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第6章 実験

51話 フォレストガーデン

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 祭りもおわり王都はいつもの状態へと戻りつつある。それでも人の気持ちなどはすぐに切り替わらないもので、まだまだ人々は賑わっていた。そんな中直人は魔道具の実験をするため、まずはテレノへと『転移』していた。

「さてと…」

 転移の実験として中距離がどの程度のものなのか確認するためにはまずいける場所を増やす必要がある。直人は自分がきた方向を確認しつつテレノよりさらに北へと移動をすることに決めた。
 『ディメンションウォール』からうさ野郎を引きずり出しとりあえず北へ飛ぶことを告げる。

「はぁ…仕事ですね。」
「なんか疲れてるな…」
「ええ、また跳ねられまくってたんです…」
「そうか、がんばれ。」

 うさ野郎が取り出した一人用のブランコのようなものに乗りまずはテレノから北へまっすぐ飛ぶ。空へ上がりテレノの北にある山を越えなければならない。

「思ったより高い山だな~」
「もうちょっとで頂上ですね。ところでどの変まで飛ぶつもりですか?」
「休みつついけるところまでかな。」
「はあ…そうですか。あ、頂上越えました。」

 目の前を見ると山の向こうには木々が連なり、かなり広い範囲を埋めていた。森というやつだろう。

「このまま北ですかね?」
「そうだな…まずはこの森を越えた先で降りてみるかな。」
「わかりましたー」

 森に差し掛かり上から見下ろすと足元は緑一色だ。ここから落ちたら串刺しになりそうでこわいなーと直人は眺めている。

「ん…あれ?」

 少しだけブランコがフライついた。

「御主人…」
「なんだ??」
「この森…やばいかも…なんか引っ張られて…うまく飛べない……」

 ブランコががくんと一気に落下しかけ、あわててうさ野郎が食いしばる。

「くっ…すみませんっ…このままじゃ落ちちゃうんで…出来るだけゆっくり…降りますっ」

 そういうとゆっくりとだけど降りるような、急に落ちるようなことを繰り返しながら森の中へと降りていった。

「ぜぇ…ぜぇ…っ」

 うさ野郎は地面に降りるとその場に寝転がって呼吸を整えていた。

「森の上は飛べないんだな…」
「そうみたいですね…」
「しかたないこのまま森の中を進むしかないか…」

 『ディメンションウォール』を開き中から馬のような生き物であるクリアを連れ出し、うさ野郎には中で休んでもらうことにした。

「クリアよろしくなー…」

 首筋を撫でながらクリアに声をかけるとどことなくうれしそうなのが分かった。クリアに乗ってこの森の中を移動するのはいいが1つ問題がある。鞍や手綱がないことだ。つかまれないからゆっくり歩いてもらうしかない。

「ゆっくりこのまま木々を避けつつ進んでくれ。」

 ブルンと頭を振ると直人を乗せてクリアは歩き出した。見上げるとずいぶんと木の身長が高いのが分かる。ほんとうに落ちなくてよかったと思う。
 森を1人と1頭で進んでいるが、今のところ魔物には遭遇していないのはいいことだ。たまにスライムは見かけるがまあ襲ってこないので基本放置である。

「…ん?クリアちょと止まって。」

 少し先、開けた場所に建物がいくつか建っているのが見える。『ディメンションウォール』からグレイに出てきてもらい偵察にいってもらう。少し飛ばしたところでグレイは戻ってきた。やはり飛ぶのがつらいようだ。それを考えるとうさ野郎はがんばったほうだったのがよくわかる。

「…こんなところに冒険者ギルド?」

 グレイが少し見てきた建物は冒険者ギルドのものだった。それならそれほど警戒する必要はないだろう。クリアとグレイには中に戻ってもらい、直人は1人で冒険者ギルドの扉をくぐる。

「まあ…まあまあまあ…!ちょっと久しぶりの人間族だわっ」

 カウンターの中にいた女性はエルフだった。よく見ると周りにいる人達もほとんどエルフで、他にも人間族じゃなさそうな種族達がいる。

「ようこそフォレストガーデンへ。」
「フォレストガーデン?」
「はい、ここの森の名前ですね~」

 エルフの受付のお姉さんはニコニコと笑顔を振りまいている。

「今日はどのようなご用件でしょうか?」
「あー…っとこの森の空ですか、飛べないのはなんでですかね?」
「まあ、この辺の方じゃないんですね…はい、この森の空は基本飛べないです。なので大体みなさん迂回するかあきらめて森を突っ切りますね。」
「飛べない理由は?」
「昔からなので知りません。」

 森に住んでいる人でも知らないのなら飛ぶのはあきらめたほうがいいのかな…

「ご用件は以上ですか?」
「あーえーと…なんでここに冒険者ギルドが?」
「ダンジョンがあるからです。」
「ダンジョンがあるの?」
「はい、ここはこのギルドとダンジョンと宿が数軒あるだけですね~」

 なるほどダンジョンの村ってことなのか。

「ありがとう、じゃあ。」
「え、ちょっもう帰るの??」

 お礼を言って出て行こうとしたらなぜか止められた。

「ここ日が暮れるの早いし、折角来たんだからダンジョンぐらい行ってみてよーというか少しはギルドに貢献してってよ~冒険者じゃないのー??」
「一応冒険者だけど…」
「そう、初心者、貢献、する。」

 背後から聞き覚えのある声がした。

「ネネ…!」
「んっ」

 ネネが手を上げて挨拶をしてきた。 
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