女の子を拾ったら毎日楽しくなりました。

山中波音

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24話

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―――――――――――――

 チリン チリン…

 冒険者ギルドの扉を開くと来店を告げる音が鳴る。が、ギルド内は人でごった返しており受付の人に聞こえたかは定かではない。

「あちゃー、ちょっと遅かったかしら…ベアトリス、離れないようにね?」

 ベアトリスの顔を見てそう言ったが、聞いているのかどうかわからないが縦に頷いた。目はギルド内を見回し、手はギュッと握りしめ、ワクワクしている気持ちが伝わってきた。
 エルザはベアトリスの手を引いてギルドの受付に並んだ。ベアトリスを見ると「ふはぁーゎゎ…」っと何かに感動してるようで、怯えていない事にエルザはほっとした。今日は振り回してばかりなので疲れていないかと心配したが、今のところ店を出てからベアトリスのテンションはとても高い。が、その反動で夜はすぐに寝てしまうかもしれない。さっさと用を済ませて帰りたいが、ここは冒険者ギルド。ガラの悪いのに絡まれたら敵わない。
 
「次の方どうぞ」

 そう聞こえ前を見るとエルザの番で、ベアトリスの手を引いて受付で依頼していた魔石の受け取りに来たことを伝えると、受付の方は「畏まりました、少々お待ち下さい」と言って受付の後ろの扉に消えていった。

「おいおい、こんな所に子連れで来る所じゃねぇぞ、嬢ちゃん」

 まだ夕方だと言うのにもう酔っ払った人がエルザ達に絡みにきた。エルザは心中舌打ちしベアトリスを後ろに隠そうとした。

「ちょ、すご、あの筋肉!!腕だけじゃなくて胸筋もやばい!!触りたい…」

 声はエルザの近くそして下の方からの声。チラリと見るとベアトリスは大きい声で言った後、ブツブツと何か言いながら目の前のガラの悪い男性にキラキラした目を向けている。「絡まれてるのに褒める所じゃない!!」っとエルザの心中叫んだ。すると目の前の男がベアトリスに視線を合わせるためにしゃがんだ。

「あん?なんだお前?そんなにこの筋肉に触りたいのか?」

 顔はお酒のせいで赤く表情はかなり怒っておりかなり怖い。

「触りたい!!え?いいの?マジで!?」

「ちょ!!(喜んでる場合じゃない)」

「おお!いいぞ、ほら来い」

 そう言って男はエルザの斜め後ろにいたベアトリスを抱っこした。エルザは慌てて「あ!まっ!」っと何か言おうとしたが、2人はとても和やかに、ええ、和やかに?会話している。

「すごい!!今筋肉に包まれてる!!」

 そう言ってベアトリスは男性の胸筋や腕、首などの筋肉を触っている。

「はっはっは!凄いだろこの筋肉!?お前は細すぎるな!ちゃんと飯食わしてんのか!!?」

 そう言ってエルザを殺気を含んだ視線で睨んできた。エルザは恐怖で「ひっ!」っと口から出ただけ。その後に続くのは喉からは空気が漏れるだけで言葉を発するために動くはずの口は動かない。

「この人…お姉ちゃんは食べさせてくれるよ!!みて、この服だって買ってくれたんだよ?可愛いでしょ?」

 っとベアトリスが男に話しかけてくれたのでエルザから殺気のような視線はなくなり腕の中のベアトリスに向き「お、可愛いな!」っとまた2人は話し始めなぜかエルザから離れていく。エルザは慌てて男の服を掴んだ。

「ま、待ってベアトリスをどこに連れて行くの!?」

 男はエルザを睨んだ。エルザは恐怖で手を離しそうになったが、手に力を込め男性の服を引っ張った。

「ちっ…お前まだ時間かかんだろ?それまでこの嬢ちゃんに飯食わしてやんよ!ほらあそこの席だ」

 そう言ってベアトリスを抱っこしていない手で、ある席を指差した。そこには男性が2人女性が1人いた。ガラが良いかと言えることもない感じでエルザは断ろうとした時、ベアトリスは「大丈夫よ?」っと良い「何が!?」っと言いそうなったとき、受付の方が戻った為、「終わったらすぐに連れて帰るので」っと男に言うと、男は鼻で笑い仲間の席にベアトリスと行った。

 エルザは頼んでいた魔石の数と種類を確認し依頼していた分より多い魔石も追加で購入し、次の魔石と数も依頼した。

 受付を終えベアトリスの所に向かうと何故か大の大人達が涙を流している。ベアトリス達が座る席だけではなくその隣の席の大人もだ。何がどうしたと言うのだろうか。

「え、えっと、終わりましたのでベアトリスを迎えに、来たのですが、、えっとあの、、何か??」

 何故か皆に肩を叩かれ頷かれ、エルザは頭を傾げる。

「ほら、嬢ちゃんも飲め」

 っと先ほどベアトリスを連れていった男の仲間が言うので「子供がいるので飲みません」っと言うと何故か余計に泣かれる始末。言ったその人は周りから「馬鹿か」っと言われている。一体何なんだろうか、っとエルザは焦りつつ先程ベアトリスを連れていった男に声をかけた。

「すみません、もう終わりましたのでベアトリスを連れて帰りますね?、、見ていただきありがとうございました」

 っと言うと、男は目を赤くして「おう」っと言って俯いた。エルザは一体何なんだろうかと思いつつベアトリスに声をかけた。

「ベアトリス、帰りますよ、、」

 っと聞くと食べ物でほっぺを膨らませたまま「うん」っと言って口をもぐもぐさせた。エルザは少し笑い、席を立ったベアトリスと手を繋ぎ、皆にお礼と挨拶をした。ベアトリスは皆に「バイバイ」っと言って手を振ると、ポカンとした人と涙を流しながら手を振る人がいた。

 お店を出て家に向かいつつ夕食を屋台で買い、マジックバックに入れて手を繋いで歩いていると、ベアトリスの口数がだんだんと減ってきた。
 家までもう少しとと言う時に歩きながらベアトリスの顔を覗き込むととても眠たそうな顔をしていた。

「今日は楽しかったですか?」

「うん、、、ねぇ、、、あのね、」

 眠たいのか突然立ち止まって俯いたベアトリスの前にエルザは屈むと、俯いていたベアトリスが顔をあげた。

「あ、ありがとう!!」

 一瞬驚いたエルザだが、すぐに笑って「こちらこそ」っと言ってベアトリスを抱きしめた。

 ベアトリスは始めは慌てていたが次第に力を抜きエルザに抱きついた。その後、「長い!!」っとベアトリスが言って抜け出そうとしたのをエルザは笑いながら抱きしめ続けた。
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