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やっと冒険者登録できた
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コアにお願いしてダンジョンの外に出してもらった。自力で階層を上がって出てきてもよかったのだけど3階層も移動するのは若干めんどくさいからね。そして…そうだったすっかり忘れていたこの光景。目の前に広がるなぎ倒された木々。これやったの私なんだよね…回収したほうがいいのかな。だけどあまり大きなものをアイテムBOXにたくさんしまうと本当にしまいたいものがしまえなくなるかもしれないから、このままがいいのかな~ というかこの木を持ち帰ったら泥棒とかになる可能性もあるよね。うん、放置決定。
えーと…道はこれをたどれば戻れるけど、ゆっくり歩いていたら時間がかかるよね。やっぱり走って帰るしかないか。軽くジョギングのつもりで走ればいいかな。はあ…また木が倒れている。周りも見ずに走り抜けたからっていったい私はいくつなぎ倒したのか…
「あ!」
人だ…そっと木の陰に隠れて様子を見る。そうだあの魔法を使おう。隠密。これで物音を立てないようにしていればやり過ごせるはず…こうやって少し離れたところから見ている分には平気なんだよね。直接視線を感じたり話しかけられたりするとどうしたらいいのかわからなくなってしまってパニックを起こしてしまう。こんなんだから今までもひどい扱いを受けてきた。だけど私だって好きでこんな性格なわけじゃない。小さい頃はもっと普通に会話とか出来ていたんだから…だけど、色んな会話を色んな人と繰り返しているうちに馬鹿にされることが増えてきて、こんな性格へと変化した。環境の影響も大きかったんだよねきっと。今ならわかるよ…こうなる前に早く逃げ出すべきだったんだ。必要以上に会話をしないとかでもよかった…だけど私は話すことが大好きだったからそれが出来なかった。
どうやら見かけた人は木が倒れているのが気になって歩いてきたようだ。私が走ってきたほうへと向かって行った。つまりダンジョンがある方向だ。隠してあるからすぐに見つかることはないと思うけど少しだけ不安になる。早く引きこもる準備をしてダンジョンの強化をしよう。私は再び走り出した。
町が見えてきた。思ったよりも私は遠くまで走っていったらしい。ちらほらと人がいるけれど…大丈夫私の見た目はその辺にいる普通の子供に見えることだろう。サーニャのお古を着ているからね。怪しいところは何もない。前を歩く人の後ろをついていくように目立たないように門をくぐる。
「おい」
「ひゅあっ」
いきなり肩をがっしりとつかまれた。厳つい男の人が私の顔を覗き込んでいる。肩…手…放してほしい。
「どこも怪我はねぇみたいだな…」
「ふぇっ?」
「外は魔物とかもうろついてるからあんま子供だけで出歩くなよ」
な、なんだ…驚いた。子供が一人で外から来たから心配されただけだったみたい。それだけ言うとその厳つい人はどっか行ってしまった。でも顔が怖かったぁ~…ほら手が震えてまだ止まらない。しかも声も大きかったし…
はあ…よし気を取り直して、まずはどうしよう。そうかお金だ。お金がいるから働くために冒険者ギルドに行ったんだったっけ。まずはお金がないと何も手に入らない。あーあの拾った黒虫のオーブは売れるのかな。ちょっとでもお金になるのなら売って支度金にしたい。
「あーーーー見つけた!」
「きゃっ」
また大きな声がして私は身構える。本当に大きな声はやめて欲しい…だって視線まで集めてしまうから。震えるからだを抱え込みながら声を出した人物を探す。だって聞き覚えのある声だったからね。
「探したんだからねアイリちゃん」
やっぱりサーニャだった。冒険者ギルドを飛び出した私を心配して探してくれていたみたい。これは町の外へ飛び出していったなんて言ったらもっと心配されてしまうかもしれない。黙っておこう。
「さ、今度は大丈夫だからちゃんと冒険者登録しよう?」
サーニャに手を引かれ…ていたけれどやっぱり視線が気になってまたしがみついて目を閉じながら、私はサーニャについて行った。
冒険者ギルドの中は更に人が増えていて入り口でまた足を止めてしまう。でもサーニャの足は止まらないので半分引きずられながら奥へと進んでいった。あれ…気のせいかだんだん聞こえていた声が小さくなっていくよ? ゆっくりと目を開け今の状態を見てみる。進んでいるのはカウンターの奥。振り返ると人がたくさんいるのが見えた。ほっとしてちゃんと自分の足で歩く。
「おねーさーん。見つけてきたよ~」
「どうぞ入って~」
一つの扉の前でサーニャがノックをして声をかけた。カチャリと音がして扉が内側へと開いた。あ、この人私が登録しようとしたときにいた人だね。顔はよく見てなかったから覚えていないけど声には聞き覚えがある。
「じゃあそっちに座ってね」
サーニャにくっついたまま一緒にソファーに座る。ソファー…だよね? 思ったより柔らかくなくて思わずソファーを眺めてしまう。
「あらソファーに座るのは初めてかしら。結構柔らかくていいのよね~ 私も自分の家に欲しいくらいだもの」
声をかけられついサーニャの影に隠れてしまう。でも…残念ながらそれははずれだよお姉さんっ 言わないけど…言えないんだけど!
