35 / 57
33.襲撃
しおりを挟む
「うぐっ」
男に誰もいない王城敷地内の林に連れてこられたクラウスは、いきなり突き飛ばされて地面に転がった。いつの間にか、男には数人の仲間が増え、今は地面に這いつくばったクラウスを取り囲んで見下ろしてくる。
その目が恐ろしく鋭くて、クラウスは息を飲んだ。憎しみを孕んだ鋭い目だった。
「…お前と接触できるのを今か今かと待っていたんだ」
彼らは、試合を見に来ていた街の人のような格好をしている。
「…君たちは誰だ?」
「っは、別に特別な者じゃねえよ。…しいて言うなら、お前のことを心底憎んでいる大勢の、代表だよ」
その言葉には明確な敵意があって、俺は怯んだ。
「おまえもさっきの試合に出ればよかったじゃねえか?おまえは禁忌魔法も使えるんだろ?」
「っいや、使えるわけない──」
「嘘つけ!たった最近も…おまえのせいで何の罪もない人が傷ついているんだぞ…。おまえが『黒い集団』を操っているんだろ?!」
男は、突然激昂した。そして手をかざし、魔法を込める。
「『黒い集団』に襲われた人は皆、おまえのことを見たと言っている。おまえが『黒い集団事件』の時、どこにいたのかって王立学園に聞いたら、『その時、学園に居たという証拠は無い』って言われたよ。…もう、おまえがやってるって、みんな分かってるんだよ!」
…学園が、そう言ったのか…?
「今日俺たちが来たのは、おまえの凶行をやめさせるためだっ。国王も学園もおまえを野放しにするだけで何もしない!それならば、我々がおまえに制裁を加えるまでだ!」
そこまで言って、男は唐突に溜めた魔法をクラウスに放ってきた。
クラウスは反応なんて出来なかった。無意識で赤水晶を使って防御したと思うが、その防御魔法も子供が使う並みの弱々しいものだった。
「っ!」
容赦ない攻撃に体が吹っ飛ばされる。ぐらりと視界が揺れた。
「ッおい!流石に殺すなよ?」
「ッ……で、でもアイツのせいでおふくろは…!」
俺に魔法を放った男が取り乱すのを、ぼやける視界で見る。
「『黒い集団』が襲ってこなければ、おふくろはまだ元気だったんだぞ!」
「おまえの気持ちは分かるッ。だが俺たちがここで捕まったら、全て水の泡だぞ!今はコイツを懲らしめてやればいいんだろ!」
男たちが言い争っている間にも、別の若い男がクラウスに魔法を向けてきた。
「おい!どうした!お得意の禁忌魔法で俺たちをやっつけてみろよ!」
飛んでくる魔法に、クラウスはどう頑張っても全く反撃すらできなかった。かろうじて、相手の攻撃を避けるくらいしかできない。しかも、赤水晶の力を消費しているからか、その動きも鈍くなっていく。
「ッもう、やめてくれ!俺は攻撃しないから…」
「攻撃しないだと?あれだけ人を苦しめておいて…!俺たちを油断させる気か?それともこんな魔法も返せないなんて腰抜けなのか?」
若い男が薄く笑いながら蔑んだ目をする。
「わかったぞ!おまえも所詮、仲間がいなけりゃ何もできねえ卑怯な奴なんだな!…舐めた真似しやがって!」
彼らの攻撃がより一層激しくなって、クラウスはとうとう避けきれずに地面に倒れた。次に来るであろう魔法の攻撃が怖くて震えてくる。あの魔法に全身包まれた時の激痛と苦しみは、思い出すだけでクラウスの体を縮こませた。
「…ギルバート」
クラウスは、誰も来ない薄暗い林の中に向かってつぶやいた。
これまで何度も何度も俺の前に現れて、ヒーローのように助けてくれたギルバート。毎回、都合よく助けてくれるなんて思ってない。…けど、
…お願いだ…
…助けてくれ…
