たとえばこんな異世界ライフ

れのひと

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第1章 白石直人

9話 働いた後のご飯が目にしみる

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「そろそろ、終わりにしよう。ちょっと疲れて来たし。」
「あ、魔力がだいぶ減ってしまったのかもですね。」
「シザークラブ、素手で、やれる、レベル。魔法が、いけない。」
「素手は勘弁。」

 残っているアイテムを拾い、ダンジョンの外へ向った。外に出るとすでに日が傾き始めていた。

「君達も引き上げるところかい?」

 ダンジョンの入り口であった少年だ。

「ああ、そうだよ。」
「お互い無事でなにより。それではまたどこかで。」

 少年は目の前から消えた。

 前クラスタが消えたのと同じだな…魔法?スキル?

「さて、どこで食事にしましょうか。」
「あーそうだな。ネネ、おねーさんはどこにいるんだい?」
「『ディメンションウォール』の、中。」

 それならすぐ合流できるな。

「じゃあ一度僕の『ディメンションウォール』の中行っていいかな?放り込んだ荷物が散乱してるんだ…」
「そうですね。整理しておきましょうか。」

 ネネも頷いたので、三人で『ディメンションウォール』の中へ入って行った。
 中は酷い惨状だった。沢山のペットボトル、石、メロン、桃、アボカドにハム。缶詰や魚が足場のないくらい広がっていた。おまけに魚とハムのせいで匂いが気になる。

「これはやばいな……」
「宝の、宝庫?」

 絶対違う。

 ネネは目を輝かせている。

「まずは何からやりましょうか。」
「そうだな、魚とハムをそれぞれ収納棚に入れよう。」

 三人で手分けして棚にしまった。次に残りの物を種類別に小山にした。

「少し…狩りすぎたかもしれませんね。」
「片付いたけど、まだ匂いが残ってるなー」

『クリーニング』

 クラスタが唱えた。

「どうですか?匂いだけならとれたはずです。」
「ああぁーそれっ部屋を綺麗にする魔法だったのかっ」

 もっとちゃんとステータスをみておこうと改めて実感した。

「もう、おねーちゃん、呼んで、いい?」
「あーいいよ。」

 返事を返すとネネは出入り口の隣で『ディメンションウォール』と唱えた。

「初心者も、一緒、きて?一人じゃ、運べない。」

 …運ぶ?

「わかった。クラスタちょっと行ってくるね。」
「私はここにいますね。」

 二人で『ディメンションウォール』の中へ入って行った。
 中に入るとまずは全体を見回してみた。思ったよりも広くはなさそうだ。

 6畳くらいか?

「ネネ、『ディメンションウォール』のレベルは?」
「8、だよ。」

 8だとこの広さなのが。

「ふむ。ところでおねーさんは?」
「こっち」

 ネネが指したほうを見ると扉があった。扉の前に立つとノックした。

「おねーちゃん、入る、よ?」

 扉を開けて中に入って行った。一人で残るわけにもいかず、後をついていく。
 部屋の中央に床につきそうな緑の髪を垂らした女性が座っていた。ネネはその女性の膝に座り込んだ。

「お帰りなさい~。ネネ。」
「おねーちゃん、仕事、おわり?」
「うん。もう終わったよ~。ところでそちらはどなた~?」

 女性は振り返りもせず言葉を投げてきた。

「白石 直人。ナオトといいます。」

 女性の前にまわり、軽くお辞儀をした。相手の顔が見える…柔らかく微笑んでいた。

 やばい。笑顔が眩しすぎる!

「じゃあナオちゃんね~?私はネネの姉でイレーネ。よろしくね~。」

 ますます眩しく感じた。

 いやほんと、光ってるんじゃっ

 『ビシッ』『ビシッ』、ネネが二人の頭にチョップを入れる。

「おねーちゃん、悩殺スマイル、やめる。初心者は、負けたら、だめ。」

 特技が悩殺スマイルというものだったらしい。これは危険なスキルなんじゃ…

「え~。ナオちゃんかわいいからかまいた~い。」
「ぜひお願いし…」

 『ビシッ』『ビシッ』再びチョップされる。

「お、し、ま、い。」

 ネネの迫力に負けてしまった。

「初心者、おねーちゃん、歩けない、から、運ぶ。ちなみに、目も見えない。」
「え、でもさっきちゃんと視線があった気がしたんだけど。」
「見えないけど見えるのよ~」
「どゆこと?」

 イレーネが説明を始めた。
 目は生まれつきみえなかったこと。それを補おうと努力した結果まわりの様子がわかるようになり、さらに見えないものまで見えるようになったこと。

「見えないもの?」

「未来よ~。正確には少し違うのだけれど、未来って色んな選択肢の先にあるものでしょ~?その先にある未来が少し見えるの~。」

「おねーちゃんは、これで、仕事、してる。」
「未来予知か。凄い。」
「でもね~見えた未来の内容は教えないの~。知ってしまったら面白くないでしょ~?だから私は先に危険があるかないかだけ、教えてあげるの~。」

 と言ったとこで、少し曇った顔をした。

「自分の危険がわかれば…こんなことにはならなかったんだけどな~」

 イレーネはスカートをギリギリなラインまで持ち上げた。綺麗な脚があるのかと見ていたら、それは足の先から膝の上まで石になった脚だった。

「目が見えない上に自分のことは見えないから~50年ほど前に魔物がダンジョンから溢れて~逃げれなくて、石化魔法かけられちゃったの~あと100年もしたら心臓に届いちゃうかな~?」

 言葉が出なかった。自分の死期を知りつつこんなにも明るく出来るなんて。

「直す事は出来ないのか?」
「出来ないこともないよ~?ただ難しいの~。」
「どうすればいいんだ?」

 イレーネは少し考えたあとこういった。

 高位の回復魔法を高魔力で使用する。もしくは、石化をかけた者が死ぬ(倒す)。それか、石化をかけた本人に解除してもらう。

「今のところは~無理かな~と~?」

 だからネネはダンジョンに行くのか。どの魔物かわからないが可能性にかけて…

「だから、今は、ご飯だよ?おねーちゃん、運んで?」
「ああ、わかった。」

 イレーネに手を伸ばし抱きかかえた。いわゆるお姫様抱っこである。

「ナオちゃんが連れて行ってくれるのね~ここらが出るの凄い久しぶり~お礼しないとね~」
「未来予知、する?」
「じゃあお願いしようかな。」

 そういうとイレーネは僕の頬を両手で包んだ。少しすると包んでいた手が震えだした。

「イレーネ?」

 次の瞬間、イレーネは自分の口を押さえて泣き出した。

「そ、そんなに悪い未来だったのか…っ」
「違い…ます~」
「……?」
「ナオちゃんの未来で私、自分で歩いてた…っ」

 それは同時にナオトがイレーネのために行動を起こした証明であった。二人はイレーネが落ち着くまで待つことにした。



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