「ふぅ…冒険者になりたい子がそんな状態でやっていけるのかしらね~? まあ仕事さえやってもらえるなら問題はないと思うけど」
そういってお姉さんはテーブルの上に紙とペンを置いた。確かこれって私が記入しないといけないやつ。ちらりとお姉さんの顔を見ると頷いていた。ゆっくりとサーニャから離れテーブルの上にあるペンを手に取る。名前…年齢…性別…職業…得意な戦闘方法や武器…思ったより書くことはないみたい。そういえばレベルが上がったんだよね。一度ステータスを確認してから書こうか。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
名前 アイリ 年齢 12
レベル 2 職業 1891ダンジョンマスター
HP 1550 MP 390/1510
STR 160 VIT 155
AGI 158 INT 153
DEX 156 LUK 153
スキル
コピーlv1
[ ]
[ ]
[ ]
気配探知
魔法
アイテムBOX
[黒虫オーブ56個 木の枝 ミニコア]
隠密lv1
身体強化lv1
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
あ、本当にレベルが上がっているね。ステータスの数値もバラバラだけれど上がっているし…えーと得意な戦闘方法? 黒虫を倒すのには木の枝で殴った…撲殺? ん-わからないから書かないでいいか。それで職業だったっけ。そもそも職業はどうやったら手に入るのか? 今私の職業は1891ダンジョンマスターとなっている…まあつまりそういうことなんだろう。これは素直に書いたらだめな奴なんじゃないだろうか。となると名前、年齢、性別しかかけない。あ…もっとそれ以前の問題があった。さっきから私言葉が通じて文字も読めているから気にしていなかったんだけど、文字を書くことは出来るんだろうか? 試しに書いてみる? だけどどこの文字か聞かれても困るし…
「あ! もしかして文字書けない? それなら言ってくれれば代筆しますよ」
「名前はアイリちゃんで12歳だよ」
「貴方が答えてどうするの…でもまあ合ってる?」
私は縦に首をぶんぶんと振った。迷ったけど結局書いてもらってしまったよ…
「じゃああとは虚偽…嘘を言っていないかの判定と冒険者ランクを決めるための強さの確認ね」
ことりとテーブルに置かれた金属の板には丸い玉が2つはめ込まれている。
「まずは嘘じゃないかの確認から。左の水晶を左手で触れてもらえるかしら」
私は言われるまま恐る恐るだけどちょんっと指先で触れた。するとお姉さんに腕を捕まれ…
「もっとこうがっと」
無理やり手のひらで触らされる。驚いて慌てて手を引っ込めた。無理やりとか…無理やりとかっ 心臓がバクバクしていやな汗が出た。
「それから右の水晶は利き手で触ってね」
利き手…何をするときの利き手かな…まあ私は全部右手なので関係ないんだけど。他の人はこれで迷ったりしそう。今度は手を掴まれないようにちゃんと手のひらで水晶に触った。左の水晶と違ってこっちは色が変化していく…最初は薄い青になってそれがだんだん紫に変わり赤くなっていった。最終的に赤黒くなって色の変化が止まる。
「え…うそ。B級以上? 色的にはA級に近い…そんなっ」
お姉さんはいきなり立ち上がり走って部屋から出て行ってしまった。そんな様子を見てサーニャに張りついてびくびくしている私。急な動きは殴られそうでこわいのだ。
「おねーさんどこいっちゃったのかね~?」
部屋に残された私達はどうしたらいいのかわからず大人しく待っていた。暇を持て余したサーニャがテーブルに置かれたままになっている水晶をつついている。触るたびに色が青く変わるので面白いのかもしれない。
少しすると大きな音を立てて扉が開いた。
入ってきたのは厳つい顔をした男の人とさっき部屋を出ていったお姉さんだ。もちろん大きな音に驚いた私はまたまたサーニャに張り付く。
「ユイ…どっちだ? そのA級に近い判定が出たのは」
「は、はい。黒髪の子です」
あれ…この男の人の声も聞いたことがあるような?
