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6話

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 日は傾き夕暮れ時が近づく空。

「はふー、今日もそろそろ店じまいしようかしら」

 この時間になると買い物客はまばらになり開けていてもただひたすら新しいアクセサリーを作るだけとなる。今店内に客は居らず作るならばいっその事店を閉めてしまったほうが集中できる。

「そうと決まれば、今のうちに!」

 っと1人呟き外に出した看板を入れ扉にクローズの札をかけた。その行動を女の子は驚いた顔で見ていた。

「え、もう閉めちゃうの!?早くない?まだ4時ぐらいじゃ…」

 最後の方はボソボソと話していたのでエルザには聞こえずただ笑って「だって在庫切れの札がでてきたしね?」っと言って、店内の掃除を軽く始めた。そのあとは在庫切れの札を回収し、また在庫が減っている商品のその商品箱に入れている在庫切れを回収して行った。

「ふぅ……3種類……この間あんなに作ったのになぁ」

 そう言って頭を落としつつ、「いやでも、お金になってる!!」っと気持ちを奮い立たせ、カウンター奥の部屋に置いている材料をテキパキと取って行く。一種類20個作れば2月は持つか、いや最近の売れ行き的に…

 っと1人ブツブツと喋っていると女の子が「ねぇ」っと話しかけてきてエルザはハッとした。

「あら、ごめんなさい、そうよね、貴方がいるから流石に遅くまで作業してちゃダメね…ごめんなさい…」

「あ、、それは別に、いいんだけど…私も作るの手伝ってもいい?」
 
 女の子が自分の服を握りしめながらおずおずとエルザに尋ねた。エルザは笑顔で「やってみたい?」っと聞くと女の子は頷いたので「じゃぁ家でやってみよっか?」っと聞くと女の子は嬉しかったのか上下に頭を揺らして「うん!」っといい口角を上げた。

「そうと決まれば…とりあえずこの材料をカバンに入れて、、帰って作りましょうか?」

 女の子は頷いたのをみて、壁面収納の引き出しを一つ開けカバンを取り出し材料を、種類ごとに入れて行った。すると女の子が慌ててエルザの下に駆け寄ってきた。

「え、ちょちょちょちょちょ!!「え!!?」待って待って待って!!いや、本当マジっすか!!?」

「な、何何?どうしたの!!?」

 驚いたエルザはカバンに入れる手を止め、女の子を見ると驚きと笑顔の半々の顔で鞄を見た。

「これって、マジックバッグ的な!!?」

 エルザは若干引き気味に「そ、そうよ」っと答えると、目を見開いた。

「異世界きたぁぁ!!!あーもう、それよもうこれよこう言うのよ本当何なのよ!あいつ今度は魔法ありで楽しくお金持ちで幸せなだとか言ってたのに、何処が幸せだっつうの!路地裏生活でしたけど!!孤児が幸せ?ふざけんなよな!ぁー!もうマジで」

 混乱したエルザには早口で喋る女の子の言葉は同じ言語なのに理解ができない。寧ろ先程までと女の子の感じが違いすぎて驚いている。だが、こう言うことは先程もあった。そう、馬車に惹かれたと言った時、、、

「ねぇ…さっき馬車に轢かれたのでしょ?そんなに騒いじゃ体に差し支えるわよ…」

 っと苦笑しながら伝えると「あっ」っと言う顔の後、耳まで真っ赤になりながら「ごめんなさい」と言った。エルザは女の子がとても可愛くて頭を撫で「私のお古で汚れてるけどマジックバッグ使ってみる?」っと聞くと、女の子はポカンとした顔の後理解したのか真剣な顔になり頭を激しく上下に揺らした。

 エルザは棚の端の下の引き出しを開け、「コレなんだけど…」っと言って肩掛けの鞄を取り出した。今の鞄より小さいのでエルザにはちょうど良いサイズで、肩紐がよれてボロボロなのでまた変えてあげようかと思い、女の子に手渡しつつ伝えた。

「あ、ありがとう!!!!」

 女の子は満面の笑顔で鞄をじっくり見ていた。

「あ、待って私の登録になってるから外すわね、少し触るわよ」

 そうエルザは言って鞄の前のポケットに手を入れタグのようなものを出し、そこに書かれていた紋様に指で挟み、「持ち主エルザは放棄します」と言って魔力を流すと、紋様が消えこれでエルザの登録が消えた。

「はい、次は…名前と魔力をって大丈夫!?」

 女の子は顔が真っ青だ。エルザが登録を消しているときはワクワクした顔だったのだがどうしたのだろうか。

「わ、私…名前…それに魔力なんて…」

 エルザは朝の女の子のセリフを思い出し、しまった!っと思ったがもう女の子の顔はだんだん萎み泣きそうな顔になり後悔したが意を決しエルザは優しくぎゅっと抱きしめた。

「ごめん、言ってたわね。。そうね、、うん、貴方にも魔力はあるわ、あと、良かったら私が名前を付けてもいいかしら?それとも自分で付ける?」

 女の子は抱きしめられたことに驚いた後、一瞬離れようと力を込めたがエルザにぎゅっと抱きしめられ、なすすべもなく抱きしめられた。ただ、何故だか分からないが涙が出そうになりエルザの胸に顔を埋めた。
 自分に魔力があると知って嬉しく思ったせいだと思いつつ、自分に名前をつけたいと言う言葉に荒んでいた心に暖かい何かを感じた。昨日ベッドで目覚めたときは、苛々したもののエルザは怒ったり殴ったりせずただ女の子を1人の人と扱い、心配もしてくれた。そう、心配だ。今まで孤児院では怒鳴られ殴られあまつさえご飯を食べさせてくれなかったりした。路地では下げずんだ視線をたくさん浴びた。どこかに連れて行かれそうになったこともあった。
 エルザは何もしない。寧ろこんな自分に優しくしてくれる。そう気がついた時には目から溢れるものが止まらなくなった。すると強く抱きしめられ、だいぶ感じたことのない感情が胸の中に広がった。

 いつまでそうしていただろうか。エルザは女の子の背中をトントンしつつ呟いた。

「ねぇ、今思いついたんだけどベアトリスなんでどうかしら?意味はね、、幸せを運ぶ女性、、だったかしら?たぶん、そうだったはず、ええ、そうだったはず」

 エルザは頭を少し傾げ考えていると腕の中の女の子が少し笑ったのでゆっくり力を弱め顔を覗くと、目の周りを少し赤くしはにかんだ。

「どう?ベアトリスは?」

 っと聞くと女の子は少し頷きエルザの胸に飛び込み「ありがとう」っと小さい声で、でもエルザの耳にはちゃんと届きギュッと抱きしめた。
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