魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される

ぶんぐ

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54.卒業

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こうして、あれから丸2年の月日が経ち…

──クラウスは高等部3年生となっていた。

もうすぐ、卒業となる年だ。





「これより、第403回卒業式をはじめます」

先生の言葉が響き、クラウスは卒業生用のローブの中の体を真っ直ぐにさせた。

いよいよ、俺は王立学園を卒業する。

卒業式は、先生からの言葉をもらって記念の魔石をもらうというシンプルなものだ。今年も卒業パーティは取りやめとなっているため、どこか粛々とした雰囲気だ。

それでも、若き才能あふれる魔法使いの卵たちがずらりと並ぶ姿は毎回壮観だ。壮観なのだが…

クラウスは周りをぐるりと見回して、少し居心地悪く感じた。
卒業式は前世の大学の時以来だから、キラキラした若者に混じっての卒業式にまた参加するというのがどうしても違和感がある。しかも、最近は授業も俺だけ別で受けていたため、皆に会うのも久しぶりだった。

いや。正確には、最後の試験の時以来だ。
学園を卒業するにあたっても、最終試験がある。その点数で今後の進路が左右される重大なものだ。でもほとんどの生徒は普通に授業を受けてさえいれば、ある一定の点数を取れ、今後の就職先も困ることはない。

…俺を除いて、だな…。

俺はどう頑張っても、最低点しか取れなかった。しかも史上初の点数らしい。そんな史上初はいらないのだが…あんなに特別授業で個別にやってもらってもダメだった。

俺の点数を見た生徒たちは、驚愕や嘲笑の視線を一斉に浴びせてきたっけ。俺も、もう少しできると思っていたんだが…どうも、最近は魔力を魔法に変換する力が弱くなったように感じる。
相変わらず顔色は悪いし、痩せたし、赤水晶の弊害をひしひしと感じるが、赤水晶の便利さを知った俺にはこれはもう手放せそうになかった。


「こっち見て!シリル様!ノア様!」

黄色い声が上がり、学年でも人気の二人に声援が送られている。

クラウスも彼らを見つけると、その姿を眩しそうに見つめた。
シリルとノアは試験で最高得点を取っての卒業だ。流石だ。その証に、彼らの帽子には特別な飾りが付いている。彼らに近寄って親しげに挨拶を交わす赤髪のマシューも、同じく優秀だった。
彼らの仲良さそうな姿を見て、胸の奥がずきりと痛んだ気がした。よかったな!と声をかけにいきたい衝動に駆られるが、クラウスが近寄ることができない雰囲気だった。たった2年前に仲良く話していたのが幻だったかのように、今の彼らが遠く感じた。

クラウスに話しかけてくる者もいないので、クラウスはなるべく端の方で気配を消していた。でないと、卒業でテンションの上がった俺を嫌う生徒に絡まれそうだったからだ。

クラウスはシリルたちを遠くから眺めながら、ぼんやりと思いを馳せた。

シリルは卒業後、尚書官になるらしい。王の秘書官とも言えるため、彼は宰相である父の後を着々と追っている。

ノアは宮廷魔法官の戦闘魔術開発部門にいくようだ。彼の可憐な容姿からは想像できない、時には騎士団とも一緒に戦うような部門で、驚く者も多かった。

マシューは近衛隊に入る。どんな希望があっていくのかは俺は分からないが、マシューは結構真面目なヤツだから、それなりに大きな理由がありそうだ。

そして俺は…

俺が試験で最低点を取った時、進路を相談した先生には、俺でも働けそうな仕事を色々教えてくれたが、そのどれもが騎士団や宮廷に関われるものではなかった。それもそうだろう。宮廷官職者になるには、難しい試験を突破しなくてはならないから、魔力的にも俺には雲の上の話なのだ。

リリーもその後すぐ連絡が来て、様々な仕事の紹介状を送ってくれた。俺が図書館の虫だったためか、図書館司書から郊外よりもっと遠い街の町役場の事務まで、様々だ。どれも魔力を必要としない仕事であることに彼女の配慮を感じたが、全て王都ではない別の街での仕事だったことだけが気になった。

そう、…これほどまでしてくれたのに、俺は全ての仕事の紹介を断った。それは、王都を離れてしまっては騎士団の近くで働けないからだ。

俺はなんとしてでも騎士団の近くで働きたい。ギルバートのそばに居たいのだ。

ブラッド伯爵からも再三帰ってきてはどうかと連絡が来ていたが、俺は誰にも相談せず、誰にも知られないうちに、一人宮廷に赴き騎士団の扉を叩いた。

騎士団といっても、俺が応募したのは騎士団所属の職員の募集だ。
騎士団には事務から武器の管理などを行う騎士ではない職員もいる。昔はそれも見習い騎士がやる仕事だったが、今では学校に行ってから騎士になる者が大半のため、こうなったらしい。
その中でも1番入るのが難しいのが事務仕事で、1番入りやすく、常に人手不足なのが騎士団と行動を共にする武器・馬管理やら炊事をするいわゆる雑務係だ。
というのも、雑務係は戦場にも付いていくから危険が伴うし、騎士になれなかった者が雑務係になる、みたいな偏見も少しあるらしく、人気がない仕事だ。

しかし、俺は行くならここしかないと思った。

魔法を使った採用試験もないし、俺の希望であるギルバートと近くで働ける最高の環境だと思った。

案の定、俺は騎士団の人は軽く話しただけで俺を雇うといってくれた。
常に人手不足というのは本当なのか、採用担当の人は俺の顔をちらりと見ただけで、経歴も能力もさほど見ていないようだった。俺の名前も認識していなさそうだ。



──こうして卒業式も終わり、いよいよ俺は騎士団で働くことになった。

結局、リリーにもブラッド伯爵にも手紙で連絡したら、二人ともそれぞれ驚いたリアクションが来た。ブラッド伯爵はしきりに屋敷に帰ってくるよう連絡がくるが、俺は適当な理由をつけて断っている。
未だ怪しさの残るブラッド伯爵にもっと探りを入れたい思いもあったが、その前にもう一度ギルバート達と話してみたかったのだ。

あっという間に、初出勤の日は来る。

俺は緊張しつつも、騎士団の門をくぐった。


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