「ん~~? さっき門のとこで会った子供じゃねぇか。本当にこいつか?」
「はい」
ああ門で声をかけてきた人…声が大きくて乱暴だから出来たらかかわりたくない人種。
「まあやればわかるか…おい、右の水晶に利き手で触ってくれ」
…冒険者の登録って中々面倒なんだね。逆らってもいいことがないのはわかっているので大人しく右手で右側の水晶に触れた。さっきと同じように薄い青から変化していって赤黒くなったところで変化がなくなる。これって最終的に何色になるんだろうね。
「故障とかじゃねーよな…だとするとこの子供がそのくらいの強さだということになるんだが。まあいい、そのうちわかるだろう。この結果に関係なくランクは下から始めるしな。ただFランクは説明だけ受けたら免除でいいぞ」
「わかりましたではそのようにいたします」
「おうっ」
ギルドの説明が始まった。簡単に言うと仕事が張り出してあるからそこから自分が受けられるランクの物を受付に持って行って仕事を受けなさいと。受けられるランクの仕事は自分のランクと1つ差まで。あとは1か月に1度は仕事を受けなさいよーみたいなことを言っていたかな。ランクアップの説明についてはその時に、だそうな。あーそれと節度ある行動をと言っていたかな。常識を考えなさいってことだと思うけど、私に常識を求められても困ってしまう。この世界の常識ってやつをそもそも知らない。まあ…余分なことをしないようにしていればきっと大丈夫。
買い取りについてはその時々で値段が変動するらしい。需要と供給ってやつだろうか…
「何か質問があるなら聞きますよ」
「…っ あ、その………これ」
私が取り出したのは黒虫のオーブ。黒虫のドロップ品てやつなのでお金になるかもしれない。引きこもるために必要な物を買うためのお金が欲しいのだ。売れるのなら売っておきたい。
「これはダンジョン産のオーブね…え? まさか本当にダンジョンに行ってきたの??」
「お金なる…なります……か?」
サーニャにしがみつつ聞きたいことはちゃんと聞いておく。気のせいかサーニャの横顔はあきれているように見えるけれど、今はお金を作ることが重要。お姉さんは顔を引きつらせながらも私の質問に答えるのだった。
えーと…道はこれをたどれば戻れるけど、ゆっくり歩いていたら時間がかかるよね。やっぱり走って帰るしかないか。軽くジョギングのつもりで走ればいいかな。はあ…また木が倒れている。周りも見ずに走り抜けたからっていったい私はいくつなぎ倒したのか…
「あ!」
人だ…そっと木の陰に隠れて様子を見る。そうだあの魔法を使おう。隠密。これで物音を立てないようにしていればやり過ごせるはず…こうやって少し離れたところから見ている分には平気なんだよね。直接視線を感じたり話しかけられたりするとどうしたらいいのかわからなくなってしまってパニックを起こしてしまう。こんなんだから今までもひどい扱いを受けてきた。だけど私だって好きでこんな性格なわけじゃない。小さい頃はもっと普通に会話とか出来ていたんだから…だけど、色んな会話を色んな人と繰り返しているうちに馬鹿にされることが増えてきて、こんな性格へと変化した。環境の影響も大きかったんだよねきっと。今ならわかるよ…こうなる前に早く逃げ出すべきだったんだ。必要以上に会話をしないとかでもよかった…だけど私は話すことが大好きだったからそれが出来なかった。
どうやら見かけた人は木が倒れているのが気になって歩いてきたようだ。私が走ってきたほうへと向かって行った。つまりダンジョンがある方向だ。隠してあるからすぐに見つかることはないと思うけど少しだけ不安になる。早く引きこもる準備をしてダンジョンの強化をしよう。私は再び走り出した。
町が見えてきた。思ったよりも私は遠くまで走っていったらしい。ちらほらと人がいるけれど…大丈夫私の見た目はその辺にいる普通の子供に見えることだろう。サーニャのお古を着ているからね。怪しいところは何もない。前を歩く人の後ろをついていくように目立たないように門をくぐる。
「おい」
「ひゅあっ」
いきなり肩をがっしりとつかまれた。厳つい男の人が私の顔を覗き込んでいる。肩…手…放してほしい。
「どこも怪我はねぇみたいだな…」
「ふぇっ?」
「外は魔物とかもうろついてるからあんま子供だけで出歩くなよ」
