たとえばこんな異世界ライフ

れのひと

文字の大きさ
20 / 60
第2章 転移者

20話 護衛依頼

しおりを挟む
「ところでナオト。妾は自分が夢の存在だとは思えないのだか?」
「夢じゃないといいたいんですか?」
「うむ。痛みや味覚、空腹感もあるのだろう?夢とは思えないな…」
「…………」

 やはり現実ということになるのか……

「あぁー認めたくない~っこんな現実!」
「諦めて『勇者』を全うしてくれ。」

 現実は残酷であると直人は思った。つまりは魔王をなんとかしないと帰れないということが決定した。転移者である事を認めた瞬間である。

「さて、そうなるとお主たちはこれからどうするのだ?」
「直人の強化と地下都市でまた魔王にあって交渉とかですねー」
「ふむ、では王都のダンジョンで修行するがよい。冒険者ギルドで依頼を受けるのも忘れるなよ。」

 そう言うとアストレアは帰って行った。
 終始黙っていたクラスタだったがアストレアが帰った途端口を開いた。

「王女様は中々騒がしい方ですね……」
「本人に言わないほうがいいぞ?」

 3人で顔を見合わせ頷きあった。

 次の日アストレアに言われたようにギルドに顔を出した。ギルドの作りはどこも同じようで扉をくぐり右の壁側に依頼書が貼ってある。依頼書を見るために壁側へ向かうと見知った顔があった。

「ネネ?」
「ん?初心者。」

 ネネは凄く期待した眼差しを向けている。きっと変わった食べ物が目当てなのであろう。

「ここでネネに会うとは思わなかったよ。」
「ん。元々、ここに家があるから。」

 それなら当たり前か。

「初心者達、は、依頼、受ける?」
「そう思って来たとこだよ。」

 そんな会話をしながら依頼書を眺めていると、ギルド職員が話しかけてきた。

「ナオト様とテンタチィオネ様ですか?」

 顔を見合わせ頷いた。

「そうだが何か?」

 テンタチィオネはギルド職員を睨んだ。テンタチィオネに話かけるのはわからなくもないが、ナオトの名前が出るのがおかしいのである。

「あ、はいっある方から依頼がありまして、是非お二人に受けて欲しいと言われまして。」

 ギルド職員はテンタチィオネの睨みが効いたのか一気に言い放った。

「ある方……」

 嫌な予感しかしない。

「……で、依頼内容は?」
 
 テンタチィオネも微妙な顔をしている。

「はい…ダンジョン内での護衛ですね。報酬は銀貨3枚です。」
「ちょっと報酬が高すぎないか?」

 ギルド職員は依頼書をもう一度眺めて確認している。

「間違いないですねー。受けますか?」
「「「……」」」
「……?」

 1人ネネは首を傾げている。依頼は受けないと後が怖そうだ。

「受けます…」

 仕方なく依頼を受ける事にした。
 依頼人が来るまでギルドのテーブルにつき飲み物を頼んだ。ネネも一緒に来るそうで、同じテーブルについていた。

「あれってやっぱり……」
「たぶんそうですよね…」
「もう諦めた。」
「ドロップ、楽しみ。」

 1人全然関係ない事を言っているが待っている間、ダンジョン『フラカン』について話をしている事にした。

「フラカンって地下からだと翼竜と蝙蝠がいたとこだよね?」

 直人の言葉にネネが反応した。

「翼竜!」
「ネネどうした?」
「おねーちゃん、石化したやつ、翼竜と、いた。聞いたっ」
「……」

 つまりフラカンか石化を使った相手の可能性があるって事か……

 テンタチィオネの方を見る。少し困った顔をしていた。フラカンはあまり会話をしたがるタイプではなかった。それは直人も一度会っているのでわかっている。

「何か、知って、る?」
「たぶん…だけどね?」
「どこに、いる?」
「ダンジョン『フラカン』の中というか最下層というか…さらに奥?」
「よく、わからない……」

 ネネは困惑した顔をしている。

「おまたせーっ依頼人よ。驚いたかしら?」

 そこへ丁度アストレアが現れた。3人はやっぱりかという顔をしている。今日は冒険者のような服装で護衛が1人ついていた。

「依頼人?」
「アストレア、どういうつもりですか?」

 直人が呼び捨てにすると護衛が怒り出した。

「なっ姫様に向かって呼び捨てとは無礼な!」
「よいのだカイナ。妾がそう呼べと申した。」
「しかし…」

 カイナと呼ばれた女性はいまいち納得していないようだった。

「姫様、なの?」

 ネネは不思議そうに聞いてきた。

「ん?なんじゃこのチビ助は。こやつもいくのか?」
「む。ネネ、は、チビ助、じゃないっ」
「足手まといにならぬとよいがのー」

 この2人は相性が悪そうだ。ダンジョンにまだ向かってすらいないのに火花が散っているようだ。

「えーと、ところでダンジョンに行く目的は?」
「特にないぞ。普通に皆で魔物狩りじゃ。おぬしもこれなら一緒に鍛えられるであろう?」
「はあ……」

 ただついて来るための口実だと言う事か。

「で、ダンジョン『フラカン』の場所はどこなんだ?」

 総勢6名はダンジョン『フラカン』へ向かう事にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

World of Fantasia(ワールド・オブ・ファンタジア)

緋色牡丹
ファンタジー
生きる意味を見出せない三十二歳の男・山田緋色。 夏の夜、光の渦に呑まれ、彼が目を覚ましたのは――幻想の森だった。 壊れた愛車、知らない空、そして湖に浮かぶ青髪の少女。 異世界での出会いが、“止まった人生”を再び動かしていく。 異世界叙情ファンタジー、開幕── ※この小説は、小説家になろう、カクヨムにも同時掲載しています。 挿絵はAIイラストを使ったイメージ画像です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...