【召喚魔法ドンナー】はゴミ魔法かと思ったが意外と使えるっぽい

れのひと

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 トーアル商会に顔を出し宿のお礼を言うと、まずは今日からの宿を決めに向かった。聞いた話によるとこの町にある宿は5軒。思ったより数はないので全部比べてからでもよさそうだ。1軒ずつ宿に入り宿代を確認するとユニ父が利用している宿が一番安かった。この宿はトーアルさんの所より狭くはないが、大き目なベッドと小さなテーブルと棚があるだけの部屋。椅子がないということはベッドに座ってテーブルを利用するのだろうか? 一緒に泊まった時はベッドで寝るだけだったし、露店で売るための試作はテーブルの上で作っただけだからね。

「安い方でいいか」

 どうせ俺は荷物もないし、一番安い宿に決めた。召喚で出したものと一緒に入れれば普通に買った物とかもしまえるので荷物を置いておくこともないからな。決めた宿の1日の宿泊料は1000リラ。カノ草10束の依頼が800だから無理をしなくても毎日必ず何か依頼を受けるだけで宿代は問題ない。食事に関しては自前があるし。でもこの町の食事情も知っておきたい。思ったより安くてうまいものもあるかもしれない。なんといってもここは港街なんだから例えば魚とかな? 手持ちというか召喚魔法の中に魚は…あーネギトロ丼用のやつだけならあるか。

 宿が決まった後は冒険者ギルドへ。とりあえずぼんやりとリラ草を集めようかなーと思っている。俺は気がついてしまったんだ運搬は思ったよりも稼げないってことにな。台車を使っていた俺でも半日ほど運んであの稼ぎだからな…これならカノ草をたくさん集めたほうが多分うまい。運搬はあれだ運ぶだけの完全に誰でもできる仕事ってやつ。

 北の門から外へと出た俺は塀にもたれるようにして座り込んだ。勢いで動けばちゃんと依頼受けられると思ったんだよね。だけど昨日のことが気になってだめだった。俺は保管庫の中身を見てため息を吐きだす。

「はっきりさせないとだめだよね」

 保管庫に手を突っ込みだしたいものを選びその手を前へと出した。日差しのせいで顔はよく見えないが目的の人物…井之頭先輩が俺を見下ろしている。先輩は昨日までの勢いがない。ただじっとこちらを見ているだけ。何か言いたいのであればスパッと言って欲しい。いつものように…

「先輩?」
「…森村か。ちょっとさ変なはなしなんだけどよ、顔色の悪い子供の首からすっごい血が出てさそれが青いんだ。しかもそいつ刺したのお前とかこの夢って何を表していると思う?」

 …ん?

「流石に驚いちまって飛び起きたわ。どんなホラーだよ! ってな」
「夢…ですか?」
「ああたまにあるだろこういうの。この間だって変な倉庫で突然お前に殴られてさ」

 それ夢じゃなければ殴ったのも俺じゃないやつ。

「おいっ 聞いてっか森村!!」
「はぁ~……でよかった」
「ん? 今お前なんつった?? おい…」

 最後の方はいつも通りの井之頭先輩にほっとして俺は先輩を保管庫にしまう。

 なるほどね…俺が召喚した人物はこっちに召喚されると夢の中の出来事になってしまうんだ。つまりあまりひどいものを見せてしまうと精神的に負担がかかってしまうかもしれない。先輩の話の中には出てこなかったけど倉庫で殴られたときの顔のあざとかは何も言ってなかった。予想しか出来ないけどこっちでもらった物は持ち帰れないということなのかもしれない。井之頭先輩が消えて数が減ったのはよくわからないのでこれは後で検証がいる。

「よし!」

 頬を2回たたいて気合を入れると俺はカノ草集めを始めた。そして30分ほど経過…ボールの中にカノ草は数本しか入っていない。昨日採取した分数が減って探しにくくなっているのかもしれない。もっと森の方へ近づけばあるんだろうけど昨日みたいにゴブリンが出てくると困るんだよね。誰かが魔物に警戒してくれれば集められるんだけど…

「そうか。そうすればいいんだ! ドンナー」

 俺は召喚魔法を使い召喚する…自分を! 召喚リストの中にひっそりと隅の方にいた自分。なぜかこっちの世界に来て髪の毛の色が俺は変化してしまったが、黒髪のままの俺だ。

「…もしかして俺が見張るのか?」
「ダメかな?」
「むしろありじゃね? 別の人だと報酬がいるし」
「やっぱり?」

 自分を召喚するのはありだな! 何と言ってもお互いの考えがよくわかる。これが一番大きいところだ。ということで黒髪の自分が辺りを警戒して俺がカノ草を探すことにして、少し森の中へと入ることにした。

 森に入るとさっきまでと違い少し薄暗くなる。これは慣れるまではちょっと探しにくそうだ。警戒している自分もそう思っているのか真面目な顔をして視線を周辺へと向けている。

「ギャッギャッ」

 早速ゴブリンが現れた。

「はい!」
「はいっ」

 息がぴったりとはまさにこのこと。黒髪の俺がゴブリンを押さえつけたのですかさず俺が包丁で首に突き刺す。青い血しぶきが上がり黒髪がその血を被った。

「うぇ…せめて何かで顔覆っておくべきだったかな?」
「ラップとか?」
「息しにくいし周りが見にくくなるじゃないかな?」
「俺もそう思うわ」

 となると…?

「「鍋蓋だ!」」

 やっぱり考えることは同じだった。黒髪に召喚したガラスの鍋蓋と包丁を渡す。つまり連携で倒すんじゃなくて一人で倒してもらうんだ。鍋蓋は攻撃を防ぐものというより血しぶきを防ぐものという扱いだがね。むしろ鍋蓋で殴ったほうが早いのか?
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