはその廊下を怪しく照らし、まるで洋館の廊下みたいだった。

「室内ダンジョン…?」

 誰かが呟いた。まあ健太の声ではなかったがどうでもいい。相変わらず入ってすぐのパネル付近に魔物はいないので一安心だ。俺はまず地図を取り出し現在の位置を確認した。どうやらここは一番南端の中央あたり。それを現すかのように廊下は左右に伸びていた。

「よっすーどっちからいくよ」
「はっきり言ってどっちでもいいんだが…誰かなんか意見ある?」
「ん…右がいい」

 どうやらリノは右から行きたいみたいだ。他の人はどっちでもいいらしく首をかしげているだけ。

「気のせい、じゃなければ…右の角、影が見える」

 言われて右のほうを目を凝らしてみるがはっきり言ってよく見えない。どうやらリノは俺よりかなり目がいいみたいだ。

「魔物ってことか」
「そう、早速確認できる」
「ん~~?リビングアーマーじゃないのか?? ほらマントに効果ついてるし」

 そういいながら健太がマントを取り出したので無理やりリュックに押し込める。はっきり言って相手の強さを確認するまでそれは出さないほうがいいと思う。

「うん、でも、1種類とは、限らない」

 たしかにそうだ、今まで1種類だったのは1階層だけだった。そのスライムだって色が違うことを考えると1種類とはいえないのだ。

「んじゃとりあえず右いって魔物の強さ確認なっ」

 俺達は右へと進み始めた。始めて遭遇する魔物のためみんなの口数が少ない。リノに言われた影が俺にも見えるようになってきた。

「ちょっとまて」
「なんだ??」
「健太ここでマント装備だ」
「使っていいのか?」
「ああ、あの影がリビングアーマーならこのくらいの距離でこっちに向かってくるかもしれないだろう?」

 むやみに近づいて曲がった角で待ち伏せも怖いし、その先に沢山いても対応出来ない。健太は早速リュックから白いマントを取り出すと装備した。

「ん…ヨシオ、影が動いたわ」

 ということはリビングアーマーか?
 ゆらりと動く影が段々こちらへ近づいてくる。それを見ながら各自武器を構える。ミネにいたっては新しい魔法を前方に放つつもりなのかすでに詠唱に入っている。ゆらりと現れた魔物に先ずはファーナさんの弓が当たる。それはカツンと音を立てて弾かれ落ちる。それにかまわずリノも健太も魔物に殴りかかる。どうやら全身が鎧で出来た魔物のようだ。

「詠唱完了! 撃つわよっ」

 それを聞いたリノと健太は慌てて魔物から離れた。離れたのを確認するとミネは魔法を撃ちだした。

「『エレメンタルストーム』!!」

 前方に打ち出された魔法は鎧の魔物リビングアーマーだと思われるものに当たるとそのまま壁にぶつかって大きな音をたててはじけた。
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