男に誰もいない王城敷地内の林に連れてこられたクラウスは、いきなり突き飛ばされて地面に転がった。いつの間にか、男には数人の仲間が増え、今は地面に這いつくばったクラウスを取り囲んで見下ろしてくる。
その目が恐ろしく鋭くて、クラウスは息を飲んだ。憎しみを孕んだ鋭い目だった。
「…お前と接触できるのを今か今かと待っていたんだ」
彼らは、試合を見に来ていた街の人のような格好をしている。
「…君たちは誰だ?」
「っは、別に特別な者じゃねえよ。…しいて言うなら、お前のことを心底憎んでいる大勢の、代表だよ」
その言葉には明確な敵意があって、俺は怯んだ。
「おまえもさっきの試合に出ればよかったじゃねえか?おまえは禁忌魔法も使えるんだろ?」
「っいや、使えるわけない──」
「嘘つけ!たった最近も…おまえのせいで何の罪もない人が傷ついているんだぞ…。おまえが『黒い集団』を操っているんだろ?!」
男は、突然激昂した。そして手をかざし、魔法を込める。
「『黒い集団』に襲われた人は皆、おまえのことを見たと言っている。おまえが『黒い集団事件』の時、どこにいたのかって王立学園に聞いたら、『その時、学園に居たという証拠は無い』って言われたよ。…もう、おまえがやってるって、みんな分かってるんだよ!」
…学園が、そう言ったのか…?
「今日俺たちが来たのは、おまえの凶行をやめさせるためだっ。国王も学園もおまえを野放しにするだけで何もしない!それならば、我々がおまえに制裁を加えるまでだ!」
そこまで言って、男は唐突に溜めた魔法をクラウスに放ってきた。
クラウスは反応なんて出来なかった。無意識で赤水晶を使って防御したと思うが、その防御魔法も子供が使う並みの弱々しいものだった。
「っ!」
容赦ない攻撃に体が吹っ飛ばされる。ぐらりと視界が揺れた。
「ッおい!流石に殺すなよ?」
「ッ……で、でもアイツのせいでおふくろは…!」
俺に魔法を放った男が取り乱すのを、ぼやける視界で見る。
「『黒い集団』が襲ってこなければ、おふくろはまだ元気だったんだぞ!」
「おまえの気持ちは分かるッ。だが俺たちがここで捕まったら、全て水の泡だぞ!今はコイツを懲らしめてやればいいんだろ!」
男たちが言い争っている間にも、別の若い男がクラウスに魔法を向けてきた。
「おい!どうした!お得意の禁忌魔法で俺たちをやっつけてみろよ!」
飛んでくる魔法に、クラウスはどう頑張っても全く反撃すらできなかった。かろうじて、相手の攻撃を避けるくらいしかできない。しかも、赤水晶の力を消費しているからか、その動きも鈍くなっていく。
「ッもう、やめてくれ!俺は攻撃しないから…」
「攻撃しないだと?あれだけ人を苦しめておいて…!俺たちを油断させる気か?それともこんな魔法も返せないなんて腰抜けなのか?」
若い男が薄く笑いながら蔑んだ目をする。
「わかったぞ!おまえも所詮、仲間がいなけりゃ何もできねえ卑怯な奴なんだな!…舐めた真似しやがって!」
彼らの攻撃がより一層激しくなって、クラウスはとうとう避けきれずに地面に倒れた。次に来るであろう魔法の攻撃が怖くて震えてくる。あの魔法に全身包まれた時の激痛と苦しみは、思い出すだけでクラウスの体を縮こませた。
「…ギルバート」
クラウスは、誰も来ない薄暗い林の中に向かってつぶやいた。
これまで何度も何度も俺の前に現れて、ヒーローのように助けてくれたギルバート。毎回、都合よく助けてくれるなんて思ってない。…けど、
…お願いだ…
…助けてくれ…
260
あなたにおすすめの小説
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる