56 / 57
54.卒業
しおりを挟むこうして、あれから丸2年の月日が経ち…
──クラウスは高等部3年生となっていた。
もうすぐ、卒業となる年だ。
「これより、第403回卒業式をはじめます」
先生の言葉が響き、クラウスは卒業生用のローブの中の体を真っ直ぐにさせた。
いよいよ、俺は王立学園を卒業する。
卒業式は、先生からの言葉をもらって記念の魔石をもらうというシンプルなものだ。今年も卒業パーティは取りやめとなっているため、どこか粛々とした雰囲気だ。
それでも、若き才能あふれる魔法使いの卵たちがずらりと並ぶ姿は毎回壮観だ。壮観なのだが…
クラウスは周りをぐるりと見回して、少し居心地悪く感じた。
卒業式は前世の大学の時以来だから、キラキラした若者に混じっての卒業式にまた参加するというのがどうしても違和感がある。しかも、最近は授業も俺だけ別で受けていたため、皆に会うのも久しぶりだった。
いや。正確には、最後の試験の時以来だ。
学園を卒業するにあたっても、最終試験がある。その点数で今後の進路が左右される重大なものだ。でもほとんどの生徒は普通に授業を受けてさえいれば、ある一定の点数を取れ、今後の就職先も困ることはない。
…俺を除いて、だな…。
俺はどう頑張っても、最低点しか取れなかった。しかも史上初の点数らしい。そんな史上初はいらないのだが…あんなに特別授業で個別にやってもらってもダメだった。
俺の点数を見た生徒たちは、驚愕や嘲笑の視線を一斉に浴びせてきたっけ。俺も、もう少しできると思っていたんだが…どうも、最近は魔力を魔法に変換する力が弱くなったように感じる。
相変わらず顔色は悪いし、痩せたし、赤水晶の弊害をひしひしと感じるが、赤水晶の便利さを知った俺にはこれはもう手放せそうになかった。
「こっち見て!シリル様!ノア様!」
黄色い声が上がり、学年でも人気の二人に声援が送られている。
クラウスも彼らを見つけると、その姿を眩しそうに見つめた。
シリルとノアは試験で最高得点を取っての卒業だ。流石だ。その証に、彼らの帽子には特別な飾りが付いている。彼らに近寄って親しげに挨拶を交わす赤髪のマシューも、同じく優秀だった。
彼らの仲良さそうな姿を見て、胸の奥がずきりと痛んだ気がした。よかったな!と声をかけにいきたい衝動に駆られるが、クラウスが近寄ることができない雰囲気だった。たった2年前に仲良く話していたのが幻だったかのように、今の彼らが遠く感じた。
クラウスに話しかけてくる者もいないので、クラウスはなるべく端の方で気配を消していた。でないと、卒業でテンションの上がった俺を嫌う生徒に絡まれそうだったからだ。
クラウスはシリルたちを遠くから眺めながら、ぼんやりと思いを馳せた。
シリルは卒業後、尚書官になるらしい。王の秘書官とも言えるため、彼は宰相である父の後を着々と追っている。
ノアは宮廷魔法官の戦闘魔術開発部門にいくようだ。彼の可憐な容姿からは想像できない、時には騎士団とも一緒に戦うような部門で、驚く者も多かった。
マシューは近衛隊に入る。どんな希望があっていくのかは俺は分からないが、マシューは結構真面目なヤツだから、それなりに大きな理由がありそうだ。
そして俺は…
俺が試験で最低点を取った時、進路を相談した先生には、俺でも働けそうな仕事を色々教えてくれたが、そのどれもが騎士団や宮廷に関われるものではなかった。それもそうだろう。宮廷官職者になるには、難しい試験を突破しなくてはならないから、魔力的にも俺には雲の上の話なのだ。
リリーもその後すぐ連絡が来て、様々な仕事の紹介状を送ってくれた。俺が図書館の虫だったためか、図書館司書から郊外よりもっと遠い街の町役場の事務まで、様々だ。どれも魔力を必要としない仕事であることに彼女の配慮を感じたが、全て王都ではない別の街での仕事だったことだけが気になった。
そう、…これほどまでしてくれたのに、俺は全ての仕事の紹介を断った。それは、王都を離れてしまっては騎士団の近くで働けないからだ。
俺はなんとしてでも騎士団の近くで働きたい。ギルバートのそばに居たいのだ。
ブラッド伯爵からも再三帰ってきてはどうかと連絡が来ていたが、俺は誰にも相談せず、誰にも知られないうちに、一人宮廷に赴き騎士団の扉を叩いた。
騎士団といっても、俺が応募したのは騎士団所属の職員の募集だ。
騎士団には事務から武器の管理などを行う騎士ではない職員もいる。昔はそれも見習い騎士がやる仕事だったが、今では学校に行ってから騎士になる者が大半のため、こうなったらしい。
その中でも1番入るのが難しいのが事務仕事で、1番入りやすく、常に人手不足なのが騎士団と行動を共にする武器・馬管理やら炊事をするいわゆる雑務係だ。
というのも、雑務係は戦場にも付いていくから危険が伴うし、騎士になれなかった者が雑務係になる、みたいな偏見も少しあるらしく、人気がない仕事だ。
しかし、俺は行くならここしかないと思った。
魔法を使った採用試験もないし、俺の希望であるギルバートと近くで働ける最高の環境だと思った。
案の定、俺は騎士団の人は軽く話しただけで俺を雇うといってくれた。
常に人手不足というのは本当なのか、採用担当の人は俺の顔をちらりと見ただけで、経歴も能力もさほど見ていないようだった。俺の名前も認識していなさそうだ。
──こうして卒業式も終わり、いよいよ俺は騎士団で働くことになった。
結局、リリーにもブラッド伯爵にも手紙で連絡したら、二人ともそれぞれ驚いたリアクションが来た。ブラッド伯爵はしきりに屋敷に帰ってくるよう連絡がくるが、俺は適当な理由をつけて断っている。
未だ怪しさの残るブラッド伯爵にもっと探りを入れたい思いもあったが、その前にもう一度ギルバート達と話してみたかったのだ。
あっという間に、初出勤の日は来る。
俺は緊張しつつも、騎士団の門をくぐった。
505
あなたにおすすめの小説
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
妹に婚約者を取られるなんてよくある話
龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。
そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。
結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。
さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。
家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。
いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。
*ご都合主義です
*更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる