魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される

ぶんぐ

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31.王族との朝食

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(…?)

クラウスはギルバートに続いて部屋を出ようと扉に向かった。

…その時、ふと、彼の部屋の端にあった机が目に入る。様々な資料や本に囲まれたその空間は、簡素なギルバートの部屋の中で、唯一乱雑とした印象の場所だった。

だからこそ気づいたのか。クラウスの目には、その机の前の壁一面に貼ってある記事の内容がハッキリと見えた。見えた瞬間、クラウスの足が止まった。


────『ゼト』?


『ゼト』という単語が目に飛び込んできた。

記事には、【ゼト事件から10年!隠された残党の秘密とは──?】と書かれていた気がする……。他にも、たくさん記事が貼ってあったが。

…あれは…ギルバートが集めたんだろうか?

このことは、しばらくクラウスの頭から離れなかった。







「昨日の舞踏会はどうだったかね?疲れただろう」
「いやぁ…まさか弟が誰かを誘うとは思ってなかったからねえ。…最後のダンスもとても良かったよ~」



俺は今、想像もしていなかった空間で朝ごはんを食べている。

目の前にはオスカー王、左右に王太子アーサーと王子のギルバートというガチガチに王族に囲まれ、王からは優しそうな眼差し、王太子からはあまり目の笑っていない笑みを向けられている。そもそも、このホリデーシーズンは『家族の時間』らしいのだが、王宮でも食事の時間は家族だけの空間のはずが、どうして俺がその中にいるんだ…?!
ギルバートの部屋で起きた俺は、使用人たちの驚愕の眼差しが突き刺さる中、そのままギルバートに誘われて朝食に向かった。王宮の食事はすでに離宮で食べたことはあるが、天下一品で感動するほど美味しい。この状況でなければ一々うまいうまい言ってしまっただろうが、今はスプーンを持つ手が震えないようにするのに精一杯だ。

「…それで、スオール王国との国境の警備の件はどうなったの?」
「ああ。前回の会議で決まった通りだ。…警戒体制を強化する」

そんな中、クラウスの頭上では聞いていいのか分からない会話が飛び交う。アーサーがオスカー王に話を振り、時々ギルバートも話に加わるのだが、難しい話が多くて俺にはよく分からない。が、おそらく今関係が良くなくなってきている隣国、スオール王国のことで悩んでいるようだ。



「…あと、『黒い集団』事件は、あれ以来動きはないようだ」

その時、アーサーが発した言葉で、その場は一瞬沈黙した。

クラウスもドキッとして顔を上げると、アーサーが意味ありげな眼差しでこちらを見ていた。
オスカー王は、少し考えるように顎髭を撫でると、おもむろに口を開いた。

「…そうだな…その話だが──クラウスくん」
「っはい」

──何を言われるんだ?オスカー王の目は優しげだが、まだ何を考えているのか分からない。

「『黒い集団』が宮廷関係者を狙っているという話は知っているだろう?」
「…はい」

『黒い集団』は、宮廷関係者を各地で襲い、さらに学園までその魔の手を伸ばしている。

「──そして、もうじき学園の卒業の季節になる。卒業式の日には盛大な卒業パーティも開かれる。特に、今年はギルバートが卒業するとあって、多くの宮廷関係者が集うだろう。そこで──この卒業パーティの日、奴らは何か仕掛けてくるだろうと、我々は考えたのだ」

『卒業式』か……確かに、次何かが起こるタイミングは、卒業だろうと薄々思っていた。

オスカー王は老熟した目をきらりとさせた。

「我々は、その日、厳戒態勢で『黒い集団』の襲撃に備えることにした。奴らの尻尾を掴むため、あえて宮廷関係者を集わす。その中に、騎士団からの密偵を忍ばせるのだ。…クラウスくんも、ギルバートか、グレイ家のシリル、ウィング家のノア、彼らのうち誰かと必ず行動を共にしてくれ。──『黒い集団』は、君も狙っているだろうからな」

オスカー王の表情は読み取れない。俺を疑っているのか、ただ助言しているのか。ただ、アーサーだけはあからさまに厳しい表情で俺を見ていた。

「…わかりました」

俺は深く頷いた。嫌な予感がするのは、同意なのだ。ギルバートの卒業という大イベント。何かが起こりそうな、そんなざわめきがあった。


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