魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される

ぶんぐ

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38.卒業パーティ1

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あれから数ヶ月後。

ついに、王立学園の卒業式の日がきた。

空は青くカラッと晴れ、春を告げるような暖かな風が吹く、卒業にピッタリの日だ。今日、こんな日に、何か嫌なことが起こるなんて、きっと誰も予想しないだろう。俺だって、半分大丈夫なんじゃないのかなあと思っている。

学園の中庭にて、生徒の皆の視線が集まる中、学園長が3年生に卒業証書代わりの魔石を渡す。ずらりと並んだ3年生たちはローブに身を包んで、少し大人っぽく見える。中でも一際目を引くのは、やはりギルバートだ。堂々と立つ姿に、ついに彼は卒業して騎士団に行ってしまうんだなあと実感する。

「ああ…王子様がついにこの学園からいなくなっちゃうわ~…毎日目の保養だったのに~」

いたる所から、ギルバートへの熱い声があがっている。

「あんた本当ギルバート様好きね。このあとのパーティで告白したら?」
「いや……ぜったい無理でしょ!…そもそも、ギルバート様本命いるみたいよ?」
「は?本命?!」
「そう。『冬の舞踏会』に招待された人がいるみたい。なんか一説ではそれがあの『黒目黒髪』のクラウスだっていう人いるみたいだけど、それは絶対なくない?」
「いや、ないわ」

自分の噂が聞こえたと思ったらバッサリ否定されていて、クラウスはひそかに苦笑した。

そう。なぜか俺が『冬の舞踏会』に参加したことが一部でバレている。もっとも、信じられてないが。

あれから、俺は王宮で休暇期間たっぷりと休ませてもらった。一生に一度の体験だと思ったが、休暇中、ギルバートはしきりに「来年も休暇があれば来てほしい」と言っていた。
でも、ギルバートももう今年から騎士団に入るのだ。騎士団は入団後最初の数年間、驚くほど忙しいと聞く。きっと、休暇がないのはギルバートの方なんだろうなと俺は少し寂しく思った。

「…騎士団に入っても、休みくらいはある。連絡してもいいか?」

そう聞いてきたギルバートが少し寂しそうに見えたのは俺の幻覚じゃないはずだ。

もちろん、俺だって寂しい。いや、俺の方がもっと…。恋というものは難儀だなとつくづく思った。

「クラウス!」

声がして、ノアとシリルの姿を発見する。

「これから、いよいよ卒業パーティだね!…何があるか分からないけど、僕たちのそばになるべく居てね(コソ)」

ノアとシリルは、これからある卒業パーティでの「作戦」のことを知っている。

「ああ。…こんな清々しい日に、本当に事件が起こるかな」
「僕もそう思えないよ。…あ!そうだ!ギルバート先輩から伝言で、パーティが始まったら会いにきて欲しい、だって!」

ノアがにんまりと笑った。

「自分で伝えればいいのにねー。ま、今は他の生徒たちに捕まって動けないんだろうけど。でさ、もしかしたらパーティでギルバート先輩に何か貰うかもしれないけど、貰ったらちゃんと身につけておくんだよ」
「?…何かくれるのか?」
「それはヒミツ!卒業パーティの伝統みたいなものだよ。きっと、いや絶対、ギルバート先輩は何かくれるから」

よく分からないが、俺は頷いた。

「寮で着替えたら、一緒に会場へ行こう!」

そう言って、ノアたちと別れた。
寮に戻ると、卒業パーティ用にローブを羽織る。今日は何があるのか分からない。無事終わって欲しいと、胸元の赤水晶を握り締めた。







ドン!

寮を出た時、ちょうど来た誰かとぶつかった。思わず後ろによろける。

「おっと!ごめんな」

そんなに急いで、誰だろう、とクラウスは目線を上げると、そこには俯きがちで立っている1人の男子生徒。

「…あれ?ダリル?」

ダリルだった。彼は、夏合宿で『支配』魔法を受けた子だ。あれから、同じクラスということもあって、授業中話すことも多かった。いつも一緒にいるわけじゃないけど、この俺とも普通に話してくれる、大人しめの良い子だ。
そのダリルは、茶色の柔らかな髪を見せたまま、俯いて何も話さない。

「…ど、どうした?痛いのかい」

すると、ダリルはどこか虚なぼんやりとした顔を上げると、無言のままふるふると首を横に振って、焦るようにフードを深く被って顔を隠す。そして、寮の中へ入っていってしまった。

…どうしたんだろう?

彼の表情が妙に気になる。あんなに表情のない子だったか?

そう思いながら、ノアたちが待っているためクラウスは校門へ急ぐ。そんな中、ふと疑問が頭をかすめた。

…ダリルって寮に住んでたっけ…?


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