な、なんだ…驚いた。子供が一人で外から来たから心配されただけだったみたい。それだけ言うとその厳つい人はどっか行ってしまった。でも顔が怖かったぁ~…ほら手が震えてまだ止まらない。しかも声も大きかったし…
はあ…よし気を取り直して、まずはどうしよう。そうかお金だ。お金がいるから働くために冒険者ギルドに行ったんだったっけ。まずはお金がないと何も手に入らない。あーあの拾った黒虫のオーブは売れるのかな。ちょっとでもお金になるのなら売って支度金にしたい。
「あーーーー見つけた!」
「きゃっ」
また大きな声がして私は身構える。本当に大きな声はやめて欲しい…だって視線まで集めてしまうから。震えるからだを抱え込みながら声を出した人物を探す。だって聞き覚えのある声だったからね。
「探したんだからねアイリちゃん」
やっぱりサーニャだった。冒険者ギルドを飛び出した私を心配して探してくれていたみたい。これは町の外へ飛び出していったなんて言ったらもっと心配されてしまうかもしれない。黙っておこう。
「さ、今度は大丈夫だからちゃんと冒険者登録しよう?」
サーニャに手を引かれ…ていたけれどやっぱり視線が気になってまたしがみついて目を閉じながら、私はサーニャについて行った。
冒険者ギルドの中は更に人が増えていて入り口でまた足を止めてしまう。でもサーニャの足は止まらないので半分引きずられながら奥へと進んでいった。あれ…気のせいかだんだん聞こえていた声が小さくなっていくよ? ゆっくりと目を開け今の状態を見てみる。進んでいるのはカウンターの奥。振り返ると人がたくさんいるのが見えた。ほっとしてちゃんと自分の足で歩く。
「おねーさーん。見つけてきたよ~」
「どうぞ入って~」
一つの扉の前でサーニャがノックをして声をかけた。カチャリと音がして扉が内側へと開いた。あ、この人私が登録しようとしたときにいた人だね。顔はよく見てなかったから覚えていないけど声には聞き覚えがある。
「じゃあそっちに座ってね」
サーニャにくっついたまま一緒にソファーに座る。ソファー…だよね? 思ったより柔らかくなくて思わずソファーを眺めてしまう。
「あらソファーに座るのは初めてかしら。結構柔らかくていいのよね~ 私も自分の家に欲しいくらいだもの」
声をかけられついサーニャの影に隠れてしまう。でも…残念ながらそれははずれだよお姉さんっ 言わないけど…言えないんだけど!
「ふぅ…冒険者になりたい子がそんな状態でやっていけるのかしらね~? まあ仕事さえやってもらえるなら問題はないと思うけど」
そういってお姉さんはテーブルの上に紙とペンを置いた。確かこれって私が記入しないといけないやつ。ちらりとお姉さんの顔を見ると頷いていた。ゆっくりとサーニャから離れテーブルの上にあるペンを手に取る。名前…年齢…性別…職業…得意な戦闘方法や武器…思ったより書くことはないみたい。そういえばレベルが上がったんだよね。一度ステータスを確認してから書こうか。
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名前 アイリ 年齢 12
レベル 2 職業 1891ダンジョンマスター
HP 1550 MP 390/1510
STR 160 VIT 155
AGI 158 INT 153
DEX 156 LUK 153
スキル
コピーlv1
[ ]
[ ]
[ ]
気配探知
魔法
アイテムBOX
[黒虫オーブ56個 木の枝 ミニコア]
隠密lv1
身体強化lv1
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あ、本当にレベルが上がっているね。ステータスの数値もバラバラだけれど上がっているし…えーと得意な戦闘方法? 黒虫を倒すのには木の枝で殴った…撲殺? ん-わからないから書かないでいいか。それで職業だったっけ。そもそも職業はどうやったら手に入るのか? 今私の職業は1891ダンジョンマスターとなっている…まあつまりそういうことなんだろう。これは素直に書いたらだめな奴なんじゃないだろうか。となると名前、年齢、性別しかかけない。あ…もっとそれ以前の問題があった。さっきから私言葉が通じて文字も読めているから気にしていなかったんだけど、文字を書くことは出来るんだろうか? 試しに書いてみる? だけどどこの文字か聞かれても困るし…
「あ! もしかして文字書けない? それなら言ってくれれば代筆しますよ」
「名前はアイリちゃんで12歳だよ」
「貴方が答えてどうするの…でもまあ合ってる?」
私は縦に首をぶんぶんと振った。迷ったけど結局書いてもらってしまったよ…
「じゃああとは虚偽…嘘を言っていないかの判定と冒険者ランクを決めるための強さの確認ね」
ことりとテーブルに置かれた金属の板には丸い玉が2つはめ込まれている。
「まずは嘘じゃないかの確認から。左の水晶を左手で触れてもらえるかしら」
私は言われるまま恐る恐るだけどちょんっと指先で触れた。するとお姉さんに腕を捕まれ…
「もっとこうがっと」
無理やり手のひらで触らされる。驚いて慌てて手を引っ込めた。無理やりとか…無理やりとかっ 心臓がバクバクしていやな汗が出た。
「それから右の水晶は利き手で触ってね」
利き手…何をするときの利き手かな…まあ私は全部右手なので関係ないんだけど。他の人はこれで迷ったりしそう。今度は手を掴まれないようにちゃんと手のひらで水晶に触った。左の水晶と違ってこっちは色が変化していく…最初は薄い青になってそれがだんだん紫に変わり赤くなっていった。最終的に赤黒くなって色の変化が止まる。
「え…うそ。B級以上? 色的にはA級に近い…そんなっ」
お姉さんはいきなり立ち上がり走って部屋から出て行ってしまった。そんな様子を見てサーニャに張りついてびくびくしている私。急な動きは殴られそうでこわいのだ。
「おねーさんどこいっちゃったのかね~?」
部屋に残された私達はどうしたらいいのかわからず大人しく待っていた。暇を持て余したサーニャがテーブルに置かれたままになっている水晶をつついている。触るたびに色が青く変わるので面白いのかもしれない。
少しすると大きな音を立てて扉が開いた。
入ってきたのは厳つい顔をした男の人とさっき部屋を出ていったお姉さんだ。もちろん大きな音に驚いた私はまたまたサーニャに張り付く。
「ユイ…どっちだ? そのA級に近い判定が出たのは」
「は、はい。黒髪の子です」
あれ…この男の人の声も聞いたことがあるような?
「ん~~? さっき門のとこで会った子供じゃねぇか。本当にこいつか?」
「はい」
ああ門で声をかけてきた人…声が大きくて乱暴だから出来たらかかわりたくない人種。
「まあやればわかるか…おい、右の水晶に利き手で触ってくれ」
…冒険者の登録って中々面倒なんだね。逆らってもいいことがないのはわかっているので大人しく右手で右側の水晶に触れた。さっきと同じように薄い青から変化していって赤黒くなったところで変化がなくなる。これって最終的に何色になるんだろうね。
「故障とかじゃねーよな…だとするとこの子供がそのくらいの強さだということになるんだが。まあいい、そのうちわかるだろう。この結果に関係なくランクは下から始めるしな。ただFランクは説明だけ受けたら免除でいいぞ」
「わかりましたではそのようにいたします」
「おうっ」
ギルドの説明が始まった。簡単に言うと仕事が張り出してあるからそこから自分が受けられるランクの物を受付に持って行って仕事を受けなさいと。受けられるランクの仕事は自分のランクと1つ差まで。あとは1か月に1度は仕事を受けなさいよーみたいなことを言っていたかな。ランクアップの説明についてはその時に、だそうな。あーそれと節度ある行動をと言っていたかな。常識を考えなさいってことだと思うけど、私に常識を求められても困ってしまう。この世界の常識ってやつをそもそも知らない。まあ…余分なことをしないようにしていればきっと大丈夫。
買い取りについてはその時々で値段が変動するらしい。需要と供給ってやつだろうか…
「何か質問があるなら聞きますよ」
「…っ あ、その………これ」
私が取り出したのは黒虫のオーブ。黒虫のドロップ品てやつなのでお金になるかもしれない。引きこもるために必要な物を買うためのお金が欲しいのだ。売れるのなら売っておきたい。
「これはダンジョン産のオーブね…え? まさか本当にダンジョンに行ってきたの??」
「お金なる…なります……か?」
サーニャにしがみつつ聞きたいことはちゃんと聞いておく。気のせいかサーニャの横顔はあきれているように見えるけれど、今はお金を作ることが重要。お姉さんは顔を引きつらせながらも私の質問に答えるのだった。
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