女の子を拾ったら毎日楽しくなりました。

山中波音

文字の大きさ
5 / 26

5話

しおりを挟む
カランカラン………

 扉の音がしたのでエルザは「いらっしゃいませ」っと挨拶をした。来店したのはエルザと同い年ぐらいの女性が1人。女性は店内をざっとみた後、目的の物があったのだろうかある一角で止まりジッと商品を見ている。
 また、来客の訪れる音が度々しそこからは少し慌ただしくなった。




 そろそろお昼時だからだろう。エルザの隣からお腹の音がしたので見ると耳まで真っ赤になり俯いていた。店内はほっこりした雰囲気になった。

「ゴメンね、もうお昼の時間帯ね……お金を使ったことは……あまりないかんじかな…?」

 こっそりと話し掛けたエルザの質問に女の子は真っ赤のお耳からすぐにいつもの色に戻ったので、あまりない、もしくは見たことしか無いのかも知れない…。そう思ったエルザは女の子に銀貨を1枚渡した。

「これで外の露店で食べ物買ってきてくれるかな?銀貨1枚あれば2人分は充分足りるからね?」

 女の子はお金とエルザを交互に見て最後に手を見てぎゅっと握りしめエルザに詰まりながらも「分かった」と返事をしカウンターから出て入り口の扉を開け、チラリとエルザを見てきたので手を振ると女の子はそっと扉を閉めた。
 エルサは一つ小さく息を吐き出しまた作業に戻った。


「ねぇ、エルザ、さっきの女の子誰?」

 麦色の髪を横に三つ編みをし肩からたらして、そばかすが少しある茶色いワンピースを着た女性が話し掛けていた。

「あら、リリカこんにちは。んーそうね、私が(昨日道で拾ってとりあえず)見ている子?」

「……何か重要な事を言ってないセリフね…」

 っと胡散臭そうな顔をして、腰に手を当てちょいちょいっとジェスチャーをしたので耳を向けた。

「昨日エルザが孤児を連れてるのを見たってママが言ってたんだけどその子?」

 っとこそっと聞いてきたので頷いた。

「……ふぅ…どうするの?」

「んー…どうしようかしら?」

「え?何それ、あんたそれ駄目でしょ?……面倒見られないなら孤児院に預けに行きなさいよ」

 っとまたこそっと話すので、首を横に振った。

「あの子が私の元にいたいなら面倒見るわ」

「…何でそこまでエルザがするの?」

「何かね…気になっちゃったのよね」

 っと言ってエルザは微笑んだ。その顔を見たリリカは一つため息をついて呆れた顔で笑った。その後は他のお客さんの会計をしたり、リリカと談話した。その時扉が思い切り開き中にいた人間は入り口を見た。

「はぁはぁ……ねぇ、これ凄いんだけど!!本当に効果あったよ!え、凄いんだけど!!!」

 先ほど2人が話していた女の子はそう言ってエルザの元に走った。手には食べ物を持ち服は汚れていた。

「な、何があったの!?大丈夫!!?怪我は無い?服も破れてるし!!何が……痛いところないの!?」

 エルザは女の子の体を怪我がないか触りつつ服の汚れを払っていく。

「だから凄いんじゃない!?私さっき馬車にひかれたのよ?それなのに怪我がないの!凄いわあんた!!」

「「馬車に!!!?」」

「そうよ、ほら」

 そういってその場でクルリとまわりジャンプしたりした。「ね?」っていって頭を傾けたが2人は開いた口が塞がらない。エルザが作るアクセサリーはお呪い程度でそこまでの効果も無い。高い効果が出るのは魔石の状態が良いか、身につけている者との相性が良いかだ。

「と、とにかく着替えた方が良いわね…リリカ、私、服買ってくるからお店とこの子お願い!」

「え、ちょっと…」

 「待って」と言う言葉を言う前にエルザは扉を開けて出て行った。リリカはため息ひとつついて女の子に向き合った。

「ねぇ、貴方名前はなんて言うの?」

「……」

 女の子は黙って床を見た後手に持っていた食べ物をエルザが作業していた机に置き、女の子が出かけるまで座っていた椅子に座り机にうつ伏せになった。
 リリカまたため息をひとつ付きエルザの代わりにカウンターに入り買い物客の相手を始めた。


「ただいま!!ごめんなさい、遅くなっちゃったかしら?急いだんだけど…あ、リリカありがとう!」

 バタバタとエルザはカウンターに入ってきてカウンター後ろにある扉を開けた。そこにはキッチンとテーブルと机があり、壁面収納にはアクセサリーを作る材料が所狭しと置かれていた。エルザは両手に持っていた鞄をテーブルに置きまたカウンターに戻ってきた。

「リリカ本当にありがとう、助かったわ」

「いいえー、ま、帰るわ、じゃぁね?」

「ええ、ありがとう、じゃあね」

 リリカは女の子を一瞥したのちエルザに手を振って店から出て行き家のある方向に歩いて行った。エルザは女の子と視線を合わせるためにしゃがみ話しかけた。

「本当に痛いところはない?」

 そう聞くと女の子はおずおずと視線を合わしコクリと頷いた。

「そう、よかったわ、昼食買ってきてくれてありがとう。さ、向こうの部屋で着替えてきてくれるかな?鞄に服が何着か入っているから好きなの着てね?」

 女の子はまたコクリと頷き隣の部屋に行き、エルザは「着替え終わったら出てきて?それまで閉めとくわね?」っといい扉を閉めた。

 エルザは店内を見渡し減っているものがないか確認し、在庫を出して並べ、減っているものをリストアップしてカウンターに戻り、机に散らばったアクセサリーの材料を片付けた。
 ちょうど片付け終えた時、隣の部屋の扉が開き女の子が出てきた。女の子が選んだ服は襟元にはレースが付き縦にヒダのついたお花の柄のブラウスに腰で紐を編んで結ぶタイプの茶色いロングスカートは裾にレースがあしらわれている。

「あら、似合ってるね?良かったわ」

 そうエルザが褒めると女の子は顔を赤くして「ありがとう…」っとお礼を言った。エルザは一瞬驚くも笑顔で「どういたしまして」っといい、昼食を摂ろうと女の子を誘った。
 女の子は足早に椅子に座り下を向いた。よく見ると手をぎゅっと握りしめていたので、気に入らなかったのかと思ったが、テーブルにお皿とカトラリーを置き向かいの椅子に座ると、女の子が百面そうしてたまに口角が上がっているので「悪くはなさそうね」っと心で呟き女の子が買ってきた昼食のパンと肉を味付けし焼いてスライスしたものに朝食べた赤い実の食べ物。

 エルザは皿にそれぞれ取り分け食べようとした時、朝に女の子が「いただきます」といって食べ始めたのを思い出し女の子を見ると、女の子はカトラリーに入っていたナイフでパンを半分に切り半分切った上に、肉を置き赤い実をナイフで切り肉の上に置き残り半分のパンを上に置いて「いただきます」と言って食べ始めた。エルザはポカンとした顔で女の子を見て「美味しい?」と聞くと女の子はビクッとした後「…お、美味しいよ」っというのでエルザも女の子の真似をして作り「いただきます」と言って一口食べてみた。

「あら、、本当に美味しいわね!貴方凄いわね!」

 っと笑顔で女の子に言うと、女の子は頬を染め少し口角をあげそれを隠すためかパンを口に頬張った。女の子の反応を見てエルザは微笑んでまたパンを食べ始めた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

ふしあわせに、殿下

古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。 最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。 どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。 そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。 ──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。 ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか? ならば話は簡単。 くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。 ※カクヨムにも掲